2021年08月25日

本当のDXとは

前回はデジタル化を進めていかなければならない、とお話ししました。デジタル化というとDX(デジタル・トランスフォーメーション)というキーワードを聞かない日はありません。率直に言って、最近はDXが完全に流行り言葉になっているように感じます。あっちでもこっちでもDX。ただ、世の中で喧伝されているDXは、ほとんどの場合、IT化を意味しているようです。「ウチのサービスを使えば、はい御社もDX」といった宣伝もよく目にしますよね。

ただ、私はDXはもっと本質的、かつ不可逆な変化をもたらすものだと考えています。私なりにDXを定義すると、「デジタルを前提として、〇〇〇のあり方を根底から再定義すること」となります。会社や事業のDXであれば、「〇〇〇」に「会社や事業」が入ります。社会的システム・デジタル化研究会で取り組んでいるのは、「デジタルを前提として、社会的システムのあり方を根底から再定義すること」です。

DXを考える時に、私が一番の好例として引き合いに出すのが、Amazon.comです。Amazonって何業でしょうか。小売業? IT業? 物流業? Amazonが1995年に創業した際には、オンラインの書店としてスタートしました。書店ですから小売業ですね。ですが、20年以上経った今、もはやAmazonを何業と定義することは難しいのではないでしょうか。

2002年にはAmazon Web Services (AWS)をスタートし、今やAWSは多くのITベンダーにとってなくてはならないものとなると同時に、この10年間の爆発的なベンチャーブームの立役者でもあります。AWSだけを見れば、小売業という痕跡は一切残っていません。また、最近のAmazonは巨大な物流業という側面も強くなっています。巨大な倉庫を何ヶ所も運営し、アメリカでは自社で多数の貨物飛行機を運行しています。日本でも、気がつけばヤマト運輸などの物流業者ではなく、自社で配送する割合も増えています。

小売業だったらどこに店舗を構えるかが最も重要、ITサービスを提供するためには自社でサーバーを構築しないと、物流業は全国をカバーするのが当たり前。そういった常識をデジタルで否定する。デジタルを前提として、小売業のあり方を、IT業のあり方を、物流業のあり方を再定義する。それこそがAmazonが猛烈な勢いで進めていることです。

そう考えると、Amazonが無人の店舗をAmazon Goとして運営したり、高級スーパーマーケットであるWhole Foods Marketを買収したりということも実は一貫性があることがわかります。直近でも百貨店のような小売店を出店すると報道されました。Amazonがオンライン書店からスタートしたからと言って、Amazonは別に全てがオンラインであるべきだとは考えていないのだと思います。オンラインでも実店舗でも、デジタルを前提としてそのあり方を見直しているだけ。オンラインでの再定義がある程度進んできた中で、今度は実店舗のあり方の再定義にも取り掛かっている(なおかつオンラインと実店舗の相乗効果も狙っている)と見るべきではないでしょうか。

単なるIT化やオンライン化ではない。Amazonが進めているのはデジタルを前提として、小売業、IT業、物流業…のあり方を根底から再定義すること。本当の意味でDXというからには、そこまで踏み込まなければならないのだと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 22:34 | TrackBack(0) | デジタル化