2020年08月21日

短期的に取り組むべき領域での方向性(その2)

その2ということで、前回からの続きです。2023年10月にインボイスが義務化されることを単なる法令改正で終わらせるのではなく、業務のデジタル化によって大幅な効率化を実現する機会ととらえ、この時点までに多くの事業者が共通的に利用できる電子インボイス・システムを構築しなければなりません。

多くの事業者が共通的に利用できる電子インボイス・システムの構築のためには、まず電子インボイスの仕様の標準化が不可欠です。当然のことながら、標準仕様は、大企業から中小事業者まで、広く利用できるものでなければなりません。また、実際に標準仕様に基づき、電子インボイスが広く利用されるためには、標準仕様に対応した業務ソフトウェア、また、電子インボイスを送受信するための通信ネットワークが、大企業から中小事業者まで、それぞれのニーズにあわせ、またそれぞれの事業規模に見合ったコストで利用できるようにしなければなりません。繰り返しになりますが、標準化の実現に向けて、関係者間で電子インボイスの仕様検討・実証を行うために先月立ち上がったのが、電子インボイス推進協議会です。

これまで商取引のデジタル化という観点では受発注業務を中心としたEDIが主眼となっており、請求支払業務はその付随業務と位置付けられてきました。しかしこの機会を活かせば、むしろ電子インボイス・システムを先行させ、それを発展させることによって、中期的に、受発注業務まで含めた商取引全体のデジタル化を図ることもできるのではないかと考えています。

ただし、電子インボイスの仕組みが必要だ、標準化が必要だと言うのは簡単なことですが、実際にはそれほど簡単なことではありません。

電子インボイス・システム、さらには商取引全体のデジタル化を図る上では、これまでの取り組みの反省を活かさなければなりません。今回の提言の一貫した主張ですが、単なる紙の電子化ではなく、プロセス全体のデジタル化を目指すべきだと考えています。これまでの電子帳簿は基本的に、あくまでも原点に紙があり、その電子化を目指してきました。だからこそ、電子化された紙の真正性を担保するために、個々の電子化された紙にタイムスタンプを付与するという発想になっています。しかし、最初からデジタルデータであり、それが一貫してデジタルデータとして処理されるのであれば、例えば中間地点における処理ログでも真正性は担保できるはずです。

また、EDIが普及していないことに対する反省として、利用に向けた明確なインセンティブを設計しなければなりません。もちろん、デジタル化自体が業務効率化のようなメリットを生むのが本筋ですが、利用が一般化しない限りデジタルと紙の併用になってしまい、十分なメリットが生まれにくいこと、またメリットの多寡は事業規模に連動することから、特に中小事業者においては、外的なインセンティブが必要だと考えています。プロセス全体のデジタル化であり、社会的コストの低減という観点では、電子インボイスにより、より公平公正な納税が実現されるメリットを、事業者に対するインセンティブとして還元するという考え方もあるのではないでしょうか。
posted by 岡本浩一郎 at 19:45 | TrackBack(0) | デジタル化