2019年10月04日

キャッシュレス・ポイント還元の悩み

昨日は、全体に対し値引きがされたレシートの扱いが難しいということをお話ししました。問題がさらに複雑になるのが、10月から始まったキャッシュレス・消費者還元事業以前お話ししましたが、2019年10月から2020年6月までの期間、本事業に登録済みの中小・小規模事業者で商品・サービスをキャッシュレスで購入すると、基本的に5%分のポイントが還元されるというものです。

そもそもポイントというのは、会計上の扱いが難しい存在です。例えば、10,000円の消耗品を買って、1,000円分相当のポイントを受け取ったという場合。色々な考え方がありますが、一般的には、(少なくとも一旦は)ポイント分を無視して計上することが多いのではないかと思います。仕訳で言えば、(借) 消耗品費 10,000 / (貸) 現金 10,000として、ポイントは一旦無視する。

この処理をする理屈付けとしては、大きく二つのポイントがあります。一つはポイントを受け取ったからといって、使うとは限らないということ。お金に失効という概念はありませんが、ポイントは失効しうるので、財産的価値が確定していない、だからこそ、少なくとも受け取った段階では会計上認識しないという考え方です。

もう一つは実務的な問題ですが、法人そのものが購入するのではなく、従業員が立替払いをすることが多いというもの。従業員が代理で購入した場合、ポイントが従業員に帰属するのか、あるいは法人に帰属するのか。法人のポイントカードを出してポイントを受け取った場合は迷うことはありませんが、一般的にこの種のポイントカードは個人のみを対象にしていることが多いため、個人のポイントカードを使うことが普通ですし、結果的に個人にポイントが帰属することが多いのではないかと思います。正直微妙なラインですが、あまり細かく言っても管理が面倒になるだけなので…というのがよくあるケースかと思います。

一方で、ポイントを利用して購入した場合は、無視するわけにもいきません。何分、無視をすると貸借がバランスしなくなるので。例えば、今度は5,000円の消耗品を買って、その際に4,000円分は現金で、1,000円分はポイントで支払ったというケース。これを(借) 消耗品費 5,000 / (貸) 現金 5,000としてしまうと、実際に支払った現金は4,000円ですから、現金のバランスがあわなくなります。この場合、(借) 消耗品費 4,000 / (貸) 現金 4,000というポイントを値引きとしてとらえて処理するケースと、(借) 消耗品費 5,000 / (貸) 現金 4,000、(貸) 雑収入 1,000として、ポイントを雑収入として処理するケースがあります(こちらのスモビバの記事もご参照ください)。あくまでも個人的に、ですが、費用としてはあくまでも5,000円発生していると考え、後者の方がベターかなと思います。

ただ、いずれにせよ処理が面倒くさいので、会社の経費にするものは、ポイントを利用しない、というのが、一番あるあるな処理方法なのではないかと思います(こちらの記事でもそういったトーンになっていますね)。結果的に、ポイントの獲得にせよ、ポイントの利用にせよ、会社の会計上は認識しないということになります。なお、念のためですが、そう処理すべき、ですとか、その処理でいい、ということではなく、おそらく実務的にはそう処理されていることが多いのではないかということです。

ここで問題となるのが、キャッシュレス・ポイント還元。キャッシュレスで購入すると、基本的に5%分(一部2%)のポイントが還元されます。これがポイントが付きますというだけであれば、これまでのクレジットカードで払った時にポイントが付与されるのと同様の処理になるかと思います。ただ、今回のキャッシュレス・ポイント還元では、主にコンビニを中心に、その場で還元されたポイント分を差し引くということも行われています。

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例えば、こちらのレシートでは、合計310円に対し、キャッシュレス還元額として6円、結果的に決済(iD決済)対象額は304円となっています。これを厳密に処理すると、(借) 消耗品費 304 / (貸) 未払金 304 (iDは最終的にクレジットカード決済なので未払金で計上)という還元は値引きとして処理するケース、もしくは、(借) 消耗品費 310 / (貸) 未払金 304、(貸) 雑収入 6という還元を雑収入として処理するケースが考えられます。

どちらにしても、(言い方は悪いですが)たかだか6円のために、余計な処理が必要となることになります。特に値引き処理の場合、なおかつ、この例のように標準10%と軽減8%が混在している場合には、前回お話ししたように、値引額6円を標準10%分と軽減8%分に按分処理する必要があります。これは実務上は成り立たないレベルの処理です。

ここで一点留意が必要なのが、販売者(この場合はファミリーマート)は還元額6円を負担はしていないということです。キャッシュレス・消費者還元事業は国の事業であり、還元額6円は最終的に国が負担することになります。ですので、販売者が認識する売上はあくまでも還元前の310円です。これは、レシートではなく、いわゆる領収書を発行してもらうとはっきりします。

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これは全く同じ取引内容で、後日買い物した際に今度は領収書として発行してもらったものなのですが、領収額は310円となっています。

また、今回のキャッシュレス・消費者還元事業でのポイントの即時充当処理は、国(キャッシュレス推進室)によると、「会計上は商品価格に変更はなく、一度ポイントが付与され、そのポイントが会計時に使用されたことになり、値引きとはなっていない」という建て付けになっていますから、この観点からも値引き処理にする必然性はないのではないでしょうか。

ということからすると、厳格に処理するとしても、雑収入アプローチ、つまり、(借) 消耗品費 310 / (貸) 未払金 304、(貸) 雑収入 6になるのではないかと思います。雑収入(還元額)を国からの補助金と捉えるのであれば、「一般的に対価として支払われるものではないから」消費税不課税とされており、この考え方に立てば、値引額の按分処理も避けられることになります。

ただ、それでも、相応に手間なのは事実です。事業者の立場からすると、手間を避けるために、あえてキャッシュレスで支払わないという、完全に本末転倒な行動すら誘引してしまうのではないかと思います。

そう考えると、本事業の目的、そして、来年6月までのわずか9ヶ月間しか実施されないという特殊性を鑑み、従業員が立替えた場合などに、還元額自体を収入とも値引きとも認識しないという取扱いを、あくまでも例外的取扱いにはなりますが、認めていただくことも検討に値するのではないかと思います。

なお、本ブログは私岡本個人の見解を記したものであり、会社としての弥生の見解とは必ずしも一致しません。また上記取扱いについて正しいことを保証するものでありません。ただ、この問題の影響の大きさを鑑み、こういった考え方もあるのではないかと問題提起するものです。いずれにせよ、どう扱うのかが不透明な状態が一番困りものです。早急に明確に、なおかつ実務上の負担を考え、無理のない形で取扱い方法が明確化されるべきだと考えます。
posted by 岡本浩一郎 at 22:29 | TrackBack(0) | 税金・法令