2020年08月11日

短期的に取り組むべき領域

確定申告や年末調整など、日本における現状の社会的システムの多くは、戦後に紙での処理を前提として構築されたものであり、今改めてデジタルを前提として業務プロセスの根底から見直すデジタル化(Digitalization)を進めることによって、社会全体としての効率を抜本的に向上させ、社会的コストの最小化を図るべきである、という問題意識から生まれた「社会的システムのデジタル化による再構築に向けた提言」。その内容について私見(というより想い)も交えてお話ししています。

前回までは、提言の背景と課題認識、および基本的な方向性についてお話ししました。今回と次回で、取り組むべき領域についてお話ししたいと思います。

確定申告や年末調整などの社会的システムのデジタル化は、取り組むべき領域が多岐にわたりますし、実現までに長期の時間を要する領域も存在します。特に税制のあり方を含め、社会的システムの根幹から見直すことが必要であれば、充分な検討と議論が必要となり、その実現までには長期の時間を要することが想定されます。

BD研究会の議論の中では、日本の法人税収入は約12兆円であり、これを申告法人数で割り戻すと40万円強になることから、今のように複雑な法人税の計算をするよりも、売上高もしくは従業員数、事業所数などに応じて法人税を均等割化し、思い切ってシンプルな税制にすることも可能なのではないかという案も出ました。過激と言えば過激な案ですが、シンプルな仕組みにして社会的コストの最小化を図るという観点では議論の余地はあるはずです。ただこの場合、充分な検討と議論が必要なことは言うまでもありません。一方で、法令等の大幅な見直しを必要とせずに、短期的にデジタル化を実現しうる領域も存在します。このため、短期的に取り組むべき領域と中長期的に取り組むべき領域を明確化し、優先順位を付けながら計画的に進めるべきであると考えています。

では、まず短期的(この先2〜3年)に取り組むべき領域は何か。それは、今まさに業務プロセスの構築が進もうとしている領域ではないでしょうか。確定申告や年末調整など、既に長年にわたって確立された業務プロセスをデジタルを前提として再構築することは一朝一夕では困難ですが、現在進行形で、もしくはこれから業務プロセスの構築が進む領域については、最初からデジタルを前提とした業務プロセスを構築することが相対的に容易だからです。

まさにこれに該当するのが、2023年10月に予定されているインボイス(適格請求書等)制度導入を踏まえた電子インボイスの仕組みの確立です。インボイス義務化に際し、紙だけを前提として業務プロセスを構築するのではなく、当初から電子インボイスを前提とし、デジタルで最適化された業務プロセスを構築すべき。これが、先般の電子インボイス推進協議会の設立につながっています。インボイスは、商取引では下流工程にあたりますが、電子インボイスによる業務プロセスを構築することにより、中期的には上流工程、すなわち受発注も含め、商取引全体のデジタル化が進むことも期待されます。つまりインボイス制度を単なる法令改正対応で終わらせるのではなく、電子インボイスの活用によって、最終的には商取引全体を通じての生産性向上を目指すべきだと考えています。
posted by 岡本浩一郎 at 19:39 | TrackBack(0) | デジタル化