2020年08月31日

本当にお疲れさまでした

先週金曜日に安倍総理が辞意を表明されました。体調不良説がくすぶっている中での記者会見ということで、ひょっとしたらとも思っていたのですが、まだ任期が一年あり、その間には晴れ舞台でもある東京オリンピック・パラリンピックもあり、また、安倍総理自身が掲げられていた課題も道半ばということもあり、このタイミングでというのは正直意外でした。このタイミングでの辞任の理由として、「体力が万全でないという苦痛の中、大切な政治判断を誤ること、結果を出せないことがあってはなりません。国民の皆様の負託に自信を持って応えられる状態でなくなった以上、総理大臣の地位にあり続けるべきではない」というのは、一国のリーダーとしての矜持を感じます。

色々な意見があるとは思いますが、少なくとも第二次政権となった以降のこの8年弱のリーダーシップを私は高く評価しています。一国のリーダーとして陣頭に立ち、判断をし、その結果に責任を取る。誰にとってもバラ色の解は存在しません。税金を上げるにせよ、下げるにせよ、あるいは変えないにせよ、それを良しとする人もいれば、それではダメだという人もいる。完璧解は存在しません。その中で判断をし、責任を取る。先だって本ブログでもお話しした10万円一律給付についても、絶対的な正解はなく、本当に難しい判断だと思います。それを約8年間。誰にでもできることではありません。

スケールは全くことなりますが、企業の経営者も、完璧解の存在しない世界において、陣頭に立ち、判断をし、その結果に責任を取らなければなりません。私も12年以上やってきて実感しますが、それは決して容易なことではありません。迷うこともあれば、泣きたくなることもある。これも私は比較にもなりませんが、日立製作所の川村さんの言う、「ザ・ラストマン」としての覚悟がなければ成り立ちません。今回、安倍総理は「ザ・ラストマン」として、この時点でバトンを渡すことが自分の責任であると判断されたのでしょう。

あえて言えば、目指す方向は正しくても、中途半端に終わってしまった、うやむやになってしまったことも多くあるのは残念です。個人的に私がこれは凄いと思ったのは、日本再興戦略において、開業率だけでなく、開業率・廃業率ともに10%以上を目指すとしたこと。開業率という誰が聞いてもいいよね、という甘い部分だけに取り組むのではなく、廃業率という一見すれば後ろ向き、しかし日本全体としては新陳代謝の観点で必要なものにも踏み込もうとしたことは、安倍総理ならではだと感じました。残念ながらこの目標は途中で消えてしまいましたし、全体としてのアベノミクスもやや尻切れトンボになってしまったように感じます。しかし、この種のことに文句だけ言ってもしょうがないのだと思います。できなかったことをあげつらうのではなく、できたことを素直に評価すべきだと思います。

新型コロナウイルス禍の克服もまだ見通しが立たない中で、次の総理大臣はどなたがなられるにしても、相当な難局だと思います。文句をつけることも容易でしょう。でも、文句だけ言っていても何も変わらない。この難局の中で、重要なのは私たちに何ができるかということ。今こそ、かつてJohn F. Kennedy大統領が就任演説で言ったことを噛みしめたいと思います。

Ask not what your country can do for you.  Ask what you can do for your country.
(国が皆さんのために何ができるのかを問うのではなく、皆さんが国のために何ができるのかを問うてほしい。)

安倍総理大臣、本当にお疲れさまでした。
posted by 岡本浩一郎 at 19:16 | TrackBack(0) | パーソナル

2020年08月27日

正しいデータに基づく判断

少し前に「With 新型コロナウイルス」というタイトルで、弥生内での新型コロナウイルス感染症拡大に対する対応レベルを8月頭に一部拠点でレベル2からレベル3に引き上げたこと、そして当該記事執筆時点(8/17)には再びレベル2への変更が視野に入っていることをお話ししました。

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引き続き拠点のある(および一般的にその通勤圏の)都道府県のデータを日次で追っていますが、8月10日過ぎまでは赤色の警報(人口10万人あたりの過去7日間の新規検査陽性者数が15以上)が点灯していますが、以降は徐々に減少傾向にあることが見て取れるかと思います。政府の分科会でも「7月末をピークに緩やかに減っている」と分析しているそうです。このデータに基づき、弥生では今週火曜日から全拠点を再びレベル2の対応としています。

日次でこのデータを追っていて気が付いたのですが、このデータは結構揺れるのです。このデータは前々日まで(今日8/27基準で言えば8/25)はこちらの東洋経済オンラインの特設サイト、前日は日本経済新聞の速報(今日基準で言えば、こちらの昨日の速報)を基にしています。しかし、翌日になると前日のデータが変わっていることが頻発しています。例えば、上記の表の8/26の数字は日本経済新聞の速報値ですが、これは翌日になると、東洋経済オンラインの数値に置き換わります。この際に結構数字がぶれます(正確に言えば、ぶれる都道府県とぶれない都道府県があります)。これは速報値から確定値に置き換わるものなので、ある程度ぶれることはやむを得ないと思います。

しかし、例えば上記の表の8/25の数字は東洋経済オンラインの数値なのですが、翌日に確認すると数字が置き換わっていることがかなりの頻度で発生しています。色々と調べてみると、東洋経済オンラインの元データは厚生労働省が毎日発表する数字なのですが、どうもこの元データが結構揺れているようです。表を見てみると気が付くと思いますが、8/18には、北海道でも、埼玉県でも、千葉県でも新規の検査陽性者が発生していません。ただ、前後の日の数字を見る限り、それはありえません。実は、元データである厚生労働省のデータは、日々の発生件数ではなく、累計での記載のため、何らかの理由で更新がかからないと、見た目上ゼロ件の日が生まれてしまうのです。8/18は集計なのか、発表なのか何らかの問題があったのではないかと思います。

実はちょうどこのタイミングで、レベル変更の判定をしようとしていたため、データが欠落していることにより判断が難しくなり閉口しました。ちなみに大阪府もこのデータ上は8/18がなしになっていますが、翌8/19には372件とドカンと増えています。これはどう見ても2日分の数字が1日で計上されてしまったのかと思います。また、数字の検証のために各都道府県の公表値とも比較していたのですが、福岡県の公表数値は、東洋経済オンラインの数字(元データは厚生労働省)と1日のずれがあります。例えば、上記の表で福岡県の8/25は51ですが、福岡県の公表数値ではこれは8/24の数値です。

なお、弥生におけるレベル変更の判断自体は7日間の累計の数字を採用していますので、こういったデータの揺らぎはある程度吸収することができています。それでも、もうちょっと何とかならないのか、と思います。新型コロナウイルス感染症は今まさに動いている事象であり、ビジネススクールのケースのように、揺らぎが全くない、カチッとしたデータにはなりません。ただ、新型コロナウイルス感染症との戦いで必要なのは、現状を定量的に、可能な限り正しく把握すること。その観点で言えば、データの定義や更新/集計のサイクルなどが統一されていないことは大きな課題だと感じています。

新型コロナウイルス感染症については色々な意味で備えが十分ではなかった。これは日本に限らず全世界がそうでしょう。備えがない中対応している訳ですから、こういった課題はやむを得ないのかもしれません。しかし、今後またいつ新しい疾病が発生するかもしれません。その時にまた今回のようになってはいけないのだと思います。(可能な限り)正しいデータが(可能な限り)タイムリーに集計され、それに基づいて(可能な限り)正しい判断ができるようにしていかなければならないのではないでしょうか。
posted by 岡本浩一郎 at 19:28 | TrackBack(0) | デジタル化

2020年08月25日

レジ袋有料化

デジタル化に関する比較的固い話が続いているので、たまには少し柔らかめの話でも。既に皆さまご承知のことと思いますが、この7月1日から、レジ袋の有料化が始まりました。

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レジ袋の有料化を受けて、私が持ち歩くようになったのが、こちら。Sea to Summitというアウトドア用品メーカーのUltra-Sil Nano Shopping Bagというエコバッグです。MyXというアウトドアショップ(おススメです)で見かけて購入しました。ご覧の通り非常に小さく、持ち歩くのが簡単。カジュアルな格好であれば、ポケットに入れておいても気になりません。重さは30gしかありません。

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一方で、これをひらくと、容量25リッターのエコバッグになります。結構色々なものを入れても大丈夫。メーカーによると20kgはいけるそうです。20kgと言えば、2リッターのペットボトル10本分ということになります。この種のバッグでは、ひらくのは簡単だけど畳むのが意外に手間というケースも多いのですが、このバッグの場合、畳んだ時に外側となる小袋に無造作に突っ込んでいくだけです。

ということで、結構お気に入りで持ち歩いているのですが、ちょっとした買い物の時(家からちょっとコンビニに行く時ですとか、会社でお昼にお惣菜を買いに行く時)には、しまった持ってこなかったということが多いです。これも慣れの問題でしょうか。

ところで、レジ袋の有料化は何のためなのでしょうか。プラスチックの使用量を削減するため? ゴミを減らすため?

経済産業省の広報資料(pdf)によると、「海洋プラスチックごみ問題、地球温暖化などの解決に向けた第一歩として、プラスチック製買物袋の有料化を通じて、マイバッグの持参など、消費者のライフスタイルの変革を促すことが目的です」とされています。またこちらのwebサイトでは、「普段何気なくもらっているレジ袋を有料化することで、それが本当に必要かを考えていただき、私たちのライフスタイルを見直すきっかけとすることを目的としています」ともされています。

これはなかなかに微妙な表現で、考えることや、ライフスタイルを変えることが目的だけれども、これによって海洋プラスチックごみ問題や地球温暖化が解消する一助になるとは言っていないのです。

私自身で言うと、これまでレジ袋はもらっていましたが、それらは多くはゴミ袋として活用していました。横浜市はかなり真面目にゴミの分別をおこなっている(pdf)こともあり、分別してゴミを出すためにそれなりの数の袋が必要になります。今回、レジ袋が有料化され、レジ袋をもらわないことによって、ゴミ袋が足りなくなり、それは別途買うことになりました。ということは、少なくとも私のケースで言えば、プラスチック袋の使用量はあまり変わっていないのです。また、特に日本においては、海洋プラスチックごみは比較的少ない(ましてやその中に占めるレジ袋はもっと少ない)とされており、問題がないという気はないのですが、レジ袋の有料化は海洋プラスチックごみ問題の解消にはほとんどつながらないというのが実態かと思います。要は、(意味がないとは言いませんが)直接的な効果としては限られる、だからこそ「本当に必要かを考える」「ライフスタイルを見直す」というふわっとした目的になっているのかと思います。

今回少し調べてみてなるほどな、と思ったのが、レジ袋の有料化は国際的な動きですが、その背景にあるのは、ゴミ問題というよりは、脱石油社会へのシフトがあるということ。「プラスチック容器やレジ袋といった石油由来の資源のみならず、発電目的での利用など、あらゆる分野において脱石油を進めるというのが国際社会の流れ」。レジ袋の有料化が全く意味がないとは言いません。ただ、国際社会の流れを踏まえると、レジ袋の有料化だけをやってもしょうがないんですよね。レジ袋の有料化を一つの手段として、本当に目指すことは何なのか、それがもっとしっかりと議論され、発信されるべきなのではないかと思います。

あれ、少し柔らかめの話のはずが、結局固い話に着地してしまいました。これも性格でしょうか(苦笑)。
posted by 岡本浩一郎 at 20:51 | TrackBack(0) | その他

2020年08月21日

短期的に取り組むべき領域での方向性(その2)

その2ということで、前回からの続きです。2023年10月にインボイスが義務化されることを単なる法令改正で終わらせるのではなく、業務のデジタル化によって大幅な効率化を実現する機会ととらえ、この時点までに多くの事業者が共通的に利用できる電子インボイス・システムを構築しなければなりません。

多くの事業者が共通的に利用できる電子インボイス・システムの構築のためには、まず電子インボイスの仕様の標準化が不可欠です。当然のことながら、標準仕様は、大企業から中小事業者まで、広く利用できるものでなければなりません。また、実際に標準仕様に基づき、電子インボイスが広く利用されるためには、標準仕様に対応した業務ソフトウェア、また、電子インボイスを送受信するための通信ネットワークが、大企業から中小事業者まで、それぞれのニーズにあわせ、またそれぞれの事業規模に見合ったコストで利用できるようにしなければなりません。繰り返しになりますが、標準化の実現に向けて、関係者間で電子インボイスの仕様検討・実証を行うために先月立ち上がったのが、電子インボイス推進協議会です。

これまで商取引のデジタル化という観点では受発注業務を中心としたEDIが主眼となっており、請求支払業務はその付随業務と位置付けられてきました。しかしこの機会を活かせば、むしろ電子インボイス・システムを先行させ、それを発展させることによって、中期的に、受発注業務まで含めた商取引全体のデジタル化を図ることもできるのではないかと考えています。

ただし、電子インボイスの仕組みが必要だ、標準化が必要だと言うのは簡単なことですが、実際にはそれほど簡単なことではありません。

電子インボイス・システム、さらには商取引全体のデジタル化を図る上では、これまでの取り組みの反省を活かさなければなりません。今回の提言の一貫した主張ですが、単なる紙の電子化ではなく、プロセス全体のデジタル化を目指すべきだと考えています。これまでの電子帳簿は基本的に、あくまでも原点に紙があり、その電子化を目指してきました。だからこそ、電子化された紙の真正性を担保するために、個々の電子化された紙にタイムスタンプを付与するという発想になっています。しかし、最初からデジタルデータであり、それが一貫してデジタルデータとして処理されるのであれば、例えば中間地点における処理ログでも真正性は担保できるはずです。

また、EDIが普及していないことに対する反省として、利用に向けた明確なインセンティブを設計しなければなりません。もちろん、デジタル化自体が業務効率化のようなメリットを生むのが本筋ですが、利用が一般化しない限りデジタルと紙の併用になってしまい、十分なメリットが生まれにくいこと、またメリットの多寡は事業規模に連動することから、特に中小事業者においては、外的なインセンティブが必要だと考えています。プロセス全体のデジタル化であり、社会的コストの低減という観点では、電子インボイスにより、より公平公正な納税が実現されるメリットを、事業者に対するインセンティブとして還元するという考え方もあるのではないでしょうか。
posted by 岡本浩一郎 at 19:45 | TrackBack(0) | デジタル化

2020年08月19日

短期的に取り組むべき領域での方向性(その1)

確定申告や年末調整など、日本における現状の社会的システムの多くは、戦後に紙での処理を前提として構築されたものであり、今改めてデジタルを前提として業務プロセスの根底から見直すデジタル化(Digitalization)を進めることによって、社会全体としての効率を抜本的に向上させ、社会的コストの最小化を図るべきである、という問題意識から生まれた「社会的システムのデジタル化による再構築に向けた提言」。その内容について私見(というより想い)も交えてお話ししています。

これまでに、提言の背景と課題認識、および基本的な方向性についてお話ししました。それを踏まえ、短期的に取り組むべき領域として、今まさに業務プロセスの構築が進もうとしている領域、具体的には、2023年10月に予定されているインボイス(適格請求書等)制度導入を踏まえた電子インボイスの仕組みの確立とお話ししました。一方で、確定申告制度、年末調整制度、社会保険の各種制度等、既に長年にわたって確立された業務プロセスをデジタルを前提として再構築することは、多大な労力と、結果として時間はかかりますが、それだけに非常に大きな社会的メリットを生むことが期待されるとお話ししました。今回は、短期的に取り組むべき領域での方向性についてもう少しお話ししたいと思います。

前々回にお話ししたように、短期的に取り組むべき領域としては、2023年10月のインボイス義務化に向けた標準化された電子インボイスの仕組みの確立 、さらにインボイス以外も含めた商取引全体のデジタル化があります。

ただ、実はこれまでも商取引の電子化、および電子化による業務効率化という観点では、EDI(Electronic Data Interchange)という電子的な受発注の仕組みの利用の必要性が叫ばれてきていますが、現時点では大企業を中心とした利用にとどまり、中小事業者での利用は進んでいません。これは、利用に向けた明確な期限がない中で、標準化に関する動きが弱かったこと、また、大企業を中心とする発注者側のメリットが優先され、中小事業者を中心とする受注者側にとっての利用の明確なメリットを示せていないことが影響しているものと考えられます。

今回、2023年10月にインボイスが義務化されることにより、明確な期限が設定された状態となっていますし、また利用のメリットも示しやすくなっています。紙のインボイスであれば、発行者/受領者ともにこれまで以上に業務が煩雑化しかねませんが、電子インボイスであれば、データとして前工程から後工程まで一気通貫で処理を行うことによって、発行者側での請求書発行業務〜入金消込業務、受領者側での請求書管理業務〜支払業務までを大幅に効率化することが可能になります。つまり、業務はそのままで法令改正に最低限対応することで終わらせるのではなく、業務をデジタルを前提として見直すことにより大幅な効率化を実現することが可能になるはずです 。

法令改正を、嫌々対応しなければならない後ろ向きなものと考えるのか、あるいは業務のデジタル化によって大幅な効率化を実現する機会ととらえるのか。これを機会ととらえ、この時点までに多くの事業者が共通的に利用できる電子インボイス・システムを構築すべきである、というのが今回の提言の一つの柱となっています。そしてそのために先月立ち上がったのが、電子インボイス推進協議会という訳です。

(続く)
posted by 岡本浩一郎 at 18:37 | TrackBack(0) | デジタル化

2020年08月17日

With 新型コロナウイルス

弥生では、7月1日に新型コロナウイルス感染症拡大に対する対応レベルを全社でレベル2へと引き下げました。これは、6月18日に安倍総理が社会経済活動のレベルをもう一段引き上げることを発表したこと、またこれを受け、6月19日より、一部の大規模なイベントを除き休業要請は全面的に解除され、また都道府県境をまたぐ移動の自粛要請についても全面解除されたことを受けたものです。

その後、各種自粛要請が解除された約2週間後から新たな検査陽性者数が増え始め、7月の半ばには顕著に増加するようになりました。ただ、春と異なるのは、検査陽性者数の増加ペースと比較し、重症者数や死亡者数の増加が緩やかであるということ。これは、今回の検査陽性者数の増加は、検査の件数が大きく増えていること、その中で、症状のない方を多く捕捉しているためと言われています。もともと緊急事態宣言が解除された段階で、検査陽性者数がある程度増加することは想定されていました。ただ、それが爆発的な増加には至らず、増減を繰り返しながら医療体制の崩壊の手前で留まれるかが重要だと考えています。

7月中は事態の推移を観察してきましたが、検査陽性者数の増加ペースが緩まないことから、8月4日に、東京と大阪のオフィスについて、再び対応レベルをレベル3とすることとしました。この際に判断基準としたのが、各都道府県での人口当たりの新たな検査陽性者数。各地でどれぐらい感染が拡大しているかは、当然のことながら、人口比で考える必要があります。また、一日単位では報告のない日、あるいは逆に二日分がまとめて発表されることもあり、一日では揺れ幅が大きいため、一定期間での傾向を見るという観点から、過去7日間の新規検査陽性者数を基準とすることにしました。

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正直仮置きではあるのですが、ひとまずは人口10万人あたりの過去7日間の新規検査陽性者数が15以上(100万人あたりでは150以上)を警報値と設定した結果、東京と大阪について、弥生の対応レベルをレベル3とすべきと判断しました。その後、福岡も警報値を超え、同様にレベル3となりました。今から振り返ると、この基準で言えば数日前には警報値を超える地域が出ていましたから、もう数日間は判断を早めるべきだったと反省しています。ただ、仮置きで設定したこの基準ですが、その数日後(8月7日)に政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会が発表した感染状況の判断基準において、過去7日間の新規検査陽性者数が15以上がステージ3(感染急増段階)と判定される一つの基準として採用されており、意外に妥当な基準だったと言えるかと思います(参考までに同値で25以上がステージ4: 感染爆発段階)。

一方で、検査陽性者数の増加が顕著だった東京や大阪などでは、8月に入ってしばらくしてからは、若干の減少傾向が見られるようになりました。大阪では8月11日から15を切る状態が続いています。警報値である15前後を行ったり来たりした結果、対応レベルをコロコロと切り替えるのは、オペレーション上難しいため、数日間連続で警報値を切った場合に対応レベルを引き下げることにしていますが、5日連続であれば既に、7日連続としても今日の数値次第で対応レベル引き下げという判断になります。東京と福岡についても、5日連続であれば、今日の数値次第で対応レベル引き下げという判断になります。

With コロナというのはこういうことなのだろうと思います。残念ながら新型コロナウイルスの脅威が近い将来すっきりとなくなることはありません。感染状況をしっかりと観察し、適切な感染拡大防止措置を取りつつ、社会経済活動をしっかりと継続していく。例えがよくないとは思いますが、医療体制という受け皿が溢れないように、蛇口の開け閉めを繰り返していく。正直悩ましい日々ですが、これも新常態(New Normal)なのだと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 19:33 | TrackBack(0) | 弥生

2020年08月13日

中長期的に取り組むべき領域

確定申告や年末調整など、日本における現状の社会的システムの多くは、戦後に紙での処理を前提として構築されたものであり、今改めてデジタルを前提として業務プロセスの根底から見直すデジタル化(Digitalization)を進めることによって、社会全体としての効率を抜本的に向上させ、社会的コストの最小化を図るべきである、という問題意識から生まれた「社会的システムのデジタル化による再構築に向けた提言」。その内容について私見(というより想い)も交えてお話ししています。

これまでに、提言の背景と課題認識、および基本的な方向性についてお話ししました。前回は、短期的に取り組むべき領域として、今まさに業務プロセスの構築が進もうとしている領域、具体的には、2023年10月に予定されているインボイス(適格請求書等)制度導入を踏まえた電子インボイスの仕組みの確立とお話ししました。今回は中長期的に取り組むべき領域についてお話ししたいと思います。

今回の提言は、短期的な視野には留まっていません。時間をかけてでも、社会的システムの根源からの見直しに踏み込むべきだと考えています。既に長年にわたって確立された業務プロセスをデジタルを前提として再構築することは、多大な労力と、結果として時間はかかりますが、それだけに非常に大きな社会的メリットを生むことが期待されるからです。こういった領域については、短期間で拙速に変えようとするのでもなく、一方で変えることは所詮無理と諦めるのでもなく、5〜10年の時間軸での道程表(ロードマップ)を作製した上で、計画的にデジタル化を進めていく必要があると考えています。

これに該当するのは、確定申告制度、年末調整制度、社会保険の各種制度等です。確定申告制度と年末調整制度については、戦後すみやかに、社会保険の各種制度については、戦後の高度成長期に整備されたものですが、いずれも、ITが一般に利用できない時代に整備が始まっており、当然のことながら、紙を前提として業務プロセスが構築されています。

現在は、行政機関におけるIT活用は当然のものとなっていますし、民間におけるIT活用も一般化しています。しかし、これら業務については、一部情報が電子データとして扱われるようにはなってきていますが、全体としては、紙を前提とした業務プロセスのまま変わっていません。時間はかかっても、デジタルを前提とし、デジタルで最適化された業務プロセスとして再構築することによって、行政/民間を通じて大幅な社会的コストの低減を図るべきだと考えています。

先般電子インボイス推進協議会が立上り、お蔭さまで非常に注目もいただいています(既に多くの入会希望をいただいています)。これはこれでもちろんしっかりとやっていく。しかし私の本当の想いは電子インボイスに留まりません。確定申告や年末調整など、長年慣れ親しんだ、逆に言えば時代に合わなくなってきている社会的システムをデジタルの力を活用して圧倒的にシンプルにする。正直時間はかかると思います。それでも何もしなければ何も変わらない。時間はかかっても、少しずつでも、前に進めたいと思っています。
posted by 岡本浩一郎 at 18:29 | TrackBack(0) | デジタル化

2020年08月11日

短期的に取り組むべき領域

確定申告や年末調整など、日本における現状の社会的システムの多くは、戦後に紙での処理を前提として構築されたものであり、今改めてデジタルを前提として業務プロセスの根底から見直すデジタル化(Digitalization)を進めることによって、社会全体としての効率を抜本的に向上させ、社会的コストの最小化を図るべきである、という問題意識から生まれた「社会的システムのデジタル化による再構築に向けた提言」。その内容について私見(というより想い)も交えてお話ししています。

前回までは、提言の背景と課題認識、および基本的な方向性についてお話ししました。今回と次回で、取り組むべき領域についてお話ししたいと思います。

確定申告や年末調整などの社会的システムのデジタル化は、取り組むべき領域が多岐にわたりますし、実現までに長期の時間を要する領域も存在します。特に税制のあり方を含め、社会的システムの根幹から見直すことが必要であれば、充分な検討と議論が必要となり、その実現までには長期の時間を要することが想定されます。

BD研究会の議論の中では、日本の法人税収入は約12兆円であり、これを申告法人数で割り戻すと40万円強になることから、今のように複雑な法人税の計算をするよりも、売上高もしくは従業員数、事業所数などに応じて法人税を均等割化し、思い切ってシンプルな税制にすることも可能なのではないかという案も出ました。過激と言えば過激な案ですが、シンプルな仕組みにして社会的コストの最小化を図るという観点では議論の余地はあるはずです。ただこの場合、充分な検討と議論が必要なことは言うまでもありません。一方で、法令等の大幅な見直しを必要とせずに、短期的にデジタル化を実現しうる領域も存在します。このため、短期的に取り組むべき領域と中長期的に取り組むべき領域を明確化し、優先順位を付けながら計画的に進めるべきであると考えています。

では、まず短期的(この先2〜3年)に取り組むべき領域は何か。それは、今まさに業務プロセスの構築が進もうとしている領域ではないでしょうか。確定申告や年末調整など、既に長年にわたって確立された業務プロセスをデジタルを前提として再構築することは一朝一夕では困難ですが、現在進行形で、もしくはこれから業務プロセスの構築が進む領域については、最初からデジタルを前提とした業務プロセスを構築することが相対的に容易だからです。

まさにこれに該当するのが、2023年10月に予定されているインボイス(適格請求書等)制度導入を踏まえた電子インボイスの仕組みの確立です。インボイス義務化に際し、紙だけを前提として業務プロセスを構築するのではなく、当初から電子インボイスを前提とし、デジタルで最適化された業務プロセスを構築すべき。これが、先般の電子インボイス推進協議会の設立につながっています。インボイスは、商取引では下流工程にあたりますが、電子インボイスによる業務プロセスを構築することにより、中期的には上流工程、すなわち受発注も含め、商取引全体のデジタル化が進むことも期待されます。つまりインボイス制度を単なる法令改正対応で終わらせるのではなく、電子インボイスの活用によって、最終的には商取引全体を通じての生産性向上を目指すべきだと考えています。
posted by 岡本浩一郎 at 19:39 | TrackBack(0) | デジタル化

2020年08月06日

基本的な方向性

前回は、デジタル技術を浸透させることで社会全体としての効率を抜本的に向上させ、社会的コストの最小化を図るためには、今ある業務プロセスの電子化(Digitized/Digitization)を図るだけでは不十分であり、デジタルを前提として業務プロセスの根底から見直すデジタル化(Digitalized/Digitalization)が必要だということをお話ししました。もっと言えば、デジタルを前提として業務プロセスの根底から見直すデジタル化を実現するためには、年末調整業務のように、税制のあり方も含め、社会的システムの根幹から見直すべきだと考えています。

デジタル化に推進するにあたっては、デジタルならではのメリットを最大限発揮できるように、以下の4つのポイントを踏まえる必要があります(提言書第3章)。

1. 発生源でのデジタル化
情報は発生源においてデジタル化する。近年ではPOSでの販売管理や、給与計算ソフトでの給与計算など、情報は当初からデジタルデータとして処理されていることが一般的ですから、これら発生源でのデジタルデータを起点とします。

2. 原始データのリアルタイムでの収集
発生源で生まれたデジタルデータは、情報量を維持するという観点で、合理的な範囲でそのまま、かつ、リアルタイム(もしくはリアルタイムに近い形)で次のプロセスに引き渡す 。

3. 一貫したデジタルデータとしての取り扱い
発生源で生まれたデジタルデータは、業務プロセス全体を通じて一貫してデジタルとして取り扱う。事業者内はもちろん、事業者間の業務プロセス、さらには行政への申告・申請等、ひいては行政内の業務プロセスにおいて、紙などのアナログを経ず、一貫してデジタルとして取り扱うべきです。
データは、XMLのように、後工程でのデジタルでの処理を前提とした構造化された(Structured)フォーマットとする。逆に紙の様式を模したデータフォーマットである必要性はありません。つまり、これまでの取り組みのように、事業者から行政の申告・申請等を中心とした紙の様式の電子化にはとどまりません。

4. 社会的コストの最小化の観点での、必要に応じた処理の主体の見直し
発生源から行政まで一貫してデジタルデータとして取り扱う中で、どの時点でどのような処理を行うのかは、必要に応じ、全体最適の観点で見直しを行うべきです。例えば、年末調整業務の処理主体を事業者から行政に移管することも検討すべきだと考えています。

今回は結構固い内容になってしまいました。最初から最後までデジタルで一気通貫で処理するなど、改めて見ると当たり前と言えば当たり前の話なのですが、デジタル化に際しての基本的な方向性を確立することは非常に重要だと考えています。次回は、より具体的に、どんな領域でデジタル化に取り組むかについてお話ししたいと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 18:00 | TrackBack(0) | デジタル化

2020年08月04日

提言の背景と課題認識

「社会的システムのデジタル化による再構築に向けた提言」の発表から少し時間が経ってしまいましたが、この提言のきっかけの一つとなった海外の事例(オーストラリアイギリスイタリアシンガポール)の紹介も一通り済みましたし、また、この提言から生まれた電子インボイス推進協議会も正式に設立されて動き出した、ということで、そろそろ腰を据えて提言の中身についてお話ししてみたいと思います。

提言の背景や課題認識(提言書第1章)については、実のところ、昨年12月に本ブログでお話ししています。弥生が事業者のお手伝いをしている確定申告や年末調整、あるいは社会保険の手続き、これらは全て昭和の時代の仕組みです。コンピューターがまだまだ一般的とは言えない時代の仕組みですから、あくまでも紙を前提とした仕組みです。確かにこれらの業務の電子化は進んできましたが、デジタル化は進んでいません。電子化とデジタル化の違いは何か。今ある業務プロセスはそのままで、媒体だけを電子データにしたのが電子化(Digitized/Digitization)、これに対し、デジタルを前提として業務プロセスの根底から見直すのをデジタル化(Digitalized/Digitalization)と定義しています。

確かに、e-Taxやe-Govなど、電子申告、電子申請の仕組みは着実に普及しており、これは特に行政コストの低減につながっています。ただ、それはあくまでも紙を電子データ化したに過ぎません(つまり電子化に過ぎません)。業務プロセス自体は昭和の時代から何も変わっていない。事業者からすると、電子化によってラクになった実感はなかなか得られていません。下手をすれば面倒になった、大変になったと思われていても不思議ではありません。デジタルを前提として業務プロセスの根底から見直すデジタル化によって業務そのものをシンプルにする必要があると考えています。

提言のもう一つのきっかけとなった年末調整業務はその典型例です(第2章)。年末調整業務は、戦後に税制のあり方が根本から変わる中で導入されました。納税者が自ら申告をする申告納税が原則となったものの、一般個人(給与所得者)には税制に関する知識が十分ではないこと、また、事務処理能力が十分でないことを踏まえ、事務処理能力が相応にあるであろう事業者が、給与所得者の実質的な申告義務を肩代わりすることになり、その際には、コンピューターが一般に利用できない時代を反映し、全てが紙を前提とした業務として整備されました。年末調整業務はそれ以来法令改正によって格段にその複雑度は増しつつも(前回も少しお話ししましたが、今年の年末調整はヤバいことになります)、仕組みは基本的に変わっていません。

しかし、海外事例でお話ししたオーストラリアのSingle Touch Payrollのように給与支払情報をリアルタイムにデジタルデータとして報告する仕組みがあればどうでしょうか。事業者はデータの収集および報告はするものの、年末調整業務自体はデジタルデータに基づいて行政で一元的に行うという可能性も生まれてきます。今の業務のあり方を前提にするのではなく、デジタルを前提として業務プロセスの根底から見直すのが、今回の提言で目指すデジタル化です。デジタル技術を浸透させることで社会全体としての効率を抜本的に向上させ、社会的コストの最小化を図る。これはある意味、社会全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)と言えるかと思います。

なお、付言すると、基本的に紙を前提とした仕組みの限界は、今回の新型コロナウイルス禍でも明らかになっています。2023年10月にはインボイス(適格請求書等)制度が導入されることが既に決まっていますが、With コロナの時代において、紙が前提では成り立たないことは明白です。だからこそ、今回の電子インボイス推進協議会があるわけです。
posted by 岡本浩一郎 at 19:27 | TrackBack(0) | デジタル化