2021年09月24日

何がインボイス(適格請求書)なのか(その2)

前回は納品書と合算請求書(月締請求書)それぞれについて、何をもってインボイスとなるのかについてお話ししました。納品書や請求書という名称自体は実は何の意味もありません。名称によらず、[1] インボイスに記載が必要な事項が満たされており、仕入税額控除の適用ができる、と同時に[2] 買手に支払いを求める文書である、ものがインボイスとなります。

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では、今度は前回と異なるパターンを見てみましょう。まずはこちら。これは前回の一つ目の例とほとんど同じです。名称は納品書。ただ、前回の例と異なるのは、前回は税額に関する記載がない(結果的に総請求額も記載されていない)のに対し、今回は税額に関する記載があり、総請求額も記載されているということです。

結果的にこの納品書は、インボイスに記載が必要な事項である、以下の6つを全て満たすことになります。

(1) 売手(適格請求書発行事業者)の名称および登録番号
(2) 取引年月日
(3) 取引内容(軽減税率の対象品目であればその旨を明示)
(4) 税率ごとに区分して合計した対価の額および適用税率
(5) 税率毎の消費税額
(6) 買手の名称

ですので、名称としては同じ納品書ですが、前回の例と異なり、今回の納品書はインボイスになりえます。インボイスです、と断定はせず、インボイスになりえます、というやや曖昧な言い方をしましたが、これはもう一つの条件である[2] 買手に支払いを求める文書であるかどうかで左右されます。名称としては納品書であっても、インボイスに記載が必要な情報が記載されており、この納品書をもって支払いを求めるという合意が売手と買手の間でなされていれば、これはインボイスになります。

いや、ちょっと待ってください。この納品書に対して、このような月単位でまとめた請求書が発行されていたらどうでしょうか。

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これは前回の二つ目の例と同じです。じゃあやっぱり、納品書は納品書であってインボイスではない、その代わりこの請求書がインボイスになるのでしょうか。

実は先ほどの納品書とこの請求書の組合せには問題があります。細かくはまた別途お話ししたいと思いますが、先ほどの納品書とこの請求書でそれぞれ税額の計算を行っているからです。インボイスでは、税率毎に端数処理は1回と決まっています。納品書と請求書でそれぞれ税額の計算を行うと税額に矛盾(一致しない)が発生しえます。前回の例では納品書では税額の計算を行っておらず、合算請求書でのみ税額の計算を行っていました。これであれば矛盾は発生しえないですし、端数処理は1回ですから問題はありません。

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今回の納品書の場合は、こんな「請求書」との組合せであれば問題ありません。

この「請求書」自体では税額の計算を行っていません。納品書で計算された税額を引用し、対象期間で集計しているだけです。ただ、このケースでは、この「請求書」はインボイスにはなりません。この場合は、納品書がインボイス([1] インボイスに記載が必要な事項が満たされており、仕入税額控除の適用ができる、と同時に[2] 買手に支払いを求める文書である)、逆にこの「請求書」は、名称こそ請求書であっても、実態としては支払案内という位置付けになります。一定期間の間にこれだけの納品があり、それぞれに対し納品書(兼請求書)で請求済みです。ただ、念のために、期間合計を再度送付しますので、お支払いの程お願いします、というものです。つまりこれまでにお話ししてきた月まとめ請求書であり、インボイスではないということになります。

インボイス = 請求書という定義自体は必ずしも誤っている訳ではないのですが、その判断は名称ではなく、記載されている中身で判断することになります。今一度自社が発行している納品書/請求書にどういった情報が記載されているのか、何がインボイスに該当するのか、考えておきたいところです。
posted by 岡本浩一郎 at 22:40 | TrackBack(0) | 税金・法令