2021年03月03日

繰越か繰戻しか

前回は、青色申告で認められている損失の繰越についてお話ししました。残念ながら昨年(今回の申告)が損失となった場合には、その損失を繰り越し、翌年以降3年間の所得と相殺することができます。これは青色申告ならではの特典ですから、是非活用すべきものです。ただし、実際に未来の所得と相殺され、節税となるのは早くても一年後となります。

実は、損失が発生した際にもっと早く節税につなげる方法があります。それは損失の繰戻し還付という制度。損失の繰越はこれから発生する所得と相殺する仕組みですが、損失の繰戻し還付は過去の所得と相殺する仕組みです。

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左の図は、前回お話しした損失の繰越ですが、今回の損失を翌年以降3年間の所得と相殺します。一方、損失の繰戻し還付は右の図のように過去の所得と相殺します。仮に今回の申告で300万円の損失となり、一方で前回は300万円の所得を申告していたとすると、繰戻し還付では前回の300万円の所得と今回の300万円の損失が相殺されます。結果的に前回の申告での課税所得が0円であったとされ、既に納付していた所得税が還付されることになります。

ご存じの方も多いと思いますが、お金の時間的価値をふまえれば、今の100万円と1年後の100万円では同じ100万円でも今の100万円の価値の方が高いとされます。これだけ低金利の時代にはピンと来ないところがありますが、仮に今100万円を返済しなければならないとなると、今の100万円はその役に立っても、1年後の100万円では役に立ちません。

この時間的価値を考えると、損失の繰越か、損失の繰戻しか、その優劣は明確です。もちろん、より早く節税を実現できる(キャッシュを確保できる)繰戻しの方が有利です。

しかし実際問題としては、損失の繰越は一般的に行われていますが、損失の繰戻しはそこまで一般的ではありません。損失の繰戻しのためには、確定申告書とあわせ、「純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求書」を提出するのですが、この請求を受けた際には、税務署でその内容を調査して還付を決めることになっており、これがこの手続きが敬遠される要因になっているようです。

税務署による調査といっても、いわゆる税務調査が必ずしも行われる訳ではありません。還付請求に関する問い合わせがあったとしても、税務署内での机上調査で終わることもあるようです。それでも、何ら後ろめたいところがなくても、「調査」と聞いただけで敬遠したくなるのも理解できます。

そういった意味では、一般的なのはやはり前回お話しした損失の繰越。ただし、本当に足元で資金繰りが切迫しているとすると、今日お話しした損失の繰戻し還付も有効な選択肢です。損失の繰戻し還付について詳細はこちらのスモビバ記事をご参照ください。
posted by 岡本浩一郎 at 22:52 | TrackBack(0) | 税金・法令

2021年03月01日

損失の繰越

3月になりました。例年であれば確定申告も折り返し地点です。自分自身の申告の下準備はしていたものの、なかなか申告を済ませる時間がなかったのですが、先週末ようやく申告を済ませました(もちろんマイナンバーカードを使って電子申告)。今年は期限が一ヶ月延長され、まだ時間的な余裕があるとはいえ、やはりやらなければならないことを積み残しているのは気分がよくないもの。申告が済んでようやくすっきりです。

今年は期限が一か月間延長されて良かったなと思うのは、本ブログで確定申告についてお話しする機会が増えたこと。毎年お話ししたいことは山ほどあるのですが、全部お話しする前に申告期間が終わってしまい、お話ししきれていません。今回は例年よりも少し時間をかけて確定申告にまつわる話題をお話ししたいと思っています(とはいえ、申告の準備を待っていただく必要はないので、どんどんと進めてくださいね)。

前回は、損失、つまり、事業所得(売上マイナス経費)が赤字となった場合に、申告すべきかどうかということをお話ししました。どんな場合であれ、申告はしておいた方がいいというのが結論です。

損失でも申告をすることのメリットがはっきりしているのは、青色申告。前回もお話ししたように、青色申告の場合には、今回の損失を翌年以降に繰り越し、翌年以降3年間の所得と相殺することができます。

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例えば、今回(昨年分)の事業所得が残念ながらマイナス300万円の損失だったとしましょう。この場合、当然今回は納税は発生しません(事業所得以外はない想定)。これに対し、次回(今年分)の事業所得が100万円だったとします。図の左側、白色申告の場合は、この事業所得100万円が全額課税対象となります。つまり今回発生した300万円の損失は無視されます。これに対し、図の右側、青色申告の場合には、次回の事業所得100万円は今回の損失300万円の一部(100万円)と相殺され、課税所得はゼロになります。

さらに翌年以降、所得が150万円、300万円と増えた場合も、白色申告(左)はそれらがそのまま課税所得になるのに対し、青色申告(右)は今回の損失300万円が相殺されきるまで(ただし最大3年間)課税所得が発生しません。結果的に、次回以降3年間で合計550万円の事業所得があった場合、白色申告では、今回の損失が一切考慮されずそのまま550万円が合計の課税所得になりますが、青色申告の場合、今回の損失300万円が相殺対象となるため、3年間合計の課税所得は550万円-300万円の250万円で済みます。当然のことながら、3年間合計で納めなければならない所得税額には大きな差がつきます。

事業はお客さまに価値を提供し、その対価として利益を上げるために行うもの。ただ、昨年のように新型コロナウイルス禍によって事業環境が激変し、残念ながら利益を上げるどころか、損失で終わる年も発生します。その際に、その損失を翌年以降に繰り越し、しっかりと節税できるのが青色申告の大きなメリットです。

事業の立上げ期においても、顧客基盤が出来上がる前は残念ながら損失となることもあるでしょう。青色申告を選ばない理由として「まだ儲かっていないから」というのは比較的よくある理由なのですが、実際問題としてそれは誤解です。儲かっていないからこそ、最初から計画的に行うべきなのが青色申告なのです。

なお、青色申告で損失を繰り越す際に必要となるのが確定申告書の第四表という帳票です。もちろん、当然のことながら、弥生ではクラウド(やよいの青色申告 オンライン)でもデスクトップ(やよいの青色申告 21)でもこの第四表に対応しています。ただ、弥生以外ではこの第四表に対応していないソフトもあるので注意が必要です。
posted by 岡本浩一郎 at 21:44 | TrackBack(0) | 税金・法令

2021年02月26日

申告の要否

今回の確定申告は2020年分。昨年1月から12月までの所得を申告する必要があります。昨年は新型コロナウイルス禍により大きな影響を受けた事業者の方も少なくないのではないかと思います。結果的に、昨年は事業所得(売上マイナス経費)が赤字、つまり損失という方も例年より多いものと思われます。

前回、「継続的に儲けるつもりで、儲ける一定の確からしさがある場合は事業所得」とお話ししました。逆に、「儲かったらラッキーぐらいのつもりの場合は、雑所得の業務」とも。今回の申告で損失になった、つまり儲けていないから、事業所得として認められないのではないか、と心配されるかもしれませんが、その心配はご無用です。前回、事業所得とは「自己の計算と危険において…」という最高裁の判例もご紹介しましたが、危険・リスクがあるのも事業所得ならでは。万年赤字ではさすがに儲けるつもりがあるのか、儲ける一定の確からしさがあるのか、となってしまいますが、通常は黒字だけど何らかの理由で今年は赤字ということは事業所得として想定の範囲内です。ましてや昨年は誰にとっても経験したことのない一年でしたから、赤字になることも無理はありません。

ところで、確定申告は所得がある人が申告をするものですから、所得がない、つまり損失となった場合には申告をしなくてもいいのではないか、と思われるかもしれません。

これはイエスといえば、イエス、一方でノーと言えばノー。申告をしないことも可能だが、基本的には申告した方がいいというのが答えになります。

雑所得と異なり、事業所得の場合には、他の所得(給与所得など)との損益の通算ができますから、事業所得がマイナスであれば、それを給与所得と共に申告すれば、給与所得にかかった部分の税金を減らすことができます。

他の所得がない場合にも、青色申告の場合には、今回の損失を翌年以降に繰り越し、翌年以降の所得と相殺することができます。これは青色申告の大きなメリット。ですから、青色申告の場合には、損失でも必ず申告すべきです。

では、白色申告で、なおかつ他の所得もない場合には? この場合も基本的には申告はしておいた方がいいようです。というのも、申告をしなかったら、自動的に所得がゼロ(マイナス)と認められる訳ではないからです。児童手当の申請や保育園の入園申請などで、所得の証明が求められることがありますが、申告をしていないと、これが出ないことがあります。実際に、千代田区では、住民税の証明書の交付を受けられるのは、「税務署に確定申告を、または千代田区に住民税の申告をされた方」とされています

つまり、所得がゼロ(マイナス)であるということを国だけでなく、地方自治体にも明確に伝え、その後に不利益が発生しないようにするために、確定申告をしておくことが望ましいということです。一例として、東かがわ市では「申告がない場合は『未申告』となり(税の被扶養者は除く)、国民健康保険税の軽減措置を受けることができなかったり、所得課税証明書の発行ができません」とされています(pdf)。なお、国に対する確定申告はせずに、地方自治体に直接住民税に関する申告をするということも可能ですが、確定申告をしたことがある方であれば、確定申告で済ませた方が簡単なのではないでしょうか。
posted by 岡本浩一郎 at 22:25 | TrackBack(0) | 税金・法令

2021年02月24日

事業所得か雑所得(業務)か

前回、雑所得の中に業務という区分を新設されたということをお話ししました。このいわば「業務所得」と事業所得、非常に紛らわしいですね。

前回お話ししたように、国税庁の説明では、雑所得とは事業所得等、他の所得のいずれにも当たらない所得とされており、その中で、業務に係るものに該当するものとしては、「副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)」と説明されています

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実際問題として、事業所得なのか、あるいはそれに該当せず雑所得(業務)となるのかの線引きはグレーな部分があります。一方で、明確なのは、事業所得の方が確実に有利であること。事業所得にせよ、雑所得(業務)にせよ、課税対象は売上マイナス経費と、経費を差し引けるのは共通ですが、事業所得の場合は、青色申告が認められており、結果的に最大65万円の青色申告特別控除が得られること、また、仮に事業所得で損失が発生した場合には、その損失を例えば給与所得から差し引くことができる(損益通算)など、明確なメリットが存在します。逆に雑所得は、青色申告特別控除的なものは存在しませんし、雑所得が損失になっても、他の所得と相殺することはできません。

このように事業所得の方が明らかに有利ですが、では事業の開業届を出せば自動的に事業所得として認められるかというとそうではありません。事業所得であるかどうかは、社会通念上、事業を営んでいると認められるかどうかという実態で判断されます。この点については、判断基準となっている最高裁の判例があり、「事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得」とされています。つまり営利性と継続性が必要であり、その結果として社会通念上、事業を営んでいると認められるかどうかということです。

そもそも儲ける気がなければ、事業所得として認められません。それはそうですよね。儲けることを目的とせずに、損失を他の所得から差し引くことが目的になっていれば、それは脱税です。

逆に、雑所得(業務)の説明として、副業に係る所得とされていますが、副業だから事業所得にならないという訳でもありません。そもそも何をもって副業とするのか。例えば、週3日会社で働き、週2日はフリーランスとして働くことは今後着実に増えていくかと思いますが、この場合もフリーランスの報酬はここでいう副業に係る所得になるのでしょうか。仮に、会社からの給料とフリーランスの報酬が5:5だったら? これもなかなか曖昧ですよね。結論から言えば、本業よりかける時間が少ない、あるいは得られる所得が少ないという意味での副業であっても、上記のように営利性、継続性があり、社会通念上、事業とみなせるレベルであれば、事業所得になりえます。

ということで、整理をすると、

継続的に儲けるつもりで、儲ける一定の確からしさがある場合は事業所得
  • 開業届は出しておくべき、ただ、開業届が出ているから自動的に事業所得になるわけではない
  • 副業でも、一定の規模があり、継続性営利性があれば事業所得になりうる
  • 一方で、恒常的に赤字だったら、継続性営利性が認められないので雑所得

儲かったらラッキーぐらいのつもりの場合は、雑所得の業務
  • 事業所得に該当しない場合は雑所得
  • ちょっと小遣い稼ぎの副業は、規模の観点でも、継続性営利性の観点でも事業所得として認められない

ただ、この境界線ははっきりした白黒ではありません。そのため、どちらに該当するか迷う場合には、税務署もしくは税理士に相談すべきかと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 20:36 | TrackBack(0) | 税金・法令

2021年02月19日

業務所得?

前回は確定申告書から性別の記入欄がなくなったこと、一方で(今のところ)押印欄が残っていることをお話ししました。また、それ以外にも多くの変更が発生していることは以前にもお話ししました

性別の記入欄がなくなったことはまさに時代を反映したものだと思いますが、同様に時代を反映している、なおかつ、同時に国税庁の意思も反映しているように思えるのが、今回新しく登場した「業務所得」です。

業務所得って、事業所得とどう違うの、と思われるかもしれません。非常に紛らわしいですよね。正確に言えば、業務所得という所得が新設されたのではなく、これまでにも存在した「雑所得」に「業務に係るもの」という新しい区分が新設されました。これを受けて、今回の申告書では、雑所得が公的年金等とその他の2区分から、公的年金等、業務、その他の3区分になっています。

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国税庁の定義では、雑所得とは「利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも当たらない所得」とされています。この中で、業務に係るものに該当するものとしては、「副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)」と説明されています。

新型コロナウイルス禍の中で、Uber Eats等の食べ物デリバリーを頻繁に見るようになりましたが、それ以前からいわゆるギグエコノミーで収入を得ている人が増えている、さらにそれ以前から、ネットオークション等で収入を得ている人が増えていると言われており、これに対し、国税庁として、ちゃんと申告してくださいという注意喚起がなされてきました。

今回の雑所得の中に業務という区分を新設したことは、今後こういった収入をしっかり見ていきますよ、という国税庁の強い意志を感じるのは私だけでしょうか。

なお、上記でネットオークションで収入を得ているというのは、売ることを目的に仕入れており、それをネットオークションで販売した場合です(いわゆる転売ヤーということになるでしょうか)。同じネットオークションでも、古着や家財など、もともと生活用物品として利用していたものの売却は非課税とされています(そもそもこれらは普通買った値段より安く売るわけですから、利益も出ませんしね)。
posted by 岡本浩一郎 at 22:42 | TrackBack(0) | 税金・法令

2021年02月17日

申告書と時代

いよいよ昨日から確定申告が始まりました。今回の確定申告書は様式が大幅に変更されていることは以前お話ししました。例年何らかの変更はあるのですが、それらをマイナーアップデートだとすると、今回は間違いなくメジャーアップデート。

実は今回、申告書の意外な部分が変わっています。それも時代を反映する形で。

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上が昨年までの確定申告書のうち住所・氏名などの基本情報を入力する欄です。下が今回(令和2年分)。サイズが変わったり、場所が変わったりと一見結構変わっていますが、実は項目レベルで変わった(なくなった)のは一つだけです。どれだかわかりますか?

正解は性別の記入欄です。昨年までは男もしくは女をマルで囲う欄がありましたが、今回からはそれがなくなっています。昨今は、そもそも男もしくは女という二者択一ではないという理解が広がりつつありますし、また、男はこうだ(こうであるべし)、女はこうだ(こうであるべし)というのもステレオタイプであり、不適切であるというのが浸透しつつあります。不適切な発言で、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の委員長が辞任したのも記憶に新しいところ。

そんな時代ではあっても、様々な書類にごく当たり前に性別の記入欄があります。でも、本当にそれが情報として活用されているのか、あるいは活用されるべきなのか。そういった中で、今回確定申告書から性別欄が消えたことは、地味だけれども、実は大きなステップなのではないかと思います。

もっとも、実は細かく言えば確定申告書には性別を記入する意味があると言えばあります。性別によって控除に差が出るケースがあるからです。寡婦(寡夫)控除が見直しされてひとり親控除になったことは以前お話ししましたが、実はひとり親控除には該当しない場合でも、女性にだけ認められる寡婦控除は残っています。ただ、これに関して言えば、控除の方を見直すべきなのではないかと思いますが。

今回時代を反映してなくなったのが性別欄ですが、逆に残念ながら今回は時代を反映しなかったものもあります。それは何かというと…、押印欄です。

菅政権の発足以降、押印の必要性が急速に見直されるようになったことは非常に意味のあることだと考えています。ただ、今回の確定申告書の様式には見直しが間に合わなかったようで、今回の様式にはしっかり押印欄が残っています。

一方で、昨年12月に、「提出者等の押印をしなければならないこととされている税務関係書類について、次に掲げる税務関係書類を除き、押印を要しないこととする」という方針が示されており、この方針に従えば、今回の確定申告では押印しなくても「改めて求めないこと」となるはずです。

もっとも、税務署によっては今年は押印してほしいというところもあるようで、現時点では上記の方針は完全に徹底はされていないようです。とはいえ、これも以前にお話ししたことですが、今回の申告から、電子申告をすることによって税金が優遇されますから、書面前提で押印するかどうか悩むよりも、電子申告でサクッと済ませ、税金の優遇もゲットしたいところです。
posted by 岡本浩一郎 at 22:50 | TrackBack(0) | 税金・法令

2021年02月15日

総額表示の復活

いよいよ明日から確定申告が始まります。本ブログでも今年変わった点、気を付けるべき点を中心に集中的にお話ししたいと思いますが、その前に確定申告とは無関係ですが、実は影響が大きい法令改正についてお話ししておきたいと思います。

それは消費税の総額表示義務の復活。消費税導入の当初は、消費者に対する価格表示について、税抜とするのか、税込とするのか、決まりはありませんでした。しかし、税抜で表示しているお店と税込で表示しているお店での価格の比較が難しい、また、買う際に実際問題いくら払うかがわかりにくい(100円玉を握りしめた子どもがレジで110円といわれて呆然ということもありますよね)という問題意識から、2004年から、消費者に対する価格表示を消費税額を含めた総額での表示とすることが義務付けられました。

一方で、2013年10月からは、一定の条件付きですが、総額表示を義務付けないとする特例が認められました。2013年10月というと、2014年4月の半年前。そう、消費税率が5%から8%に、実に17年ぶりに引上げられようとするタイミングです。この特例が認められた背景としては、税率が引上げとなる前後で、総額表示を一気に切り替えるのが難しいということです。例えば、1,050円(税込)、2,100円(税込)、3,150円(税込)といった商品があるとして、2014/3/31から2014/4/1の一晩で、1,080円、2,160円、3,240円と価格表示を切り替えるのは現実的ではありません。そこで一定期間は、1,000円+消費税、2,000円(税抜)、3,000円(本体価格)といったような税抜価格での表示を特例として認めることになりました。

この特例措置はもともと2018年9月末までと定められていましたが、その後、消費税率の10%への引上げが2回に渡って延期されたことを受け、特例措置の終了も延長されていました。延長後の期限が2021年3月31日。そうです、この3月末です。消費税率10%への引上げが2019年10月に実施され、その先さらなる消費税率の見直しは今のところ予定されていないことから、特例措置を終了し、本来の総額表示に戻すわけです。

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総額表示ということで、2021年4月以降は、

10,780円
10,780円(税込)
10,780円(税抜価格9,800円)
10,780円(うち消費税額等980円)
10,780円(税抜価格9,800円、消費税額等980円)

といったような価格表示とする必要があります。

なお、総額表示の義務は、「消費者に対して、商品の販売、役務の提供などを行う場合」、つまりいわゆる小売取引が対象です。ですから、事業者間でやり取りする見積書や契約書などにはこの義務は課されません。また、小売取引において、不特定かつ多数の者に対する値札や店内掲示、チラシあるいは商品カタログにおいて、「あらかじめ」価格を表示する場合を対象に求められるものですから、そもそも価格表示がされていない場合や、口頭での価格の表示も対象外となります。

ちなみにこの総額表示義務は消費税法上の罰則はないそうです。新型コロナウイルス禍の影響もあり、4月からいきなり義務違反と指摘されることもないのだと思いますが、それでも法令上定められた義務ですから、しっかり対応はしておきたいところです。こちらの国税庁のページ財務省が用意したよくある質問も参考にしてください。
posted by 岡本浩一郎 at 17:40 | TrackBack(0) | 税金・法令

2021年02月12日

オンライン新年会

先週金曜日に開発本部の新年会を開催しました。例年、12月は忘年会の予定が多く入ります。社内の忘年会が多いのですが、大阪や札幌など、各拠点に木曜日や金曜日に出張して、その晩、忘年会を開催するのがお決まりのパターン。拠点を網羅するために、秋ぐらいには予定を調整します(気が早っ、と思われていることでしょう、笑)。ただ、昨年12月は新型コロナウイルス禍の影響を受け、出張は全てキャンセルとなりました。残念。

実は、開発本部については、元々忘年会の予定がありません。12月といえば、年明けの確定申告版提供に向けた開発のピークであり、気分的に忘年会をやっている場合ではない、という事情があります。このため、開発本部については、確定申告版を無事リリースした後、1月末ぐらいに新年会を開催するというのがお決まりのパターンです。

この状況下ですから、新年会は完全オンライン。乾杯や新しく入った方の自己紹介などは全体で、一方でワイワイはZoomのブレイクアウトルームの機能を使って6~7人ぐらいの小部屋に分かれて。Zoomで大人数になると発言のタイミングをはかるのが難しいですが、ブレイクアウトしての小部屋でのワイワイは、まさにお店のテーブル単位でのワイワイという感じ。久し振りに色々な方と話せてとても楽しかったです。

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今回の新年会は、参加者に事前に食べ物と飲み物が送付されました。食べ物の送付自体は顧客サービス本部総会社員総会でも実施していましたが、これらの時は100人以上という規模感で手配できるサービスが限られており、手配に苦労しました。今回はこちらの忘年会で好評だったnonpi foodboxというサービスを利用しました。私は初体験でしたが、(味にうるさい私からしても)味もまずまず。手配のプロセスもよくできており、幹事さんにも好評のようです。新型コロナウイルス禍は飲食業界に大きな影響を与えていますが、美味しいものをみんなで食べたいというニーズ自体は存在するわけで、こういった新しいサービスはまさに危機を機会に、という感じですね。
posted by 岡本浩一郎 at 18:01 | TrackBack(0) | 弥生

2021年02月08日

税理士特集

前回はダイヤモンド・オンラインの「税理士サバイバル」という特集の一環で、私の取材記事が掲載されたことをお話ししました。ちなみにこの特集は紙面では本日発売の週刊ダイヤモンドに掲載されているのですが、紙面では1)会計士、2)コンサル、3)税理士の豪華3本立てとなっており、私の記事はページ数の関係でマルっと割愛されたようです(泣)。

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このような税理士特集は様々な雑誌で年に一回ぐらい組まれます。多くは、クラウドが来た、RPAが来た、税理士の仕事はなくなる、税理士の未来は暗い、という(言葉を選ばずに言えば)煽り記事。税理士という「士業」であり、独占業務を持っていることに対する妬みが根底にあるのではないかと思うぐらい極端な論調の記事も珍しくありません。

今回の特集に関しては、「クラウド&RPAの大波襲来」といったいかにも煽り的な部分もあるのですが(これまでにもお話ししているように、クラウドもRPAも所詮道具でしかないので)、それでも全体としては、この種の特集の中では比較的客観的に書かれていると思っています。実際、取材の際にも、意外に(失礼!?)客観的に見ていらっしゃるな、と感じました。

そもそも税理士には多様性があり、差別化の仕方、競合優位性の築き方は一つではありません(そこは規模を追求せざるを得ない監査法人と大きく異なります)。私の記事でも「税理士の先生方の生き残り策は、経営コンサルタントとして経営者の心理カウンセラーのごとく悩みを聞いてアドバイスすることや、税の種類に特化するという方法もあるでしょう。勝ち筋はたくさんあると思います」とお話ししています。それに呼応してということではないのでしょうが、特集の一つとして「税理士8タイプ生体図鑑」という異なる戦略が描かれています。注文を付ければ、「街の税理士」に対し、やや否定的に書かれているのはひっかかりますが。街の税理士は、いわば事業者のかかりつけ医。ここに書かれたような後ろ向きな街の税理士ももちろんいますが、前向きな街の税理士も沢山います。

ということで、この種の特集の中では、比較的読み甲斐があるのではないかと思います。税理士の先生方の感想も聞いてみたいところですね。

ところで、記事中で税理士法人ベリーベストがRPAの活用事例として紹介されています。ただ、税理士の先生方ならお分かりいただけるかと思いますが、会計ソフトから税務申告ソフトへの転記をRPAでというのもいいのですが、より重要なのは、会計ソフトへの入力の効率化です。この点に関しては、実は2018年秋のPAPカンファレンスで、税理士法人ベリーベスト代表の岸先生に記帳代行センターの立上げとスマート取引取込の活用について講演いただいています。

こちらのPAPカンファレンス開催レポートでは講演の概要がまとめられており、講演資料もダウンロード(PAPログインが必要)できますので、是非ご覧になってください。
posted by 岡本浩一郎 at 22:34 | TrackBack(0) | ビジネス

2021年02月05日

弥生の脅威は?


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これは、「税理士サバイバル」という特集の一環で、1月の半ばに取材を受けたものです。元々は対面でのインタビューの予定でしたが、緊急事態宣言発出ということでZoomでの取材となりました。

特集全体としては2/1(月)に公開されており、その中で私の取材に関しては、冒頭のタイトルで2/5(金)に公開されることが明かされていました。それを見た私の反応としては、私が意識するのはF社やM社ではない…、はて、では何だろう、あれ、何を話したっけと悩んだのはここだけの秘密です(たかだか2~3週間前のインタビューなのに困ったものですね)。

いよいよ今日公開された訳ですが、肝心の記事を読んでも、私が何を意識するのかについては、明言されていません。タイトルに対する明確な答えがない…(苦笑)。そこで少し補足させていただくと、「F社やM社を脅威に感じるか」といったような質問に対し、「F社やM社のことは意識はしている」「ただ脅威ではない」とお話しました。

別に相手にしていないということではありません。他社が何をしようが、それによって弥生が負けることはありません。それだけの圧倒的競合優位性を今は築くことができています。ただ、それがいつまでも自然に続くとは思っていません。弥生自身がやるべきことをやらなければ、自ら負けを招いてしまうという強い危機意識を持っています。

では、やるべきことは何か。これは記事中に明確に書かれていますが、「会計ソフトという道具を作る“道具屋”としては、中小企業や税理士が『経理データの入力』『帳簿を付ける』という作業そのものをなくすことが、取り組むべきことだと思っています」。これを弥生自身が強い意思で推進する限りは、弥生が負けることはありません。ただ、油断してこういったことに真剣に取り組まなければ、弥生は衰退し、いつかは負けるでしょう。ただ、それは競合に負けたというよりは、自分に負けたということだと考えています。

結局、「会計ソフト弥生の社長が意識するのは『freeeやマネフォ』ではなかった!」というタイトルに対する直接の答えは何か。それは「それは自分たち自身だった!」です。
posted by 岡本浩一郎 at 18:02 | TrackBack(0) | 弥生