2015年09月11日

本当の狙いは

前々回から、マイナンバーを利用して2%分の消費税を還付する制度について考えてきました。今日の朝刊では、日本型軽減税率制度の財務省案として掲載されましたが、概ね事前に報道された通りで、特に新しい情報はありませんでした。

この日本型軽減税率制度について、これまで色々と考えてきましたが、やはり、特に費用対効果の観点から、首を傾げざるを得ない仕組みです。給付付き税額控除という制度であれば、ほぼ同じようなメリットを提供でき、なおかつ費用対効果が高いからです。それでもなぜこの日本型軽減税率制度なのか。一つの大きな理由が、この制度名称からにもあるように、あくまでも「軽減税率」の制度に拘っているということでしょう。

ただ、今回の仕組みを飲食料品に関する軽減税率を実現する仕組みとしてではなく、もっと壮大な社会的なインフラとして考えれば、首を傾げざるを得ない仕組みから、極めて合理的な仕組み(賛否両論だとは思いますが)に180度変わりうるのです。それがもう一つの、かつ、実は本当の狙いなのかもしれません。その極めて合理的な仕組みを既に実現しているのが、韓国の現金領収書の仕組みです。

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実は韓国では、既に物品(飲食料品に限らず)を現金で買う際に、個人を特定するIDを提示することが一般的になっています。そしてその情報は、韓国の国税庁に集約されるようになっています。もっとも、それは軽減税率のためではありません(改めてお話ししますが、軽減税率ではないものの、個人にメリットがあるような仕組みにはなっています)。

税金を徴収する側からすると、一番困るのは事業者に売上を隠されること。売上を隠してしまえば、それに見合う利益もなくなりますし、結果として納税する額を減らすことができます。これはもちろん犯罪ですが、よくあることであるのも事実。実際、POSレジのないような飲食店(昔ながらのパターンで言えば、カゴに小銭を入れてぶら下げている八百屋さんもそうですね)では、売上がなかったことにするのは容易です。当然のことながら、日経での「税務署は見ている」という連載でも度々語られていますが、税務調査でも売上が隠されていないのかは大きな焦点になります。

一方、海外では、事業者が売上を隠すことを防ぐための仕掛けとして、例えば、決まった用紙での領収書発行を義務付けることがあります。代表的なのが、台湾の統一発票というものです。韓国の現金領収書という仕組みもこの延長線上にあります。すなわち、必ず領収書を発行させ、さらにそれをデータとして収集する。その狙いは、隠されがちな現金での売り上げを漏れなく捕捉しようというものです。

韓国の現金領収書と同様に、今回の日本型軽減税率制度も購買履歴を収集し、一元管理する仕組みです。この仕組みでは、個人の購買行動が把握される、という懸念が多く聞かれますが、その実際の狙いは、買った人の履歴を捕捉することではなく、売った人の履歴を捕捉することと考えたらどうでしょうか。つまり、日本型軽減税率制度は、その実、韓国の現金領収書のように、売上を漏れなく捕捉するための仕組みと考えたら。

この仕組みは間違えなく様々な議論を呼ぶでしょう。ただ、真面目に税金を納めている人からすれば特に恐れるような仕組みではありません。個人的には社会的な公平性と効率性を実現するためには、極めて合理的な仕組みだと考えていますし、結論はともかく、真剣に検討すべき仕組みだと考えています。

[参考]
韓国の現金領収書の仕組みについては、こちらのレポート(pdf)のp172~が詳しいです。
台湾の統一発票については、こちらのレポート(pdf)をご参照ください。
posted by 岡本浩一郎 at 18:50 | TrackBack(0) | 税金・法令