2017年10月27日

素直には喜べない

今月の給与明細を見て、また厚生年金保険料が上がったとため息をついた方も多いのではないでしょうか。ただ、今回は引上げ幅はこれまでよりだいぶ少ない(昨年までと比べて約1/3)、なおかつ、実は引上げは今回で終わりになるはずなのです。

毎年のことですから、10月になると厚生年金保険料が上がるのがもはや当たり前のように感じますが、実はこれは時限措置。2004年(平成16年)の年金制度改正によって、2004年から2017年まで毎年保険料率が上がることになりました。この制度改正前の料率は、13.58%。それが2017年には18.3%にまで上がることが決まっていました。今回、いよいよ終着地点である18.3%に達し、引上げはこれで終わりということになりました。ちなみに、毎年0.354%ずつじわじわと上がってきたのですが、最終回となる今回は18.3%までの残り分となる0.118%ということで、今回はこれまでより引上げ幅が少なくなっています。

なお、個人事業主が加入する国民年金の保険料も同じ期間に月13,300円から、終着地点の16,900円に向けて毎年引上げとなりましたが、こちらもやはり今年4月の引上げで最終となります。

ただ、よしこれで引上げが終わり、やったー! と素直に喜べるかというと、そうではありません。そもそも平成16年の年金制度改正は、年金制度を100年間に渡って維持できるように行われたものです(「100年安心」というキーワードを覚えている方もいらっしゃるかと思います)。では、実際に14年間に渡る引上げを経て、年金制度が安心できる状態になったかというと、残念ながらそうはなっていません。

年金や医療などの社会保障給付の総額は、年金制度改正が行われた2004年度には85.6兆円でしたが、直近(2016年度の予算ベース)では118.3兆円にまで膨らんでいます。社会保障給付の財源として社会保険料で賄われた額は2004年度には53.8兆円でしたが、直近では66.3兆円。社会保険料の引上げによって、財源としては12.5兆円ほど増えましたが、同じ期間に給付は32.7兆円も増えています。給付に対し、社会保険料によって賄えた割合を計算すると、2004年度には62.8%だったものが、2016年度には56.0%まで下がってしまっています。つまり、これだけ社会保険料を引上げても、支出(給付)の増加に追いつけていないのです。

ところで、2014年には実に17年ぶりに消費税率が引上げになりましたが、これは社会保障と税の一体改革として実施されました。社会保障の充実・安定化と、そのための安定財源確保と財政健全化の同時達成を目指したのが、社会保障と税の一体改革であり、その第一歩が2014年の消費税率の8%への引上げでした。

17年間も封印されてきた消費税率引上げがなぜ実施されたのか。これは私見ですが、2017年には社会保険料の引上げが打ち止めになることと無縁ではないと考えています。これまでは、増加を続ける社会保障給付を、社会保険料の引上げである程度埋め合わせてきた。ただ、2017年に社会保険料の引上げが打ち止めになってからはそうもいかない。だからこそ、新たな財源が2017年までに必要だった。

ご承知のように、社会保障と税の一体改革では、2014年4月に消費税率8%へ、そして2015年10月には消費税率10%への引上げが予定されていましたが、実際には10%への引上げは2度延期され、まだ実施されていません(現時点での法令では2019年10月と定められています)。

増加を続ける社会保障給付の財源として消費税がいいのか、引き上げるにしてもいつがいいのか、はたまた思い切って給付を削減すべきなのか。色々な見方/考え方があると思います。ただ、一つ言えるのは、社会保険料の引上げがいよいよ打ち止めとなった今、何らかの対策は待ったなしということです。

折しも衆議院選挙が行われましたが、安定的な政権運営基盤が確立された今、その場しのぎではなく、将来を見据えた本質的な対策を打ち出し、かつ実行して欲しいと願っています。
posted by 岡本浩一郎 at 20:59 | TrackBack(0) | 税金・法令