2020年10月27日

米国における新型コロナウイルス危機(その2)

少し前に、今月頭に参加したLendIt USA 2020を通じて感じた新型コロナウイルス禍によって米国のFinTechにもたらされた「危機」についてお話をしました。危機は、危険にも機会にもなりうる訳ですが、デジタルやオンラインという観点から機会になっている分野も確かに存在します。

ただし、融資という分野については、危機が先行しています。新型コロナウイルス禍によって、景況が悪化する中で、KabbageOnDeckといったオンラインレンダーには、緊急避難的な資金繰りニーズによる申し込みが急増しました。ただ、Kabbageは「我々は"Emergency relief"(緊急救援)のために存在している訳ではない」ため、ニーズに応えられないということで、4月には融資をストップしました。また、OnDeckについても、「“Anticipatory” borrowing(先行きの悪化を予想しての駆け込み需要) が急増したが、応えきれるものではなく、4月中旬までに新規融資をストップした」とのことです。

これはオンラインレンダーに限ったことではありませんが、融資はその返済がなされる蓋然性が一定程度確保されているからこそ成り立つものです。特に米国では多くの事業者が事実上の活動停止に追い込まれる中で、返済がなされる蓋然性が確保できなくなりました。オンラインレンダーは、これまで、ややもすれば従来型の金融機関のサービスが行き届かない小規模事業者向けにサービスを提供してきました。いわば事業者版のUnderbanked(銀行に相手にしてもらえない層)の解消に価値を発揮してきたわけです。ただ、今回の経済環境の激変の中では、事業基盤がしっかりした事業者を多く抱えている大手銀行と比較し、事業基盤がぜい弱な小規模な事業者向けにサービスを提供しているオンラインレンダーは一番直接的に影響を受けたと言えます。

こういった状況の中で、米国においても公的な支援策が実行されました。これはもちろん必要なことですが、公的な支援策によって、事業者は一旦資金繰りに目処が立つ状況になり、そうなるとしばらくはそもそも融資の需要が減ることになります。

劇的な環境変化の中での緊急避難的な資金繰りニーズには応えることができない。それは、国の役割。一方で、公的な支援によって、お客さまの資金繰りに一旦目処が立つと、通常の資金ニーズも生まれなくなってしまう。新型コロナウイルス禍は、事業者のUnderbanked解消に力を発揮してきたオンラインレンダーにとって、試練の時をもたらしています。

こんな中で、米国におけるメジャーなオンラインレンダーであるKabbage、OnDeckの両社とも買収されるということが発表されています。KabbageはAmerican Express(AMEX)によってOnDeckはEnovaによって買収されることが発表されています。(続く)
posted by 岡本浩一郎 at 18:30 | TrackBack(0) | アルトア