2020年07月14日

eInvoicing in Italy

先月末に公表した「社会的システムのデジタル化による再構築に向けた提言」に関連して、提言の一つのきっかけとなった、海外でのデジタル化の事例をご紹介しています。前々回はオーストラリアのSingle Touch Payrollについて、前回はイギリスのMaking Tax Digitalについてお話ししました。

今回ご紹介する事例はイタリア。ああ、これでようやく昨年イタリアに行ったのがお遊びではないことが証明できました(笑)。ローマ滞在はわずかに20時間、しかも飛行機のトラブルで苦労したり(これもいつかお話ししたいところ)となかなか刺激的な出張となりましたが、今回ご紹介する事例の中でも、このイタリアの事例が一番刺激的かもしれません。

イタリアでは、昨年1月からeInvoice、すなわち、電子インボイスが義務付けられました。日本でもこの先インボイス制度が導入されることが既に決まっていますが、イタリアをはじめ欧州では昔からインボイス制度が定着しています。ただし、それを全て電子インボイスとすることを義務付けたのは今回のイタリアが初めて。

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インボイスは一般的にモノ・サービスの売り手から買い手に発行されますが、イタリアのeInvoiceの仕組みは一味違います。それは、電子インボイスは売り手から一旦歳入庁(日本で言う国税庁)に送信され、歳入庁でシステム上のチェックを受けた上で、買い手に再送信されるのです。結果的に歳入庁は全ての取引を一元的に把握することができるという訳です。もともとイタリアでは、地下経済が大きいと言われていましたが、電子インボイスを導入することによって、これらも含めすべてをデジタルで捕捉しようということです。

さらに、これは実際に訪問して初めて知ったことなのですが、イタリアでは同時並行でB2C取引の捕捉も進めているとのこと。今年1月からは、全てのレジスターをインターネットに接続し、日次で取引データを歳入庁に送信することが義務化されるとのこと。さらに、そもそもレジを通さない取引(ランチとかでレジを打たないケースはよくありますよね)をなくすために、レジで印刷されたレシートを国が運営するくじにする、という制度も始まるそうです。レシートくじは世界的にはかなり導入事例があるのですが、何ヶ月かに一度くじ引きがあり、一等だったら(例えば)100万円がもらえる、となると、みんなちょっとした支払でもレシートを要求するようになるわけです。

つまりイタリアでは、従来レジを通らなかったような取引がレジを通るように仕向け、レジを通った取引は全て日次で捕捉。さらにB2Bに関しては、電子インボイスで全て捕捉するという仕組みを作り上げたのです。世界中の国税庁にとって、まさに夢のような仕組みです。ただ、実はこの種の仕組みはお隣の韓国で10年以上前から導入されています。

イタリアで実現した仕組みは、徴税の観点からは、一種の理想形と言えます。B2CからB2Bまで全ての取引がデジタルデータとして国に連携される。これを突き詰めれば、収集されたデジタルデータをもとに、国が納税額を計算することによって、イギリスが目指しているように、申告そのものをなくすことも可能でしょう。ただ、これが日本でも実現できるかというと、正直難しいと思いますし、そもそも日本に適しているとも思いません。地下経済が大きく、公平公正な課税が困難な国だからこそここまでやる訳であって、ある程度公平公正な課税が既に実現している国ではあるべき姿は変わるはずです。

一方で、イタリアの事例で学ぶべきだと思っているのは、関係者を巻き込み、時間をかけて議論するということ。お話ししたように、昨年1月から電子インボイスの義務化が始まった訳ですが、実は2012年に民間を中心としたeInvoicingに関するフォーラムが組成され、以来議論を続けてきたそうです。つまり7年かけて、じっくりと議論し、準備してきたということです。

デジタル化は一年にしてならず。2023年10月のインボイス制度導入に向けて、Born Digital研究会を母体として電子インボイス推進協議会を立ち上げるのですが、これにはこういった海外からの学びが活かされています。もっともイタリアは7年かけたのに対して、日本は圧倒的に時間が足りないため、焦るところではあるのですが。
posted by 岡本浩一郎 at 20:57 | TrackBack(0) | デジタル化