2020年09月16日

デジタル化は一年にしてならず

本日臨時国会が招集され、菅自民党総裁が総理大臣に選出されました。菅総理の看板政策と言えば、デジタル庁の設立。日本におけるデジタル化の遅れが新コロナウイルス禍で如実に示されましたが、私としてもデジタル庁には大いに期待しています。

一方で、デジタル化は一年にしてならずとも思っています。新コロナウイルス禍で明らかになった課題を踏まえ、この先一年で一気にデジタル化を進めるという動きがありますが、あえて誤解を招きかねない言い方をすれば、私はこれには反対です。正確に言えば、一年でできることは紙の電子化であって、業務プロセスそのものを見直すデジタル化にはならない、と考えています。今の日本に本当に必要なのは、業務プロセスそのものを見直すデジタル化です。一年でできることをさっさとやることは構いませんが、紙の電子化で仕事をした気になるのではなく、5年、下手をすれば10年かかるかもしれない抜本的な見直しにこそしっかりと取り組むべきだと考えています。

昨年立ち上げた社会的システム・デジタル化研究会がこの6月に発表した「社会的システムのデジタル化による再構築に向けた提言」では、短期的に取り組むべき領域として、今まさに業務プロセスの構築が進もうとしている領域、具体的には、2023年10月に予定されているインボイス(適格請求書等)制度導入を踏まえた電子インボイスの仕組みの確立であるとしています。一方で、確定申告制度、年末調整制度、社会保険の各種制度等、既に長年にわたって確立された業務プロセスをデジタルを前提として再構築することは、多大な労力と、結果として時間はかかるものの、それだけに非常に大きな社会的メリットを生むことが期待されるとしています。

電子インボイスの仕組みの構築は、短期的な取り組みとはいえ、今から3年がかりの仕事です。標準化されておらず、それが故に使うメリットが見えない仕組みを形の上だけ作るのは一年でもできるかもしれません。しかし、今はまだ何もない中で、日本のあらゆる事業者、大企業から個人事業主までが利用できる標準化された仕組みを作るとなると、これだけの時間はかかります(実際にはシステムとしては2022年秋から2023年春にリリースし、インボイス制度が始まる2023年10月には業務として定着した状態を目指したいと考えています)。以前イタリアの電子インボイス制度についてお話ししましたが、イタリアでは7年かかったことを日本では何とか3年で実現しようとしている訳です。

中長期的な取り組みである確定申告や年末調整という制度については、戦後から脈々と続く良くも悪くも定着した制度だけに、どうあるべきかには丁寧な議論が必要だと思っていますし、実際にデジタルを前提とした新しい仕組みを稼働させる上でも、皆がしっかりと対応できるように、周到な準備が必要だと思っています。5年、下手をしたら10年かかるでしょう。

それだけの時間をかけるからこそ、抜本的な見直しができる。デジタル庁という(私の希望でいえば)行政だけでなく、日本社会全体のデジタル化を牽引する組織には、一年でのやっつけ仕事ではなく、5年、10年という時間軸で日本の社会をデジタルを前提として作り替え、圧倒的に効率的な(もちろん大事なのは、それによって皆が幸せになる)社会を実現してほしいと思っています。もちろん、社会的システム・デジタル化研究会としても、電子インボイス推進協議会としても、弥生としても、私個人としても、そのための協力は惜しまないつもりです。
posted by 岡本浩一郎 at 20:39 | TrackBack(0) | デジタル化