2018年05月17日

その節税が会社を殺す

以前ご紹介した借入は減らすな!」の松波先生が新著を出されたということで、早速読んでみました。今回のタイトルは、「その節税が会社を殺す」。副題が「お金に強い社長がコッソリやっている節税 & 資金繰りの裏ルール31」、「カネ回りを強くして突然死を防げ」となかなか刺激的です。

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本書は、冒頭から「世の『定説』『定番』とされる節税のほぼすべてが無駄、無意味」であり、「むしろ逆効果、経営に悪い影響しかもたらさない」とズバッと核心をついています。実際、よく言われる節税策のほとんどは、課税されるタイミングをずらすだけ。確かに、今期支払う税金は減っても、将来どこかのタイミングで同じような額を税金として支払うのであれば、節税したという自己満足は得られても、実質的な意味はありません。むしろ最悪の場合、どこかで税法が変わり、トータルで見るとむしろ負担増になってしまうケースすらありえます。

世の中で言われる節税策の多くに意味がないこと自体は、実は良識ある税理士の先生方の多くが語られていることです。その仕組みについては、吉澤先生の解説がとてもわかりやすいと思います(こちらとか、こちらとか、こちらとか)。

ただ、意味がない = プラスもマイナスもない、であればまだマシです。私もこの本を読んで改めて気付かされましたが、実際のところは、マイナスの方が大きいというのがこの本で主張です。というのは、手元資金を減らしてしまうから。

本書の冒頭に、よくある節税策である生命保険を活用して1,000万円の利益を圧縮する事例が乗っています。利益が1,000万円あるとすると、これにかかる法人税は約265万円。これに対して、生命保険に入って1,000万円の保険料を支払うと、利益を大きく圧縮することができ(保険料の半額を当期の経費に計上できる保険の場合、利益額は500万円に圧縮)、その分、支払う法人税を大きく減らすことができます。

確かに、当期の節税にはなるでしょう(が、将来的に結局は税金を支払うことになるのは上でお話しした通り)。しかし、本当の問題は、手元資金。利益はそのままで素直に税金を払っていれば、約735万円の資金が手元に残るはずです。一方で、保険に加入した場合には…。そうです、保険料として支払ってしまっているために、手元には1銭も残っていないんですね。

事業が順調に拡大し、手元資金がドンドンと積み上がるような状況であれば問題はないかもしれません。しかし現実には、本書でもたびたび語られているように、実際には、「売上が増えてもお金は増えない」のです。売上を上げるためには、仕入れが必要になったり、あるいは人を増やすことによって人件費が増えたり。そして支出は多くの場合、売上より前に発生します。また、売上が上がっても、すぐに手元資金として回収できる訳ではありません。売掛金として数ヶ月後にようやく回収できる。しかし、その時にさらに売上を上げるために仕入れを行えば、その資金もすぐに消えてしまいます。ですから、どこかで売上を上げることをやめて資金の回収に徹するのでもない限り、売上が増えてもなかなか手元資金は増えないのです。

業績が良い、結構な利益が上がった、よし節税しようとなると、結果的に手元資金を削ってしまうことになる。そこに業績が良いからこその資金ニーズが加わると、余裕があったはずなのに、実際には、資金繰りに四苦八苦することになりかねません。

資金繰りに四苦八苦するようになれば、どうしても短期的や保守的な考え方になってしまう。そして良かったはずの業績がいつの間にか下降線をたどってしまい、資金繰りはますます苦しくなってしまう。

そうならないために、本書は、何よりもまず手元資金に余裕を持たせることの必要性を説いています。目標としては月商の3ヶ月分の手元資金を持つこと。そしてそれだけの手元資金を確保するためにも、銀行からの融資を積極的に活用すべきだ、とも。

本書の後半は、銀行から融資を受ける上で、どのように始め、どのように広げていくかを具体的に説明しています。これは前著の「借入は減らすな!」にも通じる部分ですが、本書では銀行との付き合いの始め方、広げ方をより具体的に説明しています。

ほとんどの事業者は多かれ少なかれ銀行に対し苦手意識を持っています。ただ、相手の行動パターンを理解すれば、付き合い方もわかってきます。事業をする上では、おカネとの付き合いは避けられません。そしてそのおカネとうまく付き合うためには、銀行とうまく付き合っていくことが必要です。節税という言葉が大好きな人、また、銀行に対し苦手意識をお持ちの方にこそ、読んで頂きたいと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 17:59 | TrackBack(0) | ビジネス

2018年05月15日

確定申告期の振り返り

少し間があいてしまいましたが、やよいの白色申告 オンライン/やよいの青色申告 オンラインを中心に、3月までの確定申告期の振り返りを社内で行いました。総じて言えば、しっかりとした手ごたえを感じる、まずまずの結果。もちろん色々と課題はありますが、まずはお客さまに知って頂く、次に最初は無償でサービスをご利用頂く、そして最終的に有償でサービスをご利用頂くというビジネスモデルが確立してきました。

クラウドサービスは、広告費を糸目なくかければ、ユーザーを獲得することは容易です。ただ、実際にサービスを活用頂き、これだったら有償でも使い続けたいと思って頂く、要は本当の意味でのお客さまを獲得するとなると難易度は圧倒的に高まります。しかし、当然のことですが、ビジネスとして継続する上では、名ばかりのユーザーがいくらいてもダメで、本当のお客さまの数を増やさなければなりません。弥生は、名ばかりのユーザー数を追うことはせず、本当のお客さまの数を増やすことに注力してきました。弥生がやよいの白色申告 オンラインで、クラウド型の申告ソフトを提供するようになったのが2014年のこと。それから5回の確定申告期を経て、しっかりしたビジネスモデルとして確立しつつあります。

まだまだ全社の売上に占める割合は限定的ですが、しっかりとした事業の柱に育ちつつあります。今期の弥生オンラインの売上はほぼ計画通りを見込んでおり、今後の事業の成長であり、売上がある程度読めるようになってきました。

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もちろん課題もあります。今回の確定申告が終わった段階で、クラウド申告ソフト市場における弥生のマーケットシェアは55.4%。明確なNo.1であることは事実ですが、この数字は前年前々年と比べても一進一退です。弥生の基準である圧倒的なNo.1(弥生基準での圧倒的No.1は、3人に2人、つまりシェア66.6%)にはまだ距離感があります。とはいえ、優先すべきは本当のお客さまを着実に増やすこと、同時に、中長期的なビジネスとして成立するようにビジネスモデルをしっかりと確立すること。足元のシェアで一喜一憂するよりは、焦らずにじっくり積み上げていくつもりです。

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むしろ、より重い課題は、クラウド申告ソフトのさらなる普及です。一昨年、昨年の確定申告終了時点で、クラウド申告ソフトの利用率は9.2%、13.2%と着実に浸透してきました。今年は、目に見えて普及が進むのではないかという期待もあったのですが、結果的には利用率は14.7%。もちろん利用率としては上昇はしていますが、大きく伸びたとは言い難いレベルです。クラウド申告ソフトの利用者は、新しいモノに抵抗のない層から、一般的な層(マジョリティ層)に広がりつつはありますが、マジョリティ層への本格的な浸透にはまだまだ時間がかかりそうです。

ただ、これも焦る必要はないと思っています。デスクトップのやよいの青色申告は引き続き安定的に推移していますし、クラウドも上述の通り、ビジネスモデルが確立してきました。時間をかけられるのが、弥生の強み。引き続き、じっくりと取り組んでいきたいと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 20:47 | TrackBack(0) | 弥生

2018年05月11日

金融機関APIの現状

前回は、金融機関APIが求められる背景について、お話ししました。金融機関が自らAPIを提供することによって、より安全に金融機関のデータを取得できるようにする、あるいは金融機関にデータを渡すことができるようにするのが、金融機関APIが目指すところです。ただ同時に、金融機関APIの普及には一定の時間はかかるだろう、ともお話ししました。

これも前回お話しした通り、昨年改正された銀行法では、セキュリティを確保しつつも、お客さまにとっての利便性を向上させるために、銀行に対しAPIに係る体制整備の努力義務を課しています。しかし現時点では、金融機関APIの提供はまだ始まったばかり。メガバンクやネット銀行など、ごく一部の銀行が、主に参照系のAPIを提供しています。

APIは金融機関のデータを取得できるようにする、あるいは、金融機関にデータを渡すことができるようにするインターフェイスですが、前者は参照系API、後者は更新系APIといった言い方をします。弥生のスマート取引取込のように、銀行の明細を取り込んで仕訳に変換する場合は、金融機関のデータを取得するわけですから、参照系のAPIを利用することになります。一方で、例えば、給与振込のデータがあり、それをAPIを通じて金融機関に連携し、給与振込を行うという場合には、金融機関に振込データを渡すわけですから、更新系APIが必要になります。

現時点で弥生がスマート取引取込でAPI連携を行っているのは住信SBIネット銀行の一行で、これは参照系のAPIです。弥生としては、今後API連携する金融機関を着実に広げたいと思っていますし、将来的には更新系APIへの対応も必要だと考えています。

一方で、金融機関APIの普及にはいくつかの明確な課題が存在します。

まず特に金融機関側でのシステム対応。API連携を行う際には、連携する双方でのシステム対応が必要となります。特に金融機関側については、前回もお話ししたように、インターネットとは隔絶された独自の世界に閉ざされているため、これをどのような形で開放するか、慎重な検討が必要になりますし、システム開発にもそれなりの期間を要します。

二点目は、システム対応と大きくオーバーラップしますが、セキュリティの問題。APIを開発し提供するのはいいものの、セキュリティ対策が充分でなければ、金融機関の基幹システムに対するサイバー攻撃を招くことにもなりかねません。この観点では、データの参照を許すだけの参照系の方がハードルは低く、データの更新を行う更新系では、より万全な対策が求められます。

そして最後に、金融機関がAPIを提供することのメリットが明確になっていないこと。APIを提供するには、セキュリティ対策も含め、一定のシステム投資が必要となります。つまりおカネがかかる。一方で、それに対し、どういったリターンが得られるのかが必ずしも明確になっていません。そうなると、API対応はすると言っても、最優先でのスピーディな対応は期待できません。APIは、データを開放するという意味でお客さまに大きなメリットをもたらしますが、同時に、金融機関にもメリットが明確になるようなAPIの利用モデルを確立していく必要があるでしょう。

こういった課題がある中で、金融機関APIの普及に向けては、金融機関だけでなく、金融機関APIを利用して様々なサービスを提供する会社(電子決済等代行業者、という言い方をします)も積極的に関与・貢献していく必要があります。弥生もその一社として、APIのあるべき姿について積極的に発信するだけでなく、その普及に向けての努力を惜しまないつもりです。
posted by 岡本浩一郎 at 16:32 | TrackBack(0) | テクノロジー

2018年05月09日

金融機関APIが目指すもの

少し前に、金融機関APIについてお話ししました。お客さまのIDとパスワードをお預かりしなくても、より安全に銀行やクレジットカード会社のデータを取得できるようにする仕組みが、銀行やクレジットカード会社が提供するAPI(Application Programming Interface)

APIという言葉は耳慣れないかもしれませんが、実はITの世界では相当昔から存在する仕組みであり、新しい概念ではありません。もともとは、OS(例えばWindows)の上でアプリケーションがOSの機能を効率的に利用するための仕組みとしての利用が中心でした(例えばWin32 API)。

最近では、複数のシステム間を連携させるための仕組みとしてAPIが広く一般的に活用されるようになってきました。特にここ10年間で、インターネットがさらに浸透し、その上で動作するシステム間をつなぐインターフェイスとして、REST APIと呼ばれる方式のAPIが広く普及してきたことによって、イマドキのシステムがシステム間で連携する上で不可欠なものになっています。たとえば、SMART(スマート取引取込)がMisocaやAirレジなどとデータを連携する際には、各サービスがSMARTのAPIを利用してデータをSMARTに渡すようになっています。

一方で、金融機関のシステムといえば、ほとんどの場合、インターネットとは隔絶された独自の世界に閉ざされており、それは今でも大きくは変わっていません。だからこそ、現時点で金融機関のデータを取り込もうとすれば、インターネットに向けて唯一開放された窓であるインターネットバンキングを裏技的に利用するしかありません。具体的には、前回お話しした通り、お客さまのインターネットバンキング等のIDとパスワードをお預かりした上で、SMARTが、あたかもお客さまが利用しているように(ある意味お客さまになりすまして)インターネットバンキング等にログインし、情報を取得するスクレーピングという仕組みに頼らざるを得ません。

ただ、この仕組みの場合、セキュリティに関する一定の懸念が存在します。金融機関のシステムが、インターネットとは隔絶された独自の世界に留まっている大きな理由の一つは、一般的なシステムよりも堅牢なセキュリティを実現するため。しかし現実は、お客さまが金融機関が管理しているお客さま自身のデータへのアクセスを求める中で、スクレーピングに頼らざるを得ず、結果的にセキュリティの懸念を招いてしまっています。つまり、ある意味矛盾を起こしてしまっている訳です。

そういった背景があるなかで、金融機関が自らAPIを提供することによって、より安全に金融機関のデータを取得できるようにする、あるいは金融機関にデータを渡すことができるようにしようというのが、金融機関APIが目指すところです。さらには、金融機関APIを通じ、お客さまがお客さま自身のデータをより自由に活用できるようになることによって、これまでにない利便性がもたらされることも期待されます。実際、昨年改正された銀行法では、セキュリティを確保しつつも、お客さまにとっての利便性を向上させるために、銀行に対しAPIに係る体制整備の努力義務を課しています。

ただ、現実問題としては金融機関APIの普及には一定の時間はかかるものと考えています。次回は、金融機関APIの現状についてお話ししたいと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 20:07 | TrackBack(0) | テクノロジー

2018年05月07日

お申込みはお早めに

先日本ブログでもお話しした弥生PAPカンファレンス 2018 夏ですが、お蔭さまで順調にお申込みを頂いています。

初回の開催はちょうど一ヶ月後の6/7(木)に大阪での開催となりますが、既に定員を大きく超えるお申込みを頂き、受付を終了しています。大阪の次は東京(6/20、水)ですが、こちらも定員を超えつつあり、当日不参加の方が一定数発生することを考慮しても、間もなく受付終了となりそうです。東京会場でのご参加を検討されている方は、是非お早めにお申込みください。

残りの3会場は7月に入ってからの開催になりますので、まだ2ヶ月程度あることになりますが、どの会場も着実にお申込みが入りつつあります。こちらは今日明日で締切になるようなことはないと思いますが、東京/大阪と比べると定員が少ないこともあり、可能な範囲で早めにお申込みを頂ければ幸いです。

毎年開催している弥生PAPカンファレンスですが、来て良かった、と言って頂けるように、内容や開催形式を毎回見直しています。今回新たな取り組みとして実施するのが、交流会。14:00から16:30までのプレゼンセッションが終わった後に、参加者間で自由に交流頂ける交流会を開催します。

会計や税務申告は10年後になくなる仕事の上位と言われる中(まあ、そういった話はずっと昔からあるわけですが)、他の会計事務所はどう考えているんだろう、どうしているんだろう、という関心も強いと思います。そういった観点から、ここ数年のPAPカンファレンスでは事例発表を強化しており、今回も各会場2つの会計事務所による事例発表がメインのコンテンツとなっています。ただ、事例発表を受動的に聞くだけでは物足りない、あるいは、登壇する会計事務所以外にも話を聞いてみたい。そういったニーズもあるのではないか、ということで、今回は交流会を開催することにしました。

もちろん、弥生のメンバーも多く参加しますので、弥生の製品やサービスに関する質問を頂いたり、あるいは様々なご意見を寄せて頂くのも大歓迎です。私も全会場で参加しますので、是非お声がけください。
posted by 岡本浩一郎 at 18:04 | TrackBack(0) | 弥生

2018年05月02日

アルトア新オフィス

広島営業所の新設福岡営業所の増床移転と新オフィスが続いてきましたが、実は、あと一ヶ月ほどで、アルトアも新オフィスに移転します。先日内覧会があり、新オフィスを確認してきましたが、現オフィスより格段に広く、良いオフィスになりそうです。

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アルトアのオフィスとしては、これで3ヶ所目。会社設立時は、弥生のオフィスの中で机を数席借りた状態。まだまだ準備段階ということで、メンバーもごく僅かでしたから、数席もあれば全く問題ありませんでした。

しかし、貸金業登録する上では、しっかりと間仕切りされた独自のスペースが必要です。ということで、約一年前に、弥生のオフィスの中の広めの会議室を一室、アルトアのオフィスに改装。スペースとしては格段に広がったのですが、会議室をつぶされた弥生メンバーからは多少の愚痴もあったようななかったような(みな優しいので口にはしませんが、笑)。

会議室転用のオフィスで活動すること約1年。メンバーも増え、さすがに収容しきれなくなってきました。また、融資を開始してから約4ヶ月が経過し、事業として成立させうることの目処も立ってきました。さらにメンバーを加え、いよいよ本格的に事業展開を図るタイミングということで、3ヶ所目の新オフィスに移転ということになったわけです。

実はこの新オフィス、(写真を見れば分かる人は分かりますが)場所にちょっとした秘密(?)があります。一体どんな秘密なのか、それはまたの機会のお楽しみということで。
posted by 岡本浩一郎 at 18:15 | TrackBack(0) | アルトア

2018年04月27日

金融機関API

今月中旬に経済産業省から発表された「キャッシュレス・ビジョン」(pdf)。買物での支払いなどで紙幣、硬貨を使わない「キャッシュレス化」について、決済に占める割合を2025年には現状の倍の40%を目指す。さらに将来的には、世界最高水準の80%を目指していく。かなり野心的なビジョンですが、メディア等でも取り上げられ、かなり反響を呼んでいるようです。実は私もご縁があって、このキャッシュレス・ビジョンの策定に関わっています。

ことの発端はAPI。弥生は約4年前から、銀行の明細やクレジットカードの明細を取り込んで、自動で仕訳化するSMART(スマート取引取込)という機能を提供しています(より厳密に言えば、銀行明細に限った形で取込・仕訳を行うMoneyLook for 弥生という機能は、さらにその10年前から提供しています)。この際、銀行やカードの明細を取り込むために、スクレーピングという技術を使っています。スクレーピングは、お客さまのインターネットバンキング等のIDとパスワードをお預かりした上で、SMARTが、あたかもお客さまが利用しているように(ある意味お客さまになりすまして)インターネットバンキング等にログインし、情報を取得する仕組みです(Scrapingは直訳すれば、引っ掻きとる。インターネットバンキングの画面データから銀行明細などを引っ掻きとるという意味合いです)。人間の操作をコンピュータで再現・自動化する訳ですから、最近はやりのRPA(Robotic Process Automation)に近いといえば近い技術です。

このスクレーピングという技術は既に20年近く運用されており、技術的には確立されたものです。ただ、お客さまからIDとパスワードをお預かりするということに対する心理的抵抗感もありますし、実際、万が一のセキュリティ事故が発生した場合(もちろんそういったことが発生しないように万全な対策は取っているわけですが、セキュリティに完璧はありえません)、責任の所在を明確化することが難しいといった課題があります。

これに対して、お客さまのIDとパスワードをお預かりしなくても、安全に銀行やクレジットカード会社のデータを取得できるようにする仕組みが、銀行やクレジットカード会社が提供するAPI(Application Programming Interface)です。金融機関におけるAPIはまだ一般的とは言えず、一部でようやく実用化が始まった段階です。弥生で言えば、つい最近、住信SBIネット銀行との間でAPI連携を開始したばかりです。

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金融機関APIは、基本的にそれぞれの銀行やクレジットカード会社が提供するものなのですが、下手をすると、銀行やクレジットカード会社の数だけ様々なAPIが乱立することになります。また、API利用のためには契約の締結も必要になりますが、契約もバラバラに交渉することになります。それでは社会的コストが高すぎるということで、可能な範囲でAPIのあり方、運用、仕様、契約などについて標準化しようとしています。

標準化というのは、言うは易しく(総論では誰も反対しません)、行うは難い(各論ではそれぞれの思惑が顕在化しがち)。ということで、実は、昨年の半ばから現在まで、私自身、金融機関APIの標準化にかなりの時間と労力を割いています(弥生の中でもあまり認知されていないと思いますが、担当してくれているUさんと二人で奮闘しております…)。

この活動の一環として、昨年の秋から、クレジットカード会社におけるAPIのあり方を検討する「クレジットカードデータ利用に係るAPI連携に関する検討会」の委員として活動してきました。そしてこの検討会がとりまとめたのが、冒頭の「キャッシュレス・ビジョン」という訳です。APIの話から、キャッシュレス・ビジョン? どう話がつながっているのか、少々不思議かもしれませんね。長くなってしまったので、その経緯については、また改めてお話しできればと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 13:54 | TrackBack(0) | 弥生

2018年04月25日

弥生PAPカンファレンス 2018 夏

前回、弥生の会計事務所パートナー(PAP)が8,500会員を突破したことをお話ししました。同時に、数以上に、パートナーとして、中小企業・個人事業主・起業家を支えるという志をキチンと共有できていることが大事だ、とも。

弥生がパートナーである会計事務所に向けて、弥生の今であり、今後の方向性を共有するための場として定期的に開催しているのが、弥生PAPカンファレンス。今年も、6月より7月にかけて、大阪・東京・名古屋・広島・福岡の全国5会場で、「弥生PAPカンファレンス 2018 夏」として開催します。

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ここ数年のPAPカンファレンスで一貫したテーマとして掲げているのが、業務の効率化。30年前の弥生会計の登場は、後工程(転記・集計)を中心に会計業務を大きく効率化しました。しかし、特に昨今、さらなる業務の効率化は会計事務所にとって極めて重要な経営課題になってきています。その背景の一つは、競争の激化。事業者の数は減る一方で、会計事務所の数は増えていますから、会計事務所間の競争は激しくなるばかり。競争力を維持する上で、業務を徹底的に効率化していくことは、避けて通れません。もう一つは、人材をめぐる競争。人の確保が難しくなる中で、人力で業務を何とか支えることの限界が見えてきています。

弥生では、事業者および会計事務所双方の業務の効率化を目指し、取引の発生から試算表までを一貫して自動化する「会計業務 3.0」を推進しています。

ただ、現状の会計業務 3.0は万能ではありません(2.8ぐらい?)。そもそも事業者がインターネットバンキングを利用していなければ、銀行明細の自動仕訳を実現できません。一方で、条件がうまく合致する事業者向けには、仕訳の自動化は実用段階に入ってきています。

今回のPAPカンファレンスでは、弥生が提供するサービスを実際に活用し、業務の効率化を実現している会計事務所の事例をご紹介します。事例紹介は、ここ数年のPAPカンファレンスで積極的に行っているのですが、下手に私がお話しするより、実感が湧いた、ピンときたということで好評です(それでいいのか、という話もありますが、苦笑)。

もちろん今回も、私は5会場全てに参加します。パートナーの皆さまとお会いできることを楽しみにしています。
posted by 岡本浩一郎 at 19:52 | TrackBack(0) | 弥生

2018年04月23日

PAP8,500

今回も少し報告が遅くなってしまいましたが、2ヶ月前、今年の2月末に、弥生の会計事務所パートナー(PAP)が8,500会員を突破しました。PAP会員数が7,000を超えたのが2016年5月、7,500を超えたのが2017年1月、そして8,000を超えたのが2017年8月。

これまで最高のペースだったのは、2015年4月の6,000会員から2016年5月の7,000会員。実に1年1ヶ月で1,000会員増えたことになります。7,000会員以降は少しペースが落ち、7,500会員までが8ヶ月、そこから8,000会員までが7ヶ月、合計1年3ヶ月で1,000会員の増。一方で7,500会員から今回の8,500会員までの1,000会員は1年1ヶ月ですから、一旦ペースが落ちたものの、再び過去最高ペースに戻ったと言えます。

いずれにしてもそれ以前のペース(1,000会員増に2年前後)と比べるとハイペースであることには変わりないのですが、ここに来て再びペースが上がったことには、無理をして数を追っていないからという、一見矛盾した理由があるのかもしれません。

PAPは、会計事務所と弥生の間でのパートナー制度ですから、パートナーとして、中小企業・個人事業主・起業家を支えるという志をキチンと共有できていることが大事です。もっとも、数を数えている以上、無意識のうちに、多少無理をして数を追いに行きがちなのも事実。しかし、そうするとどうなるか。趣旨を理解せずとも、とりあえず入会頂く。その時点では数は増えても、一年後の退会が増えるだけ。

PAP制度では、会員から年会費を頂戴していますので、名前ばかりの幽霊会員は存在していません。つまり、無理に入会いただいても、結局一年後には退会されてしまうので、意味がない。実際、事実として、あるタイミングでやや無理をして入会の数を追ったが故に、一年経ったのちの退会が増え、会員数増加のペースが鈍った時期がありました。それでは意味がない、ということで、軌道修正を図ったことが、結果として再びの会員数増加のペースアップにつながったような気がしています。

では今後はどうか。追うべきは数より質。仲間を増やすという意味でパートナーの数が増えることは有難いことですが、それ以上に、質を大事にしていきたいと思います。そういった意味で、嬉しいニュースだからこそ会員数を逐次本ブログでもご紹介している訳ですが、こういった記事自体、無意識のうちに数を追うことを助長しかねないという意味でやや微妙ですね(ここまで書いておいて、という突っ込みを受けそうです、苦笑)。
posted by 岡本浩一郎 at 18:14 | TrackBack(0) | 弥生

2018年04月19日

福岡営業所増床移転

4/2にオープンした広島営業所については、少し前にお話ししました。最後に「今度は福岡に向かいます」と書いたものの、LendIt USA 2018のためのSan Francisco出張もあり、その続きをお話しできていませんでした。ということで時計を4/3の夕方にまで巻き戻してみたいと思います。

広島から博多までは約1時間。天神にある福岡営業所についた時点でもう夕方です。本当は移転初日に来たかったところですが、やはり移転(福岡)と新設(広島)のどちらを優先するかと言えば、やはり新設を優先しますよね。ということで、ようやく福岡入りできたのは、移転の翌日の夕方ということになります。広島のように孤軍奮闘ではありませんし、さすがに2日目なので、既にすっかりキレイに片付いていました。片付けなどで手伝う余地がなくちょっと残念(笑)。ということで福岡での初仕事は記念のテープカットとなりました。

福岡営業所は、移転前の2倍強の大きさ。これまでは執務エリアもセミナールームも手狭感がありありでしたが、今度は執務エリアもセミナールームも広々。なかでも広々感があるのが、実はエントランス。がらーん、としているとも言います。執務エリア、セミナールーム、社外向け会議室、社内向け会議室を作った上で、空調設備の位置などを考慮すると、贅沢に? 無駄に? 広々としたエントランスになってしまいました。

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あまりにもゆったりとしているので、ここに誰か住めるのではないかと思うほど。このタイミングで福岡に転勤になったEさんはまんざらではない感じでしたが、さすがにガラス扉で中が丸見えで住むのはまずいですよね。

今回、福岡営業所は同じビルの同じフロアの隣のスペースに移転したということで、弥生のウェブサイトでの住所の記載も全く変わっていませんし、移転のご案内もお出ししていません。そういった事情もあり、広島はお祝いで頂戴したお花でエントランスが賑やかでしたが、福岡はビルオーナーから頂いた観葉植物が一鉢のみ。そういったこともがらーん感を助長しているのかもしれません。あ、いえ、お祝いを催促している訳ではありません(笑)。

新設なった広島営業所、増床移転した福岡営業所。これまで以上の体制で、お客さまとパートナーの皆さまを支援していきます。
posted by 岡本浩一郎 at 21:24 | TrackBack(0) | 弥生