2015年10月16日

軽減税率の是非

ちょっと前に日本版軽減税率として盛り上がった(?)、マイナンバーを利用して2%分の消費税を還付する制度ですが、あっさり撤回になったようです。まあ、率直に言って筋が悪いとは思っていましたので、早期に見直されたことは良かったかと思います。一方で、公平かつ効率的に売上を把握するための社会インフラとして考えれば、大きなポテンシャルもあり得た仕組みですので、その観点では残念だと感じています。

やはり軽減税率は政治的に必達ということで、ここに来て急に2017年4月に消費税率が10%に引上げになるのと同じタイミングで軽減税率を導入するという方向で動き出しました。まだ紆余曲折はあるものと思いますが、今後の議論を注意深く見守っていきたいと思います。

軽減税率に向けて具体的に動き出す中で、今後は立場的に発言し難くなると思いますので、今のうちに(笑)、軽減税率に対する個人的見解をお話しさせて頂ければと思います(本ブログは個人ブログですので、弥生の公式見解とは必ずしも一致しません、念のため)。

結論から申し上げると、私は軽減税率には反対です。軽減税率を導入すれば、物品によって異なる税率の処理が必要になり、事業者にとって大きな負担になります。また、よく言われていることですが、何が軽減税率適用になり、何はならないのかの線引きが極めて難しいことも問題です。もちろん、生活必需品での税負担を下げるという軽減税率のメリットも理解はしていますが、軽減税率によって発生する社会的コストと社会的メリットが釣り合わないと考えています。

ただし、これは現状で想定されている消費税率10%の際の軽減税率8%という前提での話です。2%の軽減は全く意味がないとはいいませんが、負担感の解消という目的をどこまで果たせるかというと疑問です。一方で、1%分でも2%分でも軽減税率を導入する限り、社会的コストは発生します。

もっとも、将来的に消費税率が20%という時代を考えたらどうか。一般の物品は消費税率は20%で、生鮮食料品は8%。ここまで差が付けば、負担感の解消という意味では有効でしょう。そうなってくると、ある程度社会的コストをかけてでも、軽減税率を導入する意義が生まれます。実際、軽減税率が導入されている欧州諸国も、通常の消費税率が20%前後になっているからこそ、軽減税率が必要になっているとも言えます。

政治的に軽減税率導入にこれだけ拘っているのも、将来的に消費税率10%以降の世界をにらんでいるからなのではないでしょうか。要は将来的には必ず必要になるものだから、このタイミングで、と。もちろん、そう明言される方はどなたもいらっしゃらないと思いますが。

そうなってくると、消費税率のさらなる引上げの是非ということになりますが、こちらに関しての私の意見は消極的賛成です。つまり、引上げずに済むのであればそれに越したことはない、一方で、おそらく引き上げざるを得ないだろう(そしてそれを考えると、軽減税率もタイミングは別として必要となってくるであろう)と考えています。

消費税に限らず税金は個人の可処分所得を減らすわけですから、個人消費という意味では明らかにマイナスです。ただ、実は消費税以上に可処分所得に影響を与えている存在があります。それは社会保険料。社会保険の代表格である厚生年金は、平成16年の年金制度改正によって平成16年から毎年保険料率が上がっており、この先平成29年まで上がることが決まっています。この制度改正前の料率は、13.58%。それが平成29年には18.3%にまで上がることが決まっています。これがこれ以上上がるよりは消費税を引き上げた方がいいというのが私の考えです。

もちろん、そもそも歳出削減が第一優先ですし、歳出削減によって、社会保険料にせよ、消費税にせよ引き上げなくて良いのがベストです。ただし、歳出削減が進まない、追い付かないことによって、歳入を増やさざるを得ない(税金もしくは社会保険料を引き上げざるを得ない)とするとそれは消費税だと考えています。

消費税か社会保険料か、という話は長くなってしまうので、また次回。
posted by 岡本浩一郎 at 10:59 | TrackBack(0) | 税金・法令