2015年09月30日

FY15期末

iPhoneも毎年恒例の話題ですが、こちらも毎年恒例。今日9月30日で世間より一足早く弥生の2015年度(FY15)が終了します。

今期は、弥生のクラウドアプリケーション、弥生オンラインを大きく前進させることができました。期初となる昨年の10月には、やよいの青色申告 オンラインをスタート。今年の3月には、早くも個人事業主向けのクラウド会計ソフトとしてNo.1を獲得することができました。そして、7月には、いよいよ法人向けの弥生会計 オンラインもスタートしました。

もちろんデスクトップアプリケーションも引き続き好評でした。昨年10月に発売を開始した弥生 15 シリーズは、さすがに消費税率の17年ぶりの引上げ、Windows XPのサポート終了という2大イベントが重なった弥生 14 シリーズほどの勢いではないものの、期初の計画通りの成果を収めることができています。これらの成果もあり、全社の売上/利益という意味でも、無事、期初の計画通りに終えることができそうです。

今日は期末の最終営業日。一般的な期末のイメージと言えば、全員がお客さま先で最後のクロージングを図り、当然、私も終日トップ営業となるところですが、実際には、午後一杯使ってマーケティング本部のFY16キックオフミーティングを開催しています。つまり今日はマーケティング本部の全員(+私)がオフィス(実際にはオフサイトですが)に籠りきり。

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これは今期(FY15)の目標達成が確実だから最終日はのんびり(笑)ということではなく、弥生のビジネスモデルによるものです。以前も書いた通り、弥生のビジネスモデルは、高価なものを営業して買って頂くPush型(売り込み型、営業型)ではなく、リーズナブルをものをお客さま自身が納得して(家電量販店などに)買いに来て頂くPull型(購買促進型、マーケティング型)です。営業ではなく、マーケティング。追い込みではなく、仕込み。そういった意味で、決してのんびりしているわけではなく、今日は明日から始まるFY16に向けた仕込みをマーケティング本部全員で共有する極めて重要な場なのです。

さて、いよいよ明日からは2016年度(FY16)。お陰さまでFY15は良い形で終えられそうですが、FY16はまたゼロからのスタート。マーケティング本部はもちろん、弥生の全社員が皆で力を合わせ、お客さまにより良い価値を提供することによって、弥生としてもより良い成果を達成したいと思います。

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ところでお気付きの方もいらっしゃるかもしれませんが、昨日の日経朝刊に登場しました。これは先日ご紹介した日経ビジネスアソシエの記事を抜粋したもの。アソシエの方から日経本紙にも掲載されるだろうという話は聞いていたものの、掲載日までは聞いていなかったので、ちょっと驚きました。ちょうど出張で飛行機の中でたまたま発見したので、周りに見られているようで、ちょっと恥ずかしい(完全に自意識過剰ですね、笑)。
posted by 岡本浩一郎 at 17:29 | TrackBack(0) | 弥生

2015年09月28日

毎年恒例の

毎年この時期と言えば… そうです、早速買ってしまいました…。

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毎度のことですが、sなしとsありでは外観上は区別が付きません。唯一背面のiPhoneロゴに"s"の記載が入ったのがわかりやすい判別ポイント。

正確に言えば、iPhone 6sは6よりも15g重くなっています。これは持てばわかりますが、すぐに慣れてしまうでしょうね。また、厚み/横幅/高さそれぞれが0.1mmから0.2mm程度大きくなっています。これは見てもわかりません。今回、iPhone 6s対応というシールが貼られているカバーも新調したのですが、確かに利用はできるものの、かなりキツキツの感じ(外すのが結構大変)。これも0.1mmの違いによるものなのかもしれません。

本ブログの熱心な読者(?)の方はご存知のように、毎年iPhone登場と騒ぎつつも、これまでの買い替えサイクルは2〜3年に一度。3GSから始まって、3年後に5、そしてその2年後に6。段々とサイクルが早まってついに一年になった訳です。本来は見送るタイミングではあるのですが、家族がそろそろスマホに変えたいということで、これ幸いとこれまで使っている6を譲ることにしました。ラッキー。

ただ、スマホもこれだけ普及してきた中で、iPhoneといえども新機種が出たから大騒ぎとはならなくなってきているように感じます。発売直後でもかなり在庫のある家電量販店もあり、今回はいつ手に入るのかわからない、という状況ではないようです。私の場合も、予約したのは予約開始の数日後になってしまったのですが、すんなりと発売日に届きました。

使ってみても、良くも悪くもこれまで通り。「唯一変わったのは、そのすべて。」というのが今回のiPhone 6sの売り文句ですが、ちょっと触った程度では、あえて6から買い替える必要はないような気がします。Touch IDの反応がちょっと早くなったような気もしますが、これまで通りサクサク使えます。3D Touchもまだそのメリットを感じるところには至らず。今後より多くのアプリケーションが対応すると、なるほどこれは便利となるのかもしれませんが。全体的に、iPhone 6sによる変化というよりは、iOS 9による変化を感じます。もっとも、なんだかんだ言って買い替えている訳ですから、それだけiPhoneにはまっていることは否定できませんね。
posted by 岡本浩一郎 at 19:11 | TrackBack(0) | テクノロジー

2015年09月24日

ふるさと優待到着

以前ご紹介したオリックスの新しい株主優待制度、「ふるさと優待」。「お取引先が取り扱う商品の中から、オリックスが1地域1商品、5,000円相当の名産品を厳選してカタログギフトに仕立て、対象となる株主の皆さまにはその中からお好きな商品1点をお選びいただきます」というなかなかユニークな優待です。

私も一応株主ということで、しっかり申込みは済ませておりました。必ずしも大量生産できるものではないので、商品は順次発送とのこと。以前も書いた通り、オリックスの3月末での個人株主数が9万3,000人。単純計算で言えば、商品あたり1万人ぐらいになりますので(お申込みをされない方もいらっしゃるかと思いますし、希望が偏ることもあるでしょうが)、希望された方全員にすぐに発送というのは現実的に難しい。気長に待つつもりでしたが、我が家へは2週間ほど前に無事到着しました。

今回は、北は北海道からお菓子の詰め合わせ、南は福岡から野菜ドレッシングの詰め合わせなどバラエティ豊かな名産品(+オリックスが運営している京都水族館もしくはすみだ水族館の年間パスポート)からの選択だったのですが、私は「スナッフルス菓子詰め合わせ」を選択。到着してみると結構なボリューム。さすが5,000円相当です。

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さっそく頂きましたが、美味しい! オリックスのお取引先ということでのお世辞ではなく、掛け値なしに美味しい。家族にも大好評でした。新千歳空港でも販売しているようなので、今後は札幌出張時のお土産の定番になりそうです。

ギフト対象となる商品は毎年更新されるとのことですが、株主の皆さまにオリックスのファンになって頂くと同時に、オリックスのお取引先のファンにもなって頂ければ、とても嬉しいことですね。
posted by 岡本浩一郎 at 20:38 | TrackBack(0) | オリックスグループ

2015年09月18日

数字は「足し算・掛け算」の"シンプル数字力"でOK

既に一週間ほど経ってしまいましたが、9月10日に発売になった日経ビジネスアソシエの最新号の特集は、「Excel (エクセル) で数字に強くなる! - “数字が苦手”でも大丈夫!」。この特集のPART1、「経営トップが明かす『数字力』」というコーナーに、あの獺祭の蔵元である旭酒造の桜井社長と並んで、私のインタビューが掲載されています。

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私のインタビューのタイトルは、「数字は『足し算・掛け算』の"シンプル数字力"でOK」というもの。私は一応理系ではあるのですが、数学は得意ではありません。大学入試のための、三角関数、微分積分は何とかこなしましたが、行列はやや苦手としていました。大学に入ってからの線形代数は正直言ってよく単位が取れたな、というレベルです。

そんな私ですが、数学ではなく、数字自体は決して嫌いではありません。むしろ好きと言えると思います。以前社内報にこんなことを書きました。

「エリック・カール展」を見てきました。お子さんのいらっしゃる方には説明不要でしょうが、Eric Carle(http://www.eric-carle.com/)とは、絵本作家で「はらぺこあおむし(The Very Hungry Caterpillar)」の作者です。とにかく有名なのははらぺこあおむしなのですが、この他にも40冊以上の絵本を書いているそうです。

はらぺこあおむしは47ヶ国語で出版され、総部数が2,900万部。その他の著作をあわせるとなんと8,800万部に達するそうです。8,800万部を平均単価1,000円とすると、880億円!。作家の印税を10%とするとEricさんの取り分は88億円になります(正確には、英語版と翻訳者の印税も発生する外国語版を分けて計算した方が良いかもしれませんね)。さらに、我が娘は泣き叫んで小さなあおむしのぬいぐるみをゲットしましたが、こういったグッズからもライセンス料が得られますから、実際の収入は100億円を超えているのではないでしょうか。ちなみにEricさんは、今年80歳ですが、秋冬春はFloridaで、夏はNorth Carolinaでのんびりと暮らしながら創作を続けられているようです(羨ましい!)。さらにちなみにですが、大ベストセラーHarry Potterシリーズは全世界で4億部を超えているそうですから、まさに桁が違います。

こんな感じで、数字について考えることは結構好きなのです。ただし、その際に出てくるのは足し算と掛け算のみ(もちろんその裏返しとして引き算・割り算もあります)。

ちょっと前に三角関数は必要かという議論もありましたが、むろん少なくとも概念として三角関数を理解していることは大事だと思います。ただ、概念として理解しているというのと、バリバリと活用する/活用できるというのは別の話。実社会もそうですが、ビジネスの世界でも、ほとんど足し算・掛け算で足ります。そういう観点から、三角関数やら行列が苦手だから、数学が苦手、数学が苦手だから数字も苦手となってしまうのは勿体ないことだと感じています。

正直あまり奥深いことを語っている訳でもないのですが、逆に、この程度の「数字力」でもそれなりにビジネスで結果を出すこともできるんだ、と読んで頂ければ幸いです。
posted by 岡本浩一郎 at 17:32 | TrackBack(0) | ビジネス

2015年09月16日

国勢調査とマイナンバー

我が家にも国勢調査票(正確に言えば、インターネット回答の利用案内)がやってきました。

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今年は国勢調査の年。国勢調査は、ほぼ一世紀前となる1920年が第一回目で、「国内の人口や世帯の実態を明らかにするため、統計法という法律に基づいて、5年に一度実施され」、今回が20回目になるそうです。今回の国勢調査では、インターネットでの回答を全面的に推進することが大きなトピック。9月10日から9月20日までがインターネット回答の期間とされ、その後、インターネット回答のなかった世帯向けのみに改めてこれまでと同様の紙の調査票を配布するのだそうです。

インターネット回答を推進するのは、効率性の観点から非常に良いことだと思うのですが、インターネット回答用のID/パスワードの配布方法にやや難があったようです。本来は、個別の住戸を訪問し、手渡しが基本なのですが、マンションなどで最初からポストに投函されている、さらには、ポストからはみ出ているので、盗まれかねないという指摘が相次ぎました

私の家も、ポストに投函されていました。もっとも、不在にしていたからという可能性もありますし、少なくとも私の場合は、ポストに全て入っていたので、盗られる心配はありませんでしたが。

インターネットでの回答自体は15分ほどで終了し、躓くこともありませんでした。入力も簡単ですし、何よりも回答の集計も格段にラクになります。これは国全体としての効率性向上としては素晴らしい取組みだと思います。

難を言えば、回答用のサイトのアドレス(http://www.e-kokusei.go.jp/)を手打ちにさせるのは「?」と思いました。これは、「検索サービスを悪用したフィッシング詐欺被害を防ぐため」だそうです。うーん、それであればSEOをキチンとやった方がいいような気もしますが。ただ、最大の課題は、やはりインターネット回答用のID/パスワードの配布方法でしょう。これまで国勢調査は調査票を一戸一戸配るという方法が続いてきましたので、その流れで今回の方法なのでしょうが、回答もインターネットになる時代、もう少し効率的にできないか、とは思います。

ふと思ったのですが、今回に関してはマイナンバーの通知と絡めるというやり方もあったように思います。ご承知のように、この10月からはマイナンバーの通知が始まります。この通知は、市区町村から、原則として住民票に登録されている住所あてにマイナンバーが記載された「通知カード」を送ることによって行われますが、この通知と一緒に国勢調査の資料を送ることもできたのではないでしょうか。通知カードは簡易書留で送られることになっていますから、個別に配布するよりも格段に安全なはずです。

もちろん現実的には、国勢調査は調査期日が10月1日午前零時現在、一方はマイナンバーは10月1日から通知開始という時間のずれの問題ですとか、国勢調査は世帯にしらみつぶしに配布するのに対し、マイナンバーは住民票の情報が基(つまり住民票を移していない場合や住民登録をしていない場合にずれる)ですとか、国勢調査は総務省だけどマイナンバーは内閣府という所管の差ですとか、やらない理由をあげるのは簡単です。

ただ一方で国勢調査もマイナンバーも膨大な労力(=税金)がかかることは事実。今回の国勢調査のインターネット回答は大きな一歩だと思いますが、将来的には、省庁を超えて様々な業務が統一的に行われ、より行政の効率化を図れればと思います(本来はそのためのマイナンバー、ですよね)。
posted by 岡本浩一郎 at 10:09 | TrackBack(0) | その他

2015年09月11日

本当の狙いは

前々回から、マイナンバーを利用して2%分の消費税を還付する制度について考えてきました。今日の朝刊では、日本型軽減税率制度の財務省案として掲載されましたが、概ね事前に報道された通りで、特に新しい情報はありませんでした。

この日本型軽減税率制度について、これまで色々と考えてきましたが、やはり、特に費用対効果の観点から、首を傾げざるを得ない仕組みです。給付付き税額控除という制度であれば、ほぼ同じようなメリットを提供でき、なおかつ費用対効果が高いからです。それでもなぜこの日本型軽減税率制度なのか。一つの大きな理由が、この制度名称からにもあるように、あくまでも「軽減税率」の制度に拘っているということでしょう。

ただ、今回の仕組みを飲食料品に関する軽減税率を実現する仕組みとしてではなく、もっと壮大な社会的なインフラとして考えれば、首を傾げざるを得ない仕組みから、極めて合理的な仕組み(賛否両論だとは思いますが)に180度変わりうるのです。それがもう一つの、かつ、実は本当の狙いなのかもしれません。その極めて合理的な仕組みを既に実現しているのが、韓国の現金領収書の仕組みです。

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実は韓国では、既に物品(飲食料品に限らず)を現金で買う際に、個人を特定するIDを提示することが一般的になっています。そしてその情報は、韓国の国税庁に集約されるようになっています。もっとも、それは軽減税率のためではありません(改めてお話ししますが、軽減税率ではないものの、個人にメリットがあるような仕組みにはなっています)。

税金を徴収する側からすると、一番困るのは事業者に売上を隠されること。売上を隠してしまえば、それに見合う利益もなくなりますし、結果として納税する額を減らすことができます。これはもちろん犯罪ですが、よくあることであるのも事実。実際、POSレジのないような飲食店(昔ながらのパターンで言えば、カゴに小銭を入れてぶら下げている八百屋さんもそうですね)では、売上がなかったことにするのは容易です。当然のことながら、日経での「税務署は見ている」という連載でも度々語られていますが、税務調査でも売上が隠されていないのかは大きな焦点になります。

一方、海外では、事業者が売上を隠すことを防ぐための仕掛けとして、例えば、決まった用紙での領収書発行を義務付けることがあります。代表的なのが、台湾の統一発票というものです。韓国の現金領収書という仕組みもこの延長線上にあります。すなわち、必ず領収書を発行させ、さらにそれをデータとして収集する。その狙いは、隠されがちな現金での売り上げを漏れなく捕捉しようというものです。

韓国の現金領収書と同様に、今回の日本型軽減税率制度も購買履歴を収集し、一元管理する仕組みです。この仕組みでは、個人の購買行動が把握される、という懸念が多く聞かれますが、その実際の狙いは、買った人の履歴を捕捉することではなく、売った人の履歴を捕捉することと考えたらどうでしょうか。つまり、日本型軽減税率制度は、その実、韓国の現金領収書のように、売上を漏れなく捕捉するための仕組みと考えたら。

この仕組みは間違えなく様々な議論を呼ぶでしょう。ただ、真面目に税金を納めている人からすれば特に恐れるような仕組みではありません。個人的には社会的な公平性と効率性を実現するためには、極めて合理的な仕組みだと考えていますし、結論はともかく、真剣に検討すべき仕組みだと考えています。

[参考]
韓国の現金領収書の仕組みについては、こちらのレポート(pdf)のp172~が詳しいです。
台湾の統一発票については、こちらのレポート(pdf)をご参照ください。
posted by 岡本浩一郎 at 18:50 | TrackBack(0) | 税金・法令

2015年09月10日

本当の狙いは別のところに?

昨日お話ししたマイナンバーを利用して2%分の消費税を還付する制度ですが、冷静になって考えるほど、疑問が湧いてきます。本当にこの制度が実現可能なのか、実現は可能だとしても特に費用対効果という観点から妥当性のあるものかどうか。

まずは実現可能かどうか、ですが、技術的に実現可能かどうか、と言われれば可能でしょう。ある意味、Tポイントカードのようなポイントの仕組みと同様と言えば同様ですから。購買履歴に対し、2%(正確に言えば税込価格の2/110)のポイントを蓄積し、それをあるタイミングで現金として振り込む。後述する費用の観点を一旦脇に置けば、販売者が準備しなければならないICカードリーダーも技術的には問題ありません。インターネットに接続していないお店のために、ICカードリーダー自体に通信機能を付与することも可能でしょう(ただし、電波の届かないところもゼロではないですよね)。

とはいえ現実的には課題は山積みです。まずは準備の時間。軽減税率は2017年度に導入するとされていますが、「軽減ポイント蓄積センター(仮称)」の構築は何とか間に合わせるにしても、ICカードリーダーを全国津々浦々に存在するお店(対象は酒を除く飲食料品を扱うお店に限られますが)に行き渡らせることができるかというと、これはまず不可能でしょう。とりあえず強制的に送りつけることはできるかもしれませんが、そもそもPOSレジもないような個人商店で実際に使えるようにするには時間が足りません。

もっとも、時間に関しては、2017年度の導入を諦めるとすれば何とかなりそうな気もします(10%引き上げからこの制度導入までの期間は簡易的な給付措置など暫定的な対応を行う前提で)。

ある意味、時間以上に課題が大きいのはセキュリティでしょう。還付を受けるためには個人番号カードを常時持ち歩かなければならない(落としたらどうする?)。また、ICカードリーダーで読み取る際にも、カード上に記載されている個人番号を店員に見られないように(店員も見ないように)しないといけない。さらに、飲食料品をネットで購入する場合には、購入時に(もしくは予め)個人番号を入力しなければならない、そして販売業者はそれをありとあらゆる手段を使って秘密に保たなければならない。

実はこれらは課題としては本質的ではありません。以前本ブログでも書きましたが、個人番号はあくまで個人を特定するIDであって、その個人であることを証明するパスワードではありません。情報セキュリティの観点では、秘密に保たれるべきはパスワードであって、IDではありません。一方で、個人番号は法律によって特定個人情報として極めて秘密性を高く保たれることが求められており(それができない場合には懲役刑すらありうる!)、それがマイナンバーを今回の制度に活用することを極めて難しくしています。

ただ課題が山積みの中で、最大の問題は費用対効果でしょう。前回もお話したように、今回、還付には一人年間4,000円程度の上限が定められるそうです。となると、人口を1億2千万として、還付される額は、約5,000億円。一方で、購買金額を記録する「軽減ポイント蓄積センター(仮称)」の整備に約3,000億円かかるそうです(第二の国立競技場ですとか、新たな天下り組織と否定的な意見が早速聞こえてきています)。さらに、ICカードリーダーを広く普及させるために数百億円使うと言う話も聞こえてきます(ただ、個人商店に行き渡らせることはできても、実際に使えるようにするためにはもっとお金がかかるでしょう)。5,000億円を還付するために、3,000億円以上かける。もちろん還付される額は毎年で、整備費用は一過性ですので、apple to appleではありませんが、整備されたシステムの維持費用もありますし、少なくともかなりコストのかかる仕組みであることは事実でしょう。

ある意味この制度の最大の難点は、同様の効果を持ちえて、なおかつ、上に挙げたような課題がほとんどない代替制度がありうるということでしょう。それは前回もお話した給付付き税額控除です。

今回の制度では、一人年間4,000円程度の上限が定められると書きましたが、これは酒を除く飲食料品で年間20万円ほど支出するという計算になります。一人年間20万円、すなわち月2万円以下ですから、確かに誰でもがこの制度のメリット(還付)を受けることになるでしょう。ただ、逆に、誰でもメリットを受けるのであれば、面倒くさい仕組みを導入することなく、単純に一人当たり4,000円を支給するという発想が生まれます。

このアプローチでは、支給するのではなく、税金(所得税)から差し引く(税額控除)というやり方も可能です。以前行われたこともある定額減税がこのやり方ですね。ただ、税金から差し引くやり方の場合、そもそもそこまで税金を払っていない人はメリットをすべて受けることができない、という課題があります。つまり税金を10,000円納めている人は4,000円の控除を受けて負担が6,000円(4,000円のメリットを受けた)になりますが、税金を1,000円納めている人は、1,000円しか控除を受けられない。

この課題を解消しようとするのが給付付き税額控除で、税金を10,000円納めている人は4,000円の控除を受けて負担が6,000円(4,000円のメリットを受けた)というところまでは同じですが、税金を1,000円納めている人は、1,000円控除を受けて税額が0円になった上で、さらに3,000円の給付を受けられる(合計4,000円のメリットを受けられる)という仕組みです。

この給付付き税額控除の場合、マイナンバーで還付方式と異なり、大掛かりな仕組みの整備は必要ありません。基本的にこれまでの税金計算/納付の仕組みの延長線上で実現できます。つまり給付付き税額控除は圧倒的に費用対効果が高いということになります。

では、ほぼ同じようなメリットを提供でき、なおかつ費用対効果が高い制度が存在するのに、なぜ今回課題が山積みのマイナンバーで還付方式が急浮上してきているのでしょうか。それは、後者は政権公約である軽減税率の一種だ、と主張できるから、ということでしょう。

ただ、実は、今回の仕組み、飲食料品に関する軽減税率を実現する仕組みとしてではなく、もっと壮大な社会的なインフラとして考えれば、首を傾げざるを得ない仕組みから、極めて合理的な仕組み(賛否両論だとは思いますが)に180度変わりうるのです。その極めて合理的な仕組みを既に実現しているのが、韓国の現金領収書の仕組みです。次回は、この現金領収書についてお話してみたいと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 21:43 | TrackBack(0) | 税金・法令

2015年09月09日

マイナンバー活用で2%分還付?

去る3月31日に、2015年度税制改正の関連法が国会で成立し、これによって、今年10月に予定されていた消費税率10%への引き上げは、2017年4月に延期されることが正式に法律として決定しました。一方で、これは国会で成立した正式な法律にはなっていませんが、一昨年末に自公両党によって公表された平成26年度 税制改正大綱において、軽減税率について「税率10%時に導入する」とされています。

ここにきて急に報道されていますので、ご存知の方も多いと思うのですが、この軽減税率について、表面上の税率を変えるという(世界的に見て)一般的なやり方ではなく、軽減の対象となる飲食料品(酒を除く)の購買金額を記録し、消費税2%相当分を別途還付するという案が急浮上してきました。どうやって購買金額を記録するかというと、個人番号カードを販売店で購入する時にICカードリーダーにかざすのだそうです。

私は税制のあり方について、立場的に、その良し悪しを発言しないように(少なくとも公の場では、笑)しています。弥生の仕事は、税制の筋が良いものであろうが悪いものであろうが、それをキチンとサポートするソフトウェアを提供し、なおかつお客さまの業務が滞りなく進むようにお手伝いすることだからです。ただ、今回の案にはさすがに驚きました。正直、首を傾げざるを得ません。

色々な方から意見が出始めていますが、突っ込みどころ満載です。全国津々浦々、飲食料品を扱っているお店が、ICカードリーダーをくまなく備え付ける。POSレジを利用しているお店はともかく、POSレジのないお店はどうするのか。事業主の負担の軽減策も考慮するとのことですが、少なくとも2017年という時間軸で考えると現実的とは思えません。

また、利用するのが、個人番号カードです。絶対的に機密情報として扱わなければならない個人番号が記載されたカード。そのカードを常時持ち歩き、飲食料品を購入する際には必ず提示する。そしてお店としても、その個人番号を見てはならないし、記録してもならない。しかし、飲食料品を購入する場所は物理的なお店とは限りません。らでぃっしゅぼーやのような宅配ですとか、ネット販売。その場合は、サイトで個人番号を登録するのでしょうか。そして宅配業者、ネット販売業者は本当は扱いたくもない個人番号を、絶対的な機密情報として扱うことを求められるのでしょうか。

百歩譲って、ここら辺の問題は解消できるとしても、費用対効果は正当化できるのでしょうか。今回、還付には一人年間4,000円程度の上限が定められるそうです。となると、人口を1億2千万として、還付される額は、約5,000億円。一方で、購買金額を記録する「軽減ポイント蓄積センター(仮称)」の整備に約3,000億円かかるそうです。5,000億円を還付するために、3,000億円かける。もちろん還付される額は毎年で、整備費用は一過性ですので、apple to appleで比較することはできませんが、整備費用は一過性といっても、一般的にITシステムでは年間で、初期整備費用の20-30%ぐらいの維持費用がかかることも珍しくありません。また、この整備費用には、全国津々浦々にICカードリーダーを配備し、実際に使えるようにするための費用も考慮されていません。

費用対効果という観点では、単純に一人年間4,000円の給付を行った方が賢明に思えます。これであれば、還付(給付)額は同じ5,000億円でも、そのために必要な費用は桁違いに少なく済むでしょう。でも、所得の高い人も含めて全員に給付するのでは、逆進性の解消にならない? それであれば、所得制限を設けて、一定の所得以下の方に定額を給付しても良いでしょう。ただ、そうなると、それは軽減税率ではなく、給付付き税額控除という制度になります。

一方で、マイナンバーを利用して、購買履歴(裏返せば売上明細)を広く補足するということに意味はあるかもしれません。それを実際に行っているのが、韓国の現金領収書の仕組みです。しかし、今回の変形的な軽減税率の仕組みは、まるで思い付きのようで、韓国の現金領収書のように、非常に深くまで考えられた仕組みには見えません。

穿った見方ですが、まるで、「ほーら、このやり方では無理がありますよね。だから…」と別の落とし所に落とすための釣り餌にすら見えてしまいます。

今回の財務省案は報道ベースの情報のみで、その詳細を全て把握できるいるわけではありませんので、今日この場で是非を明言することは避けたいと思います。さらなる情報を収集しつつ、改めてそのメリット/デメリットを冷静に考えてみたいと思います。同時に、非常に興味深い仕組みである韓国の現金領収書の仕組みについてもご紹介してみたいと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 23:58 | TrackBack(0) | 税金・法令

2015年09月04日

弥生フォーラム 開催レポート

7月に会計事務所向けに東京と大阪で開催した弥生フォーラム2015。最近は雨が続き、すっかり秋の長雨の様相で、ついこの間までうだるような夏だったことが信じられないぐらいですが、弥生フォーラムを開催した7月中旬はとにかく暑い日が続きました。その暑い中、非常に多くの方にご足労頂いたことを改めてお礼申し上げます。

当日参加頂いた方にはアンケートへのご協力をお願いしたのですが、お陰さまで大変好評でした。この弥生フォーラムの熱気を、ご都合が悪く当日ご参加頂けなかった方にもお伝えしたいということで、この度、開催レポートとして公開しました。

残念ながら、著作権の関係で河野さん/松井さん/岩田さんの講演内容を詳しくお伝えすることはできないのですが、せめても、ということで、私の講演「弥生の今とこれから」については、その概要を書き下しています。

また、個人的にはちょっと恥ずかしくも感じるのですが、私の講演については、ビデオ(音が出ますのでご注意下さい)としてノーカットで公開しています。約45分間、長いと言えば長いですが、見て頂いて後悔することはないと、ここで私が保証致します(万が一、後悔したという場合には、今後カンファレンスやフォーラムなどで是非お声掛け下されば、埋め合わせをさせて頂きます、笑)。

この講演の資料についても、PAP(パートナー会計事務所)限定となりますが、公開(pdf)しておりますので、あわせてご覧頂ければと思います。

私はそれなりな頻度でプレゼンテーションを行っていますし、どちらかというと慣れている方だと思います。ただ、この弥生フォーラムは次の登壇者にご迷惑をお掛けしないために、時間厳守。普段は±3分ぐらいまでは許容範囲なのですが、今回は秒単位で時間を守らなければならないということで、結構なプレッシャーでした。そのプレッシャーがいい方向に作用したのか(単純に今回は練習をキチンとしたから、ということのような気もしますが)、自分で言うのもなんですが、会心の出来です。

是非ご覧頂き、後悔しなかった場合でも、是非ご感想をお聞かせ頂ければと思います。

余談ですが、今回のビデオは大阪で撮影したものです。大阪では結構な身振り手振りを披露してしまったのですが、自分でもビデオを見返して、自分でも謎だった天に向けてのポーズが何だったのかが判明しました。これは、「一周回って上に登っている」という発言の際に出たものかと思います。講演のちょうど半ば、23分ぐらいです。
posted by 岡本浩一郎 at 14:23 | TrackBack(0) | 弥生

2015年09月02日

「学力」の経済学

先日友人に話したところ、結構喰い付きが良かったので、本ブログでもご紹介すると、最近読んでかなり面白いと感じたのが、『「学力」の経済学』という本です。著者は教育経済学者の中室先生。教育経済学というと耳慣れないですが、「教育経済学は、教育を経済学の理論や手法を用いて分析することを目的としている応用経済学の一分野」だそうです。

教育に関する定説として、例えば、ご褒美で釣っては「いけない」といったものがありますが、この本では、実験から得られた事実(エビデンス)を基に、定説が必ずしも正しいとは限らないことを証明します。例えば、ご褒美で釣っても「よい」。むろんどんなご褒美でもいいという訳ではありませんが、キチンと考えられたご褒美は勉強の楽しさを失わせることなく、学力を向上させうることがわかっています。

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この本を読んで思い出したのが、去年、BCG時代の同僚がこれはいいと推奨していたのをきっかけに読んだ「成功する子 失敗する子」という本(原題は"How Children Succeed")。この本も同じ教育経済学に基づいた本です。ただし、こちらの著者は経済学者ではなく、ポール・タフさんというジャーナリスト。格差社会と言われるアメリカで、何が子供の成功をもたらすのかを、父親になった著者が探求します。

興味深いのは、中室先生も、ポール・タフさんも、人生の成功で重要なのは実は認知能力(要はテストの成績)ではなく、非認知能力である、と明言していること。もちろん認知能力が高くて悪いということはありませんが、人生の成功により影響を持つのは「『忍耐力がある』とか、『社会性がある』とか、『意欲的である』といった、人間の気質や性格的な特徴のようなもの」である非認知能力。いわゆる「頭の良さ」よりも、「生きる力」。特に重要とされるのが、Grit、やりぬく力です。

両方とも極めて興味深いので、関心がある方には両方をお勧めしたいですが、親として何ができるかを考える上では、「成功する子 失敗する子」の方が得られるものが多いように感じます。一方で、制度としての教育について考える上では『「学力」の経済学』がお勧めです。「少人数学級」には効果はあるが、十分な費用対効果が得られない、から始まって、日本の教育の平等主義の弊害、さらには、教員免許の必要性はないのではないかという教育関係者から見ておそらくはタブーであろうトピックまでを明快に語る様は爽快ですらあります。それほど厚い本ではないので、表面的な説明に終わっているのがちょっと残念ですが(だからこそ気軽に読めるということにもなりますが)、根拠のない一般的常識や、経験則によるのではなく、エビデンス(科学的根拠)に基づいているだけに説得力があります。

ところで、二冊とも非認知能力の重要性を明言していると書きましたが、実はこれは当たり前で、両方ともシカゴ大学のヘックマン教授の研究を基にしているから。実は、この『「学力」の経済学』と前後して、当のヘックマン教授の著書「幼児教育の経済学」が翻訳・出版されたようです(原題は"Giving Kids a Fair Chance")。これはまだ未読なのですが、是非読んでみたいと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 22:20 | TrackBack(0) | その他