2021年06月16日

PAP11,000

先週プレスリリースで発表していますが、弥生の会計事務所向けパートナープログラム「弥生PAP(Professional Advisor Program)」の会員数が2021年5月末に11,011となり、11,000事務所を突破しました。

10,000事務所を突破したのが2019年末ですから、1年半弱で1,000会員増加したことになります。本ブログの過去をたどってみると、2011年4月に4,000会員を突破したとあります。約10年前ですね。1年半で1,000会員だと、×7で、10.5年で7,000会員増加(4,000+7,000 = 11,000)ということになります。ある瞬間で言えばスピードが速まったり遅くなったりということはありますが、10年という時間軸で見れば、コンスタントに会員数が増加してきたことがわかります。

2013年には、5,000会員に向けてカウントダウンを行っていましたね。懐かしい(ちなみに発案者として満面の笑みだったYさんはますます活躍中です)。最近は会員数がコンスタントに増えるのが当たり前(!?)で、こういった式典をやらなくなったのが、ちょっと寂しいです(笑)。

ただ、10,000会員の時もお話ししましたが、数を増やすことは目的ではありません。大事なのは、会計事務所の皆さんと弥生がパートナーとして価値観を共有できているか。お客さまの事業の成功をどのように支援しようとしているのか、そしてその際にITの力をどのように活用しているのか。業務のあり方が変わる中で、率先して変わろうとしているのか。

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そういった意味で、価値観であり、方向性を共有するというために、現在開催中のPAPカンファレンスはとても大きな意味を持っていると考えています。今回は、昨年に引き続き基本的にオンライン開催となり、先週金曜日にオンラインの1回目を開催しました。

リアルでお話ししたいという想いはあれども、オンラインにはオンラインのメリットがあります。それは全国どこからでも気軽に参加できること。今回の開催では、Twitterで「弥生会計のカンファレンスに参加しました!しかし、弥生会計の柔軟さというか、対応力というか、進化能力というか凄いよなぁ。シンプルだし、安価だし、自分は好きだなぁ」という嬉しい感想をいただきました。この方は長野県安曇野市在住とのこと(勝手に紹介して申し訳ありません!)。リアル開催ではなかなか長野県をカバーできませんから、やはりオンラインならではですね。

実際、先週のオンライン開催では1,000人近い方にご参加いただくことができました。これはリアル開催ではなかなか実現できない規模です。来週月曜日(21日)には2回目のオンライン開催を予定していますが、こちらも既に500名以上のお申込みをいただいています。

オンラインであれ、リアルであれ、パートナーとして会計事務所の皆さんに弥生の想いをしっかりと伝えていきたいと思っています。
posted by 岡本浩一郎 at 21:12 | TrackBack(0) | 弥生

2021年06月14日

シャウプ氏の遺言

6月頭に6社共同で発表した「デジタル化による年末調整の新しいあり方に向けた提言」は、年末調整制度という「昭和の仕組み」を、デジタルを前提として業務プロセスの根底から見直すデジタル化によって、業務そのものをシンプルにし、社会的コストの最小化を図ろうという提言です。前回は、そのための一つの方策として、年末調整を年始に実施することを提言しているとお話ししました。年末調整で所得金額の見積りが必要とされるのは、所得金額が確定していない年内に年末調整手続きを行うから。それであれば、年末調整手続きを年明けに実施することによって、所得金額が確定した状態とし、所得金額の見積りを不要としようというのが、業務の見直しをともなうデジタル化の発想です。

業務の見直しという観点では、実はもっと大胆な提言も行っています。それは、年末調整の計算(年税額および過不足額の計算)の主体を見直すというもの。現在、年税額および過不足額の計算は基本的に年末に事業者が行っていますが、これを年始にするだけではなく、行政(国税庁)が設置・運用するシステムにおいて一元的に計算する方式も選択肢になりうると考えています。これによって、事業者の負担を大幅に低減することが可能になります。

実は、年末調整業務の主体を事業者から行政に移管することを70年以上前に提言した方がいました。その名はカール・シャウプ氏。そうです、あのシャウプ勧告のシャウプ氏です。シャウプ勧告は、GHQの要請によって1949年に結成された、シャウプ氏を団長とする日本税制使節団(シャウプ使節団)による日本の租税に関する報告書であり、その後の日本の税制に多大な影響を与えました。いわば日本の戦後税制のバイブルとも言えるものです。

実はこのシャウプ勧告(Appendix D C.2.b.(5))では、事業者による年末調整業務は、税務当局による対応が困難であるための措置と位置付けられており、税務当局が対応できるようになり次第、年末調整業務は税務当局に移管すべきとされている(“The process should be shifted, however, to the Tax Offices as soon as such a shift is possible.”)のです。

私も最初にこの事実を知った時にはとても驚きました。私が年末調整に大きな問題意識を感じていることは本ブログでしばしばお話ししてきましたが、その問題点を70年前に指摘した方がいたとは。

シャウプ勧告は日本の戦後税制のバイブルになりましたが、年末調整業務に関しては、勧告が実践されることはありませんでした。シャウプ氏は2000年に亡くなられたのですが、年末調整業務に関する勧告は、いわば遺言として残ったままになっている訳です。年末調整業務は事業者にとって、年末という一般的に業務繁忙とされる時期に、多大な時間を要する負荷の大きい業務です。ただ、それだけに、業務を見直さずに単純に行政に移管するのは物理的に不可能でした。

しかし、それは業務を見直さなければの話。これまでは紙を前提としていたからこそ、従業員から紙で情報を収集することは事業者でなければ難しかった。では、デジタルを前提として見直したらどうでしょうか。年末調整に必要な情報は全てデジタルで収集される。後は、それらの情報を元に一定のロジックで計算をするだけだったら。そうです、それはもう純粋にコンピューターに任せればいいだけの話です。税務署の職員が事業者の代わりに計算するのではなく、あくまでも行政のシステムが一元的に処理ということであれば、不可能が可能になるはずです。

今回の提言はかなり野心的なものです。その実現は一筋縄では行かないと思っていますし、少なくともそれなりの時間はかかるでしょう。しかし、この提言が実現した暁には、事業者の負担を大幅に低減すると同時に、70年前の遺言がついに実現することになるのです。
posted by 岡本浩一郎 at 21:30 | TrackBack(0) | デジタル化

2021年06月10日

年末調整を年始に

前回は、先週6社共同で発表した「デジタル化による年末調整の新しいあり方に向けた提言」(年調提言)の背景をお話ししました。年末調整制度は、戦後に税制のあり方が賦課課税から申告納税へと根本から変わる中で導入されたものであり、その際には、コンピューターが一般に利用できない時代を反映し、当然のことながら、全てが紙を前提とした業務として整備された。それから70年(!)以上が経ち、昭和、平成を経て令和の時代になっても、「昭和の仕組み」を引きずっている、とお話ししました。

このように制度は昭和の仕組みのままなのですが、一方で、近年、税制の複雑化とともに、年末調整が極端に複雑化しています。これは、確定申告は年間の所得額が確定した状態で行うのに対し、年末調整では所得金額の見積額を用いる必要があるため。具体的には、近年の税制改正により、配偶者(特別)控除や基礎控除の適用に当たって給与所得者本人の所得金額の見積りが必要となりました。また、配偶者に関しても、共働きの増加により基礎控除額の水準以上に所得を有することが一般化し、見積りにより精度を求められるようになりました。

本ブログでは、2018年末に配偶者(特別)控除の件について「率直に言って、かなり複雑になりました。配偶者特別控除の対象となりうる配偶者の所得額上限が引き上げられるなど、必ずしも増税ではありませんし、この改正が一概に悪いという気はありません。それでも、制度が複雑化しすぎていることは事実かと思います。業務ソフトを開発している弥生の社内ですら、今年の申告書を記入するのは大変という声が上がっている中で、一般の事業者において全社員が正しく理解し、正しく運用するのはなかなか難しいのではないかと危惧しています」とお話ししました。個人的に年末調整制度が限界を迎えた、抜本的な見直しが必要と痛感したのは、まさにこのタイミングです。

前回お話ししたように、年末調整は、確定申告の簡易版として戦後に生まれました。確定申告の簡易版ですから、確定申告より簡単であるべきです。しかしどうでしょうか、簡易版であるはずの年末調整ですが、ここ数年は確定申告より処理が複雑となっています。

年末調整業務は、全国の膨大な数の事業者で、年末という一般的に業務繁忙とされる時期に、多大な時間をかけて業務が行われています。一方で、税制がより複雑化する中で、事業者の税制に関する知識が十分とは言えない状況も生まれています。結果的に、年末調整業務が必ずしも正しく実施されていない可能性も大きくなっています。これに対し、行政でその正確性を検証するのは、事業者と行政での二度手間です。つまり民間、行政両者で多大なコストを要しているのが現状の年末調整業務です。

これをどのように見直すのか。そのカギを握るのは、電子化ではなく、デジタル化であるということ。つまり、今ある業務をそのままに紙を電子化するのではなく、業務そのものを見直すということ。昨年末から提供開始された国税庁による「控除申告書作成用ソフトウェア」はもちろん意味のあることだと思いますが、所詮紙の電子化に過ぎません。

詳細は今後お話ししますが、今回の提言では、年末調整を年始に実施することを提言しています。上でお話しした所得金額の見積りが必要とされるのは、所得金額が確定していない年内に年末調整手続きを行うから。それであれば、年末調整手続きを年明けに実施することによって、所得金額が確定した状態とし、所得金額の見積りを不要としようというのが、業務の見直しをともなうデジタル化の発想です。
posted by 岡本浩一郎 at 21:09 | TrackBack(0) | デジタル化

2021年06月08日

昭和の仕組み

先週6社共同で発表した「デジタル化による年末調整の新しいあり方に向けた提言」(年調提言)は、社会的システム・デジタル化研究会(BD研究会)として2つ目の提言となります。昨年6月に発表した「社会的システムのデジタル化による再構築に向けた提言」(全体提言)では特定の制度や業務領域に限定せず、社会的システム全般として、デジタルを前提として業務プロセスの根底から見直すデジタル化によって、業務そのものをシンプルにし、社会的コストの最小化を図るべきとしました。

全体提言の第2章では、紙を前提とした旧態依然とした社会的システムの例として年末調整業務について取り上げました。ただ、この際には、こういった点が課題だと指摘はしつつ、解決の具体的な方策にまでは踏み込んでいませんでした。その後、昨年後半から一年近くかけて、年末調整をどのようにデジタル化し、社会的コストを最小化するのかについてかなり具体的な議論を積み重ねてきた結果が今回の年調提言という訳です。

誤解のないようにお話しすると、年末調整制度がそのものがダメだという気は全くありません。実際問題として、今回の提言の中では、年末調整制度の必要性を改めて検討し、「社会的コストの最小化という観点からは、年末調整制度は、パターン化された所得税申告を高い効率で処理するという意味で有効である」と結論付けています。制度としては今でも有効だけれども、業務のあり方が昔から抜本的に見直されていないことが問題だと考えています。

これまでにもお話ししてきたことですが、確定申告制度、年末調整制度など、日本における現状の社会的システムの多くは、戦後に紙での処理を前提として構築されたものです。

年末調整制度は、戦後に税制のあり方が賦課課税から申告納税へと根本から変わる中で導入されたものです。原則としては申告納税であるものの、一般個人(給与所得者)には税制に関する知識が十分ではないこと、また、事務処理能力が十分でないことを踏まえ、事務処理能力が相応にあるであろう事業者が、給与所得者の実質的な申告事務を肩代わりすることになったという経緯があります。またこの際には、コンピューターが一般に利用できない時代を反映し、当然のことながら、全てが紙を前提とした業務として整備されました。

それから70年(!)以上経ちました。昭和は終わり、平成も終わり、時代は今や令和。しかしこの令和の時代になっても、「昭和の仕組み」(しかも昭和の前半)を引きずっているのが年末調整制度なのです。この間、コンピューターは当たり前のものになりましたし、インターネットによって、情報のやり取りも圧倒的に簡単になりました。そしてクラウドコンピューティングによって、システムの処理能力の圧倒的な拡張性も実現されました。それでも、年末調整制度の前提は昭和と変わらず、紙のままなのです。

確かに事業者においては、年末調整業務に際し弥生給与のようなパッケージソフトウェアを使うことが一般化してきました。また、保険料控除証明書の電子化も始まりましたし、国税庁による「控除申告書作成用ソフトウェア」の提供で比較的小規模な事業者でも、従業員による申告書作成の電子化も可能となりました。それでも、対象となる年末調整業務自体は、紙を前提とした昭和の仕組みから本質的には変わっていません。

翻って、現時点でデジタル化を前提として年末調整業務をゼロから考えるとすると、これまでとは同様な仕組みとはならないのではないか。これが今回の年調提言の出発点です。
posted by 岡本浩一郎 at 21:59 | TrackBack(0) | デジタル化

2021年06月04日

Now or Never

昨日6/3に、社会的システム・デジタル化研究会として二つ目の提言となる「デジタル化による年末調整の新しいあり方に向けた提言」を6社共同で発表しました。そして、提言を作成・公表して終わりとしないために、昨日夕方に平井卓也デジタル改革担当大臣とオンライン会議を開催し、提言を直接ご説明しました。

昨年12月には、電子インボイス推進協議会(EIPA)で、平井大臣を訪問し、電子インボイスの日本標準仕様のベースとしてPeppol(ペポル)と呼ばれる国際規格をベースとすべきという提言を行いましたが、今回は、EIPAの母体となった社会的システム・デジタル化研究会として、また、今回は緊急事態宣言を踏まえ、オンラインでの提言となりました。

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折角なので記念撮影。みんないい笑顔ですよね。

今回の提言について、平井大臣からは「素晴らしい提案で感銘を受けた」「是非実現させましょう」と言っていただくことができました。とても印象的だったのはそのスピード感。「今年の税制改正大綱に頭出しという位置付けであっても盛り込みたい」という発言がありました。税制改正大綱は、毎年末に与党がとりまとめ発表するものですが、その後の税制改正の方向性を示すものです。年末調整制度は影響度の大きい仕組みだけに、一年といった時間軸で変えていくことは難しい(実際今回も5年という時間軸で抜本的に見直すことを提言しています)ですが、税制改正大綱に取り上げられれば、見直しを行うという方向性がはっきりと示されることになります。

この際に平井大臣が言われたのは"It's now or never."  新型コロナウイルス禍の中で、社会としての日本のデジタル化の遅れが明確になり、逆にその反省もあって、日本のデジタル化を推進するデジタル庁がこの9月に発足することが決まっています。デジタル化に対する意識(というよりは危機感)が高まっている今だからこそやらなければならない。

私も全く同感です。新型コロナウイルス禍は、紛れもない災難ではありつつも、同時に日本の社会を見直すまたとないチャンスでもあります。従前からあった課題を、社会としてある意味見て見ぬふりをしてきた。今、これだけの危機感がある中で変えられなければ、もう二度と変えられない。変えられないのであれば、日本はこのまま緩やか(というよりも、実際には思っていたよりも急なペースで)衰退の道を歩むしかないのではないか。

実は今回の年末調整のデジタル化に関する提言をまとめるにあたっては、行政の方々とも色々と議論をしてきました。その中で、行政としても、税制が複雑化してしまっていること、そして制度として限界に近付いていることに強い危機感を持っていることを理解することができました。今回の提言についても、非常に前向きに受け止めていただいています。

Now or Never。大きな制度、仕組みを変えるには時間がかかります。むしろ時間をかけてでも、ステークホルダーをしっかりと巻き込み、着実に進めていく必要があります。ですが、始めるのは「今」。今こそ、変化に向けて動き始めるタイミングだと考えています。
posted by 岡本浩一郎 at 16:33 | TrackBack(0) | 弥生

2021年06月03日

デジタル化による年末調整の新しいあり方に向けた提言

本日、社会的システム・デジタル化研究会として二つ目の提言となる「デジタル化による年末調整の新しいあり方に向けた提言」を6社共同で発表しました

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ITが急速に発展している一方で、確定申告や年末調整、社会保険などの日本における現状の社会的システムの多くは、戦後に紙での処理を前提として構築されたものの一部の電子化(Digitization)に留まっています。改めて、デジタルを前提として業務プロセスの根底から見直すデジタル化(Digitalization)を進めることによって、社会全体としての効率を抜本的に向上させ、社会的コストの最小化を図ろうということで、2019年12月に5社で発足したのが、社会的システム・デジタル化研究会(通称Born Digital研究会)。本ブログではこの記念すべき一回目の会合についてもお話ししています。

社会的システム・デジタル化研究会では、昨年6月に一つ目となる「社会的システムのデジタル化による再構築に向けた提言」を発表しました。この提言を踏まえ、昨年7月には電子インボイス推進協議会を立上げ、昨年末には電子インボイスの日本標準仕様のベースとしてPeppol(ペポル)と呼ばれる国際規格をベースとすべきという提言を平井卓也デジタル改革担当大臣に行い、賛同を得ることができました。

一方で、社会的システム・デジタル化研究会では、実は並行して次なるテーマについて議論を進めてきました。今回のテーマは年末調整。以前にもお話ししましたが、実は個人的には2018年の年末調整こそが、社会的システム・デジタル化研究会に向けた動きの原点となっています。配偶者(特別)控除の仕組みがあまりにも複雑化してしまい、一般の事業者の方が正確に理解し、正しく対応することが、ソフトウェアの助けをもってしても難しくなってしまった。もはや制度そのものを見直さない限りは限界だと感じたからです。

昨年後半から年末調整に関する議論を続けてきて、ようやく今回提言としてまとめることができました(提言本文提言別紙資料)。じっくりと議論しただけあって、なかなか良い提言となったと思っています(自画自賛)。ただ、これは提言だけで終わっては意味がありません。そのために、つい先ほどなのですが、今回の提言について平井卓也デジタル改革担当大臣に直接提言を行いました。その結果ははたしていかに。(続く)
posted by 岡本浩一郎 at 19:18 | TrackBack(0) | 弥生

2021年05月31日

クラウド型の利用率が25%超え

今年も新型コロナウイルス禍の影響で確定申告の期限が延長され4月15日までとなりました。延長は昨年と同様ですが、昨年は申告期限間近に初の緊急事態宣言は発出されるなど、混迷の中でお客様サポートを何とかやり遂げたのに対し、今年は当初から期限延長もありうるという想定のもとで準備を進めてきたこともあり、比較的落ち着いて対応を継続をし、無事に期限を迎えることができました。

申告期間を乗り切った後にやってくる通知表(笑)として、毎年楽しみにしつつ、ドキドキもしつつ公表を待っているのが、MM総研による「クラウド会計ソフトの利用状況調査」。MM総研は、2016年から毎年確定申告終了時点でのシェア調査を行っていますが、今年は申告期限が延長されたことにより、4月末時点での調査となり、その結果が先週発表されました

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今回の結果は、この通り。弥生はダブルスコア以上と2位以下に大差をつけて、しっかりとNo.1をキープしています。ただし、シェアを大きく伸ばせているかというと、一昨年が57.0%、昨年が56.7%、そして今年が57.0%でしたから、安定していると言えば安定しているし、同時に膠着状態という言い方もできると思います。ここはもう少し伸ばしたいというのが正直なところですが、昨年には2位と3位が交代するという動きもある中で、過半のシェアを安定的に確保できている訳ですから、まずまずの成果とは言えると思います。

競争の激しい市場の中で、弥生がどれだけのシェアを有しているかは弥生の競争力を表す指標として注視しているところですが、この調査でそれ以上に価値があるのは、個人事業主において、どれだけクラウド会計(申告)ソフトが浸透してきているかというデータです。昨年は会計(申告)ソフトを利用されている方のうち、クラウド型が21.3%と20%を超えましたが、今年は、26.3%とジャンプアップし、一気に25%を超えました。ソフトを利用されている個人事業主のうち、4人に1人はクラウド型を選ばれているということです。

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新しい技術が普及する上では、まずごく少数のリスク許容度が高く新しもの好きな人(Innovators)が利用し、その後により冷静に使える技術を見極める人(Early Adopters)が利用するというTechnology Adoption Life Cycleという定説があります。この2つのグループの後にはChasmという「深い溝」があり、これを超えられずに一時の流行りで終わってしまう技術もある一方で、このChasmを超えることができれば、前向きな大衆(Early Majority)での利用が一気に進むと言われています。

技術というよりは、具体的なサービスの話になってしまいますが、数年前に流行った短文投稿型のSNS、マストドンは、Innovatorsには受けたものの、Early Adoptersまでは至らなかったように思います(まだサービスが終わった訳ではないので、今後どうなるかはわかりませんが)。最近で言えば音声チャットのClubhouseは、Innovatorsを超え、Early Adoptersまで至ったように思いますが、最近はちょっと勢いがなく、Chasmを超えられるかどうか、なかなか見通せない状況です。

話を戻して個人事業主市場におけるクラウド会計(申告)ソフトについては、少なくとも昨年には確実にこのChasmを超えたと見ています。Chasmを超えてEarly Majorityでの利用が始まると普及が加速しますが、これは今まさに起きていることです。Early Majorityで利用が始まると課題になるのは、お客さまのサポート。InnovatorsやEarly Adoptersのお客さまはある意味、好きで使うので、何かわからないことや困ったことがあっても、自分で検索するなど自分で解決しようとします。自分で選ぶから、何かあっても自分で解決しようとする訳です。それに対し、Early Majorityは周りも使い始めているし、ということで利用される方が多く、いざという時には頼れる先が必要です。弥生が顧客サポートであり、その中でも(あくまでもお客さまのニーズにあわせてですが)電話でのお問合せ対応に拘っているのはこういったところに理由があります。

いざとなれば安心して頼れるという先があるからこそ、Early Majorityのお客さまが利用するようになっている訳ですし、それは同時に、Early Majorityでの普及が進む中だからこそ、弥生のシェアが安定して高いレベルを維持できているということを意味しています。

ということで今回の通知表はまずまずの結果でした。ただ、まだまだEarly Marjorityでの利用が進み始めたところですし、その後ろにはLate Majorityという層も控えています。今後もより多く方にご利用いただき、結果としていい通知表を受け取れるように、もっともっと頑張らないと!
posted by 岡本浩一郎 at 19:08 | TrackBack(0) | 弥生

2021年05月28日

事業継続力と競争力を高めるデジタル化

前々回前回2021年版中小企業白書を題材にお話ししてきました。今回の中小企業白書は、中小企業が新型コロナウイルス禍による危機に直面する中で、「危機を乗り越える力」が大きなテーマになっており、デジタル化が「事業継続力と競争力を高める」としています。

実は、今回の中小企業白書で一番ご紹介したいのは、P242にある、事例2-1-9: 株式会社トオセヨという「トランザクションレンディングを活用し、資金繰りに余裕を持たせる企業」の事例です。はい、そうです、トオセヨさんはアルトアのお客さまです。アルトアのオンライン融資サービスは行政機関からも注目されており、今回の中小企業白書でその事例を紹介したいということで、アルトアからご紹介したという経緯があります。

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「そうした中、利用していた会計ソフト「弥生会計」からメールで案内を受けたのが、アルトア株式会社のオンライン融資サービス(以下、「アルトア」という。)であった。申込みに当たっては「弥生会計」の会計データだけ用意すればよく、面談も不要で、金融機関に比べて融資も迅速だという。24 時間インターネット上から申し込めるので、店を閉めた後の夜間の時間を使って利用できるのも大きなメリット。同サービスを活用して手元資金に余裕を持たせることで、本業に集中できるようになった。」

前回は、デジタルで懇親会のあり方を変えたnonpi foodboxというサービスを紹介しつつ、同時に、「誤解のないように申し上げると、何でもかんでもデリバリーすればいいとは思っていません。またデジタルはあくまでも有効なツールであって、全てがデジタルであるべきだとも思いません」とお話ししました。外に食べに行く飲食店がなくなり、全てがデリバリーになってしまったら、それこそ味気のない世界です。飲食店には、普段と違う空間で楽しい時間や美味しいものを共有するという喜びがあります。

もっとも、だからといってデジタルは無縁ということではありません。むしろ、普段と違う空間で楽しい時間や美味しいものを共有するという喜びを最大化するために、デジタルをどう活用するか。トオセヨさんの場合には、お客さまに楽しい時間や美味しいものを提供することに精一杯で、金融機関に相談に行くことも難しかった。そこで24時間インターネット上から申し込めるアルトアを活用したわけです。アルトアであれば、改めて書類を用意する必要もなく、日頃から記帳している会計データさえあればいい。これもデジタルを活用して事業継続力を高めた好例ではないでしょうか。


個人的に残念なのは、行きたい行きたいと思いつつ、新型コロナウイルス禍の影響で未だにトオセヨさんのお店(「満月」)にお伺いできていないこと。そう言っているそばから、緊急事態宣言が延長という報道があり、ため息が出ます。現状の新型コロナウイルス禍の状況を鑑みると、しっかりとした対策が必要であることに異論はありません。ただ、感染者増加に対する直接的な対策である医療体制の強化、また、感染者増加を未然に防ぐワクチン接種になかなか有効な手を打てていない中で、結果的に飲食店を中心として一部の事業者にばかり過大な負担を強いる策が本当に妥当なのかは疑問に感じています。
posted by 岡本浩一郎 at 19:13 | TrackBack(0) | ビジネス

2021年05月26日

危機を乗り越える力

前回2021年版中小企業白書についてお話ししましたが、今回の中小企業白書は、中小企業が新型コロナウイルス禍による危機に直面する中で、「危機を乗り越える力」が大きなテーマになっています。

市場に大きな変化(おそらくは不可逆な変化)が起きている中で、事業のあり方を見直せるかどうか。私が印象に残っているのが、オンライン飲み会用のケータリングです。弥生でも、ここ一年間はHalf Year Meetingや社員総会などで皆が物理的に集まることができていませんし、それに伴ってBeer Bustを開催することもできていません。昨年秋にCS本部総会を開催する際には、ホテルの宴会場を利用できないことは自明だったものの、例年お世話になっているだけに、多少なりとも貢献できればということで、ホテルにせめて食事を気の利いたお弁当のような形で数百人分用意してもらえないか聞いてみました。

私がホテルの経営者であれば、即答でもちろん喜んで、と回答するところですが、実際には、対応できないという返答でした。食べ物だけに食中毒の心配もあり、ホテル外では品質を担保できないという判断だったのかもしれません。ただ、それ以上に、我々はホテルだから、ホテルの中で最高のサービスを提供するのが、我々の仕事というある意味の思い込みがあったのではないでしょうか。

ホテルには断られましたが、人事総務部で引き受けてくれるところを一生懸命探し、CS本部総会でも社員総会でも、皆が同じ食事をするという経験を共有することができました。最近ではnonpi foodboxというオンライン飲み会に特化したフードデリバリーが好評で、弥生でも各部署のオンライン飲み会で利用するようになっています。このサービスは、デジタルで懇親会のあり方を変えたいい例だと思います。

誤解のないように申し上げると、何でもかんでもデリバリーすればいいとは思っていません。またデジタルはあくまでも有効なツールであって、全てがデジタルであるべきだとも思いません。実際問題として、あくまで私個人の感想ですが、最近は色々な部署でnonpi foodboxを利用するため、私個人としては少々飽き気味です(苦笑)。でも、おそらくまだまだ進化するサービスだと思いますし、その際にデジタルは大きな武器になるでしょう。

一方で、既存のホテルや飲食店が全て駆逐されることもないでしょう。やはり普段と違う空間で楽しい時間や美味しいものを共有するという喜びは絶対的に存在しますから。ただ、これまでもこうやってきたから、と漫然と同じことを続けることが成り立たなくなっていくのだと思います。ホテルやお店に拘るのであれば、空間だったり、雰囲気だったり、あるいは素材の新鮮さだったり、ホテルやお店である「必然性」をよりはっきりと示していかないといけないのだと思います。

そのためにもデジタルは有効な武器になるはずです。デジタルを活用することによって、業務を効率化する、そして時間を「必然性」を示すために使えるようにすることによって。
posted by 岡本浩一郎 at 18:44 | TrackBack(0) | ビジネス

2021年05月24日

2021年版中小企業白書

2021年版中小企業白書が4/23に公表されました。中小企業庁は毎年、中小企業基本法に基づき、中小企業白書を作成し、公表しています。2021年版の特色としては、「新型コロナウイルス感染症が中小企業・小規模事業者に与えた影響や、この危機を乗り越えるために重要な取組として、事業環境の変化を踏まえた事業の見直し、デジタル化、事業承継・M&Aに関する取組等について、豊富な事例を交えながら調査・分析を行いました」とのことです。

中小企業白書は、中小企業の動向を多岐に渡る観点から分析していますが、今回興味深いのは、中小企業が新型コロナウイルス禍による危機に直面する中で、「危機を乗り越える力」(第2部)として、「事業継続力と競争力を高めるデジタル化」(第2章)に着目しているところです。

「新型コロナウイルス感染症の流行は、企業を事業継続の危機にさらすとともに、我が国においてデジタル化の重要性を再認識させた。第2-2-1 図は、感染症流行前後のデジタル化に対する意識の変化を示したものである。これを見ると、全産業では、感染症流行後において『事業方針上の優先順位は高い』若しくは『事業方針上の優先順位はやや高い』と回答する割合が6割を超えている。」(P. 320)

感染症流行前はデジタル化の優先順位が高い/やや高いの割合が46%だったものが、感染症流行後は62%にまで上昇しています。感染症が流行する中で、お客さまにリーチするためのデジタル、また同時に、感染リスクを低減するためのデジタルの必要性が改めて認識されたということかと思います。

ただ、デジタル化というのは、単純にIT化すればいいというものではありません。以前も本ブログでお話ししましたが、業務のあり方は変えずに、媒体だけを電子データにしたのが電子化、一方で、業務のあり方自体も見直すのがデジタル化だと考えています。ただ、昨今は、ITツールを使えばすぐデジタル化、あるいはDX(Digital Transformation)というITベンダーにとって都合のいい使われ方が多いようにも思います。もちろんITを活用すること自体は必要なことですが、事業や業務まで見直さなければ、本当のデジタルの力を引き出したことにはなりません。

もっともこれは中小企業白書もわかっていて、DXには(狭義の)DX・デジタル化(Digitalization)・電子化(Digitization)の三段階があるとしつつ、この白書ではあえてこの3つを全て含むとしています。確かに中小企業においては、まだまだITを活用するところから始めなければならない事業者も多く存在しますからね。ただ弥生としては、ITを使えばよし、ではなく、その先、デジタルを前提として事業や業務まで見直し、競争力を高め、事業継続力を高めるというところまでお手伝いをしていきたいと思っています。

弥生の考えるDXについては、弥生の公式noteでもお話ししていますので、是非この機会に弥生の公式noteもご覧ください(「スキ」をしていただくと担当者も喜びます)。

完全に蛇足ですが、中小企業白書の「本報告は、閣議決定を経て国会に提出する年次報告であり、表題は元号表記となっているが、本文中の『中小企業の動向』に関する分析に関しては、経済活動において西暦表記が用いられることが多いこと、海外データとの比較が必要となる部分もあること、グラフにおいては西暦表記の方がなじみやすいと考えられることから、原則として西暦表記を用いている」というのに手放しで大賛成です。
posted by 岡本浩一郎 at 21:52 | TrackBack(0) | 業務