2020年11月04日

米国における新型コロナウイルス危機(その4)

今世界中が米国大統領選挙の開票を固唾をのんで見守っています。2016年も接戦でしたが、今回も接戦ですね。最終的に決着がつくまでには一波乱も二波乱もありそうです。WSJで"This Election Highlights How Divided the Nation Remains"(今回の選挙で、米国がいかに分断され続けているかが明確になった)という記事がありましたが、米国はお互いに相容れない二つの国(東海岸と西海岸の「青の国」と中西部の「赤の国」)に分断されつつあるのかもしれません。

ただ、どんな結果になるにせよ、米国のダイナミズムはそう簡単には失われないのだとも思っています。先月初に参加したLendIt USA 2020を通じて感じた新型コロナウイルス禍によって米国のFinTechにもたらされた「危機」についてお話ししていますが、危機を危険だけでなく、機会にすることができているのも、米国ならではだと感じています。前回は、融資という分野については、危険が先行し、有力な二社が買収されたということをお話ししました。

ただ、融資という分野においても、機会もまた生まれています。そのきっかけになったのがPPPです。PPP、Paycheck Protection Program(給与保護プログラム)は、新型コロナウイルス禍に対する米国政府による中小事業者支援策として4月にスタートしました。PPPは、基本的には金利1%の融資なのですが、その資金を賃金、家賃等の支払いに充当した場合には、返済を免除されることになっています。日本でも雇用調整助成金(給与支払いを支援)、家賃支援給付金(家賃支払いを支援)、持続化給付金(事業全体を支援)と様々な事業者支援策が講じられていますが、これら全てを包含したような支援策といえます。

PPPは、4月に受付が開始され、8月8日に受付を終了しました。実績としては、5,460社のレンダー(金融機関)から、5,212,128件の融資が実行され、総額$525B(約55兆円!)が融資されたそうです。

ただ、PPPの滑り出しは問題含みでした。基本形としてはあくまでも融資ですから、PPPを受け付けるのは、金融機関。殺到する申込みに対して、金融機関がそれをさばけないことが大きな問題となりました。金融機関としては、従来からのお客さまを優先する、しかも、PPP対象となる事業者の中でも比較的大きな事業者が優先的に取り扱われていることが大きな問題となりました。実際、私が通っていたビジネススクールの卒業生メーリングリストでは、この時期、どの金融機関であればPPPを受け付けてもらえるかという情報交換が頻繁に行われていました。

この問題に対し、PPPを主管するSBA(U.S. Small Business Administration、米国中小企業庁)は、PPPの取扱いを金融機関だけでなく、FinTechプレーヤーにも認めるという英断を行いました。

ここで特に目覚ましい成果をおさめたのが、前回もお話ししたKabbageです。Kabbageでは、前々回にお話しした通り、自社での融資は停止したものの、その一方でオンラインで完結するPPP申込プロセスを短期間で構築し、圧倒的なボリュームのPPP申込みを受け付けました。PPPが終了した8月までに、実に300,000件のPPPローンを実行したそうです(提携金融機関経由の申込みも含む)。これはBank of America(BoA)に次ぐ、全米で第2位の実績となったとのこと。

特徴的なのは、BoAなどの従来型の金融機関でのPPPの1件当たりの金額が$100,000(約1050万円)を超える中で、Kabbageの平均金額は$30,000(約310万円)にも満たないということ。従来型の金融機関が従来からの比較的大きなお客さまを中心に対応したのに対し、KabbageのようなFinTechプレーヤーが従来型の金融機関が救いきれないUnderbanked層を支えたということが明確にわかる結果かと思います。

このようにKabbageをはじめとするオンラインレンダーが、短期間で効率よくお申込みを処理できる仕組みを構築し、実際に多くのPPPローンを手掛けたことは、オンラインレンダーならではの価値を示す結果になりました。(続く)
posted by 岡本浩一郎 at 23:52 | TrackBack(0) | アルトア