2022年02月28日

どちらがお好み?

いよいよ2月も終わり。3/15(火)の確定申告期限まで2週間ちょっととなりました。これまでお話ししているように今年は新型コロナウイルス禍の影響を受け、簡易な手続きで申告期限の延長が認められています。とはいえ、問題を先送りするよりは、本来の期限である3/15(火)までに終えてすっきりとしたいものです。

本ブログを読んでいただいている方は、もうしばらく弥生を使っていただいている方が多いのではないかと思います(もしくは、弥生のパートナーの方や関係者なども多いかと思います)。既に弥生をお使いであれば、時期的には帳簿付けもある程度終わっており、確定申告書作成の目途も立っている方が多い…、と願っています(笑)。

一方、昨年に開業されたなど、今年が初めての確定申告という方、あるいは、これまでは手書きで何とかしていたけれど、今年こそはソフトを使ってラクをしたいという方もいらっしゃるかと思います。そういった方が最初に悩むのが、どのソフトを使うのかということ。これは悩むまでもなく、弥生で間違いありません。デスクトップでもクラウドでもNo.1ですからね。

もっとも弥生をご利用いただくとなると、少し悩むかもしれないのが、デスクトップアプリ(やよいの青色申告 22)を使うのか、あるいはクラウドアプリ(やよいの青色申告 オンライン/やよいの白色申告 オンライン)を使うのか。お客さまに選択肢を提供するのが、弥生のポリシー。どちらでもお客さまがいいと思う方を使っていただければ。ただし、申告が青色申告ではなく、白色申告であれば、選択は自ずとクラウドアプリであるやよいの白色申告 オンラインになります。正確には、デスクトップのやよいの青色申告 22でも白色申告には対応しているのですが、やよいの青色申告 22にはお金がかかるのに対し、やよいの白色申告 オンラインは永年無料ですから、コスト的に比較になりません。ということで、白色申告であればクラウドアプリの一択。

青色申告の場合は、どちらでも、というのが弥生のスタンスになるのですが、おススメはどちらか。これはそれぞれの画面を見ていただくとわかりやすいと思います。

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まず、こちらはデスクトップアプリ、やよいの青色申告 22の確定申告書作成の画面です。画面上に確定申告書が見たままに再現されているのがわかりますね。このため、これまで手書きで確定申告書は書いてきた、どこに何を記入するかは大体わかっているという方に特におススメです。もちろん、ソフトが誘導します(そのためのナビゲーションが左手に表示されています)ので、確定申告は初めてという方も全く問題はありません。ただ、ある程度確定申告書はわかっているよという人ほど効率的に申告書作成を終えられるようになっています。

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これに対し、こちらはクラウドアプリ、やよいの青色申告 オンラインの確定申告書作成の画面です。デスクトップとは異なり、確定申告書のイメージは表示されていません。やよいの青色申告 オンラインは、最初から最後まで画面の誘導に従って申告書作成を進めます。

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上の画面(見えていませんが、画面下部)で、Step 3の「確定申告書の作成」の画面に進んでも、やはり確定申告書のイメージは表示されません。上部に1. 基本情報 > 2. 源泉徴収税 > 3. 所得…という流れが表示され、各画面で表示される質問に答えていけば、自動的に申告書が作成されます(ちなみに、右上には「プレビュー表示」というボタンがあり、このボタンで随時申告書のイメージを確認することは可能です)。

弥生がやよいの青色申告 オンラインのターゲットとして想定しているのは、確定申告が初めてという方、あるいは、初めてではないけれど自信がないという方です。基本はソフトにお任せしたいという方にはやよいの青色申告 オンラインがおススメということです。一方、申告書は書き慣れているという方からすると、やよいの青色申告 オンラインはややまどろっこしいと感じられるかもしれません。その場合には、胸を張ってやよいの青色申告 22をおススメします。

いずれにしても、もう明日から3月。クラウドでもデスクトップでも、お客さまがこれと思う方を選択いただき、確定申告書作成を進めましょう。
posted by 岡本浩一郎 at 21:39 | TrackBack(0) | 弥生

2022年02月24日

確定申告の準備状況

確定申告期間が始まってから一週間。今年も新型コロナウイルス禍の影響を受け、簡易な手続きで申告期限の延長が認められています。ただ、逆に言えば手続きをしない限りは期限は本来の3/15(火)のままです。これは、手続きなしに延長となった昨年や一昨年とは異なります。 

これがお客さまの確定申告の準備状況にどのような影響を与えるか。ソフトの販売状況、ご利用状況、そしてお客さまからのお問合せ状況を見る限り、多くのお客さまは本来の申告期限である3/15(火)に向けて準備を進めているようです。

事実としては最小限の手続きでの延長が発表になった2/3を境に一旦お問合せが減少しましたが、その後着実にお問合せが増えてきています。これまでの波形で見る限り、今年は無条件で延長となった2020年/2021年とは異なり、全体としては新型コロナウイルス禍以前の2019年に近いように見受けられます。

全体的に言えば、平常時の年に近い推移だけれども若干のアンダーといったところでしょう。例年は期限が終わるとお問合せがガクッと減少するのですが、今年はこれまでアンダーした分が3/15以降にシフトする分、本来の期限以降も例年よりは高めの状況が、延長時の期限である4/15まで続いていくと見ています。

会計事務所で申告業務を請け負っている場合には、4月以降は法人の決算業務が盛り上がってくることもあり、昨年/一昨年も延長にはなったものの、延長前の元々の期限で終わらすことを目指すという事務所がほとんどだった印象です。

今年は原則は通常通りの期限ということで、昨年にもまして本来の期限で終わらせるという意向の会計事務所が多いようです。ただ一方で、例年とは異なる事情として、1月末に事業復活支援金の申請が始まり、ここしばらくはそちらに集中せざるを得ないという状況もあるようです。

いずれにせよ、やはり基本は本来の期限を目指しつつ、心の安心として延長もありと考えるのがよいのではないかと思います。

そう言っている私も、ある程度の準備は済ませつつも、まだ申告書本体には取り掛かれていません。遅くとも今週末にはある程度目処を付けたいと思っています。
posted by 岡本浩一郎 at 23:13 | TrackBack(0) | 弥生

2022年02月22日

禍福は糾える縄の如し

この二年間は、とにかく我慢が続いています。皆に会えない。たまにはお酒を交えてワイワイと息抜きをすることもできない。仕事自体はリモートで続いても、やはり皆さんと同じ場で、同じ空気を共有したいなあと思います。でも同じ空気を共有することこそが避けるべきこととされている訳ですから、新型コロナウイルスというのは本当に厄介なものです。そんな中で今日は2022/2/2、2が続くということで、「スーパー猫の日」だそうです(ちなみに本記事の投稿時間にも注目)。ということで、今日は猫に関する話を。

我慢が続いていると書きましたが、実際には悪いことばかりではありません。実は昨年頭から猫を飼い始めました。名前は「ペロ」です。よく舌をしまい忘れて(?)、舌をペロリとしているので、ペロ。ペロとは近所の公園で出会いました。

私はこれまでペットを飼ったことはなかったのですが、いつかは飼ってみたいと思っていました。犬派か猫派か、というと断然猫(犬派の皆さん、失礼)。娘が大きくなり、娘がペットを飼いたいと言い出すと、話はだいぶ具体的になってきました。保護猫/犬のサイトでこの子はどうだろうと見てみたり。やはり子猫だよなあ、と成猫は眼中にありませんでした。気になる子がいて、今度の週末に見に行こうかという話はたまに出ましたが、結果的には行動に移すことはありませんでした。選択肢が多すぎて選べなかったということもありますが、振り返ってみれば、機が熟してなかったんでしょうね。

さて、一昨年の春、緊急事態宣言が発出され、私もずっと自宅にこもることになりました。ただ、こもってばかりではストレスが溜まりますし、何よりも運動不足。ということで、一日に一時間程度、家族で近所の公園に散歩に行って、私は縄跳びをすることが日課になりました。近所の公園は、速足で徒歩10分ぐらい。往復+縄跳びでちょうどいい運動になります。

通うようになって初めて気が付いたのですが、この公園には猫が住み着いているようでした。しかも何匹も。どうも毎日餌をあげる人もおり、いわば地域猫として面倒を見られているようです。そのせいもあってか、結構人懐こい。性格もあるので、人懐こくすぐによしよしさせてくれる子もいれば、警戒心が強い子もいますが、どの子も人には慣れているようです。

猫と会えるということもあって、この公園通いが家族の欠かせない日課になりました。なかでもいちばん人懐こかったのが今我が家にいるペロです。猫のいるエリアに近付いて「ペロ〜」と呼ぶと、尻尾をピンとさせてトテトテと歩いてきてくれる。子猫でなくても、可愛いものだな、というのは発見でした。


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公園時代のペロ

緊急事態宣言が明けてからは毎日とはいきませんが、暇を見つけて公園通いは続きました。家族全員で行くことは減りましたが、毎日家族の誰かは行っているという感じでしょうか。その後時間が経ち、春の間は気持ちよさそうにしていた猫たちでしたが、夏も盛りになると、暑さに辛そうにしています。この頃から、我が家で保護できないだろうか、という話になりました。

ほぼ毎日餌をあげているおじいさんに相談すると、いいんじゃないの、と。ペロはこの公園で生まれたとのことですが、おそらくもう6歳は過ぎています。齢をとってくると外は辛いから、保護してあげられるのであればいいのではないかと。

その後熟慮を重ねて夏の終わりに保護を試みたのですが、うまく行きませんでした。だてに6年以上生きておらず、簡単には捕まえられてくれません。人懐こい一方で、とても警戒心が強いということがわかりました。困ったことに、我が家が保護しようとしたことが引き金になり、公園のいつもの場所に寄り付かなくなってしまいました。たまに公園に来ても、私の姿を見るとすたこらと逃げていってしまいます。

それから数ヶ月間は暇を見つけて公園に通い、関係性の修復に努めました。猫によっては、すぐに忘れるようなのですが、ペロの場合は、記憶力がよく(?)、再び撫でられるようになるのに3ヶ月近くかかりました。保護したいという想いはありつつも、また公園に来なくなったら困るし、保護は無理なのかなあという諦めもありました。

そして年が明け、昨年のお正月。お正月早々、久し振りに家族で公園に行ってみると、別の人がペロを保護しようとしているよと周りが教えてくれました。もうずっと公園に通っているので、周りは皆顔馴染ですし、我が家がペロを保護しようとしていたことを覚えています。急遽、保護しようとしていた方とお話しし、昨年保護しようとしたがうまくいかなかったこと、いつかは保護したいと思っていることをお話しすると、そういったことであれば是非保護してあげてください、と。

再度保護に失敗するのではないかという恐怖心はありましたが、これもご縁だろうと考え、よく公園に来ている方に協力を要請。翌日に保護を実行することにしました。翌日、もうドキドキですし、これで保護できなかったらやはりご縁がなかったということなんだろうと思いつつ、保護にチャレンジ。やはり警戒心が強く、苦戦はしましたが、今回はようやく保護に成功しました。すぐに動物病院に。なにぶんお正月(1/2)ということで、診ていただける動物病院を探すのに苦労しました。

家に連れて帰ってしばらくはずっと怯えており、ケージにこもって心ここにあらず、という感じでしたが、数日間で少しだけ慣れたのかケージの外に出てきました。それでも最初は風呂釜の裏に隠れてしまったりと、ペロもこちらも慣れないが故の苦労はありました。


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家に来たばかり、まだ怯えています

今はすっかり我が家に慣れ、マイペースで暮らすようになりました。もう大人の猫なので、おとなしいものです。家の中がぐちゃぐちゃになったらどうしようという懸念は全くの杞憂でした。もう一年が経って、完全に家族の一員となっていますし、かなりの甘えんぼさんです。


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すっかり馴染んでのびのび

「禍福(かふく)は糾える(あざなえる)縄の如し」という故事成語があります。もとは史記にあった言葉のようですが、幸福と不幸は、より合わせた縄のように交互にやってくるという意味です。新型コロナウイルス禍はまさに「禍」(わざわい)。ですが、よく見てみれば決して禍だけではなく、その裏には福もまた存在しているのだと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 22:22 | TrackBack(0) | パーソナル

2022年02月18日

透ける狙い

今週は今回(令和3年分)の確定申告書の様式についてお話ししています。押印欄がなくなったというわかりやすい変化はありつつも、全体としては変更点は少なめ。ただ少ない中でも、目立つのが区分欄の増加ということを前回お話ししました。近年区分が増えている背景には、税制の複雑化があるとも。

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もっとも今回追加された区分欄は全て申告書左上の「収入金額等」のエリアなのですが、このエリアでの追加には税制の複雑化という以上に、国税庁として何を注視しているかが表れているように思います。

わかりやすいのが、「雑」「その他」という行の区分欄ですね。雑所得がこれまで「公的年金等」と「その他」の2行だったものが、昨年の申告書から「公的年金等」「業務」「その他」の3行に分かれたのには、ここでいう業務に該当する「副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)」を今後はしっかりと見ていきますよという国税庁の意志の表れではないかということを昨年お話ししました

今回は「その他」の行に区分欄が新設された訳ですが、それではこの区分欄に何を記入するのかと手引き(pdf)を確認してみると、「個人年金保険に係る収入がある場合は「1」を、暗号資産取引に係る収入がある場合は「2」を、個人年金保険に係る収入及び暗号資産取引に係る収入の両方がある場合は「3」を記入します」とあります。暗号資産(仮想通貨)取引というと、国税庁が申告漏れや不正確な申告に目を光らせているのは周知の事実。これまでの申告書では、雑所得があることはわかっても、その内訳がどうなっているかは曖昧だった(厳密に言えば、第二表で所得の内訳を記入することは求められてはいましたが、この欄はややアバウトなので)のですが、今後はこの区分欄でビシッと特定されることになります。結果的に、暗号資産取引による雑所得がある場合には、通常より丁寧に見られることになるのでしょう。

不動産所得の収入で新設された区分欄のうち「区分1」は、手引きによれば「国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例(措法41の4の3)の適用がある場合は、「1」を記入します」とありますので、これも国外中古建物が注視されていることの表れですね。

では、事業所得の「営業等」収入の区分、「農業」収入の区分、そして不動産所得の収入の「区分2」は何を注視しているのかというと、実は、帳簿の付け方なのです。これらの区分には「1」から「5」までの区分を記入するのですが、これは手引きで以下のように解説されています。

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電子帳簿保存法というと耳馴染みはないかもしれませんが、実は全事業者に影響が及びうるということを昨年お話ししました(結果的には2年間の猶予期間が設けられたということも昨年末にお話ししました)。

今回、こういった区分が設けられたということは、国税庁がどのように帳簿を付け、保存するのかということに関心を持っているということの表れです。もちろん弥生を使っていれば、少なくとも「2」(会計ソフト等の電子計算機を使用して記帳している場合)に該当しますので、国税庁から見ても、「ああちゃんとした帳簿付けをしていますね。よろしい。」ということになるものと思いますが(笑)。

申告書全体から見ればほんのわずかな変更点ですが、毎年確定申告書を睨んでくると、こんなことが浮かび上がってくるのです。職業病だと思いますが、なかなかマニアックなことは自覚しております(笑)。
posted by 岡本浩一郎 at 20:37 | TrackBack(0) | 税金・法令

2022年02月16日

増え続ける区分

いよいよ本日から確定申告が始まりました。朝一番でカスタマーセンターのメンバー全員にZoomで激励のメッセージを伝えたのですが、皆やる気満々です。お話しした通り、今回も新型コロナウイルス禍の影響で、簡易な手続きで個別に申告期限の延長が認められますが、あくまでも原則的な期限は3/15(火)。このため、お問合せとしても4月までダラダラ続くのではなく、2月後半から3月中旬にピークとなるのではないかと考えています。お客さまに早く確定申告を終え、ホッとしていただけるよう、しっかりサポートしていきます。

さて、前回は、今回(令和3年分)の確定申告書の様式についてお話ししました。押印欄がなくなったというわかりやすい変化はありつつも、全体としては変更点は少ないとお話ししました。数少ない変更点ですが、目立つのが区分欄の増加です。

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前回もご覧いただきましたが、こちらが今回(令和3年分)の確定申告書の様式です(正確には申告書Bの第一表)。収入金額欄で「事業」「営業等」という行に「区分」という入力欄があることがわかります。

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一方でこちらは20年前、平成13年(2001年)分の確定申告書です。これを見ると、区分という欄はほとんどないことがわかります。様式は左右二段組みになっていますが、右側には2ヶ所区分欄が存在しているものの、左側には区分欄は存在していません。

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続いてこちらはぐっと今に近付いて平成27年分。区分という欄が少し増えています。右側に2つ増え、左側には新たに2ヶ所(給与所得、配偶者(特別)控除)の区分欄ができています。ここで改めて一番最初にお見せした令和3年分を見ると、特に左側で区分欄が増えていることがわかります。昨年(令和2年分)から今回(令和3年分)だけでも5ヶ所(事業収入で2ヶ所、不動産収入で2ヶ所、雑収入で1ヶ所)増えています。

なぜ区分が増えるのか、というと単純に言えば、税制が複雑化しているからです。税制が複雑化する一方で、申告書のページ数を増やせないことが区分欄の増加につながっています。

わかりやすい例で言えば、医療費控除欄にある区分ですが、これはセルフメディケーション税制に伴って生まれた区分です。医療費控除は、支払った医療費が一定の金額以上ある場合に認められる所得控除ですが、この特例として、支払った特定の医薬品の購入費が一定額(12,000円)を超える場合の控除を得られるという制度(セルフメディケーション税制)が平成29年分から認められるようになりました。

通常の医療費控除とセルフメディケーション税制の両方で控除を受けることはできず、どちらかを選ぶ必要があるのですが、そのどちらかを医療費控除欄に記載することになります。この際、セルフメディケーション税制の場合には、区分に「1」と記載することによって、セルフメディケーション税制の適用を受けていることを示すことになります。要は、医療費控除とセルフメディケーション控除という二つの行を作る代わりに、区分という欄が使われているということです。

(元)エンジニアとして、ツボにはまるのは、給与所得欄にある区分です。この区分はなぜか3つ(3マス)あります。ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、この区分は、特定支出控除を受けていることを示すものです。給与所得がある人は、個人事業主のように本を買ったり、会食をしたりということで自分の意思で経費を計上することは認められていません。そのかわり、必要経費に該当する金額ということで、給与所得控除というものが自動的に認められます。それでも、給与所得控除では収まりきらない経費もありうるということで、かなり厳しい条件のもとで認められるのが特定支出控除です(要件がかなり厳しいので、ほとんど使われることはないというのが実態ではありますが)。

特定支出控除には、9つの区分(例えば、区分4: 研修費や区分8: 資格取得費など)があるのですが、どの区分の適用を受けているのかを示すために、適用を受けている区分の番号を足した数字を、確定申告書の給与所得欄の区分に記載する必要があります。番号を足してどの区分の適用を受けているのがなぜわかるのか、と思いますが、実は、区分の番号は、「1, 2, 4, 8, 16, 32, 64, 128, 256」という一見脈略のない数字がふられています。わかりますか? そうです、これは2進数。ですから、足した数字が25であれば、これは区分1と区分8と区分16の適用を受けているということが一意で特定できるのです(要は9ビットのどの桁が1になっているかということです)。もうおわかりかと思いますが、9つの区分全ての適用を受けたとすると合計が「511」になりますから、給与所得欄の区分は3マスあるということです。

2進数の考え方で9つの区分を特定できるようにする仕組みは、個人的にはよく考えたなと思います。エンジニアであれば、ニヤリとすることは間違いないでしょう。ただまあ、正直わかりにくいですよね。

前置きが長くなりましたが、次回は、今回の申告書で追加になった区分についてお話しします。
posted by 岡本浩一郎 at 22:21 | TrackBack(0) | 税金・法令

2022年02月14日

間違い探し

いよいよ今週から確定申告の期間が始まるということで、毎年恒例にはなりますが、本ブログでも確定申告について熱く語ってみたいと思います。ということで、まずはこちらをご覧ください。今回の確定申告(令和3年分)の確定申告書の様式です。正確には確定申告書には申告書Bという標準版と申告書Aという簡易版がありますが、これは申告書Bの第一表(=1ページ目)になります。

(令和3年分) 2022021401.png

一方でこちらは令和2年分の様式。どこが違うでしょうか。

(令和2年分) 2021012901.png

昨年の令和2年分は、その前年の令和1年分と比べて、10年に一度のレベルの大幅変更でした。逆に今年は、昨年が大幅変更だっただけに、変更量としては小さめです。昨年がメジャーバージョンアップであれば、今年はマイナーバージョンアップと言ってよいかと思います。例年、様式が公表され次第、どこがどう変わっているかを徹底的に精査するのが、毎年の確定申告機能提供の第一歩となるのですが、今年は変更量が小さく安心しました。

とはいえ、ボリュームとして小さいとはいえども、変更は変更です。どこが変わっているかわかりますか?

パッと目に付くのは右上で、不自然な空白がありますね。そう、氏名の横です。そうです、ここは昨年までは押印欄でした。まだ記憶に新しいところですが、菅政権において意味のない押印をなくそうという動きがみられました。これはもちろん歓迎すべきことですし、実際に、一昨年12月には「提出者等の押印をしなければならないこととされている税務関係書類について、次に掲げる税務関係書類を除き、押印を要しないこととする」という方針も示されました。その一方で、おそらく作成のタイミングの問題だと思いますが、昨年の確定申告書については、まだ押印欄が残ったままでした。結局、昨年の確定申告書については、押印しなければならないのか、しなくてもいいのか宙ぶらりんな状態でした

今回の確定申告書については、晴れて押印欄がなくなり、押印が必要ないことが明確になりました。それでも、いかにも押印欄のスペースがぽっかり空いているのにはちょっと違和感がありますね。

押印欄はわかりやすいところですが、他にもよく見てみると区分という入力欄(例えば、収入金額欄で「事業」「営業等」という行に「区分」という入力欄が追加されています)が増えているのがわかるかと思います。区分という入力欄は、かつてはほとんど使われていなかったのですが、ここ数年、税制が複雑化する & 求められる情報量が増える中で、格段に増えてきています。この区分については、次回もう少しお話ししたいと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 22:40 | TrackBack(0) | 税金・法令

2022年02月10日

確定申告に向けた準備

自分の会社の決算に目処が立ったということで、いよいよ私個人の確定申告の準備に取り掛かりたいと思います。とはいえ、いきなり確定申告書に着手するのではなく、まずは確定申告に必要な書類の整理から。

私の場合、まず整理するのは、生命保険料控除を受けるための生命保険料控除証明書と地震保険料控除を受けるための地震保険料控除証明書です。これらは一般的に秋に送られてくるのですが、その時点では確定申告までまだ時間があるが故に、いざ確定申告の準備というタイミングでは、あれ、どこに行ったのとなりがちです。そのため、数年前から確定申告準備用の書類ケースを用意してあり、届いたタイミングでそこに放り込むようにしています。この他、源泉徴収票など、確定申告で必要なものは、入手したタイミングでこの書類ケースに入れるようにしています。ということで、この書類ケースを確認すると、あったあった、ありました。

次は、医療費控除を受けるための医療費の領収書。これは、病院に行った際や、あるいは薬局で薬を買った際に領収書を入れる箱を、上記の確定申告準備用の書類ケースとは別に用意してあります。家族が病院に行った際や、あるいは薬局で薬を買った際には、領収書をここに入れておいてとお願いしてあるわけです(ちなみに、どこかに行ってしまいがちな病院の診察券もこの箱に入れてあります)。新型コロナウイルス禍で、出歩く機会が減ったこと、そしていつも感染対策を行っていることもあり、ここ2年間は驚くばかりに体調を崩すことがありません(例外は、トライアスロン出場前に体調を崩した時でしょうか)。このため、今回の医療費の領収書の枚数はかなり少なめ。良いことのはずですが、得られる控除が少ないのは微妙に残念です(苦笑)。

そして最後は、寄附金控除を受けるための寄附金の領収書。寄附金の領収書には、ふるさと納税の領収書も含まれます。医療費の領収書の枚数は減りましたが、ふるさと納税をそれなりに活用していることもあって、寄附金の領収書の枚数はそれなりです。

ただ、実は今回の確定申告から、ふるさと納税について、寄附先の自治体から発行される領収書を一枚一枚集める必要がなくなりました。もちろんこれまで通り、各自治体の領収書を集めてもいいのですが、もう一つの方法として、国税庁長官が指定した特定事業者が運営するふるさと納税サイトでの寄附について、その特定事業者が発行する年間寄附額を記載した「寄附金控除に関する証明書」を利用できるようになりました。これはいい仕組みだと思います。特に一つのふるさと納税サイトでまとめて寄附をしている方だとだいぶ楽になるのではないかと思います。

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ということで、この寄附金控除に関する証明書をどのように入手するのか確認してみたのですが、その手続きはふるさと納税サイトによって違いがあるようです。この寄附金控除に関する証明書は紙とは限らず、電子データもあります(というよりは国としては電子データがおススメのようです)。例えば、ふるさとチョイスでは電子データが基本となっており、紙で必要な場合には、この電子データを国税庁が提供する「QRコード付証明書等作成システム」にアップロードして、PDFを生成するという一手間かかる仕組みになっています。これに対し、さとふるも電子データが基本ではありますが、申し込みをしておけば、さとふるから郵送で証明書が届くようにもできるようです。ちなみに、いずれの場合も、申し込みから証明書の発行には多少時間がかかるようです。ですので、申告期限ギリギリでは間に合わない可能性もありますから、早めに準備しておきたいところです。

私はどうするかというと、一部の寄附(特に返礼品を求めないもの)について、直接その自治体に連絡をとって寄附をしているケースが複数あります。昨年で言えば、岩手県、宮城県、福島県、横浜市、湯河原町に対する寄附がこれにあたります。この場合にはふるさと納税サイトを通していないので、ふるさと納税サイトによる寄附金控除に関する証明書ではカバーできません。そのため、従来通り各自治体からの領収書をとりまとめるか、あるいは組み合わせるのか、少し迷うところです。
posted by 岡本浩一郎 at 21:57 | TrackBack(0) | 税金・法令

2022年02月09日

弥生会計の着実な進化(2/2)

昨年秋に提供を開始した弥生会計 22での着実な進化の一つは、前年度の仕訳の参照がラクになったこと。着実というよりは地味と言った方がいいかもしれませんが、特に会計事務所の方からは非常に評価の高い進化点です。

デスクトップアプリの弥生会計のデータファイルには3期分のデータが格納されています。このため、年度切替という機能を使うことにより前年度や前々年度の仕訳を参照し、必要があれば更新することができます(ただし、更新した場合には、その更新を次年度に反映するための次年度更新という処理が必要になります)。

もっとも、前々年度の仕訳を更新するというのは基本的にはないはずですし、前年度の仕訳を更新するのも特定の場合のみです。よくあるのは、例えば12月決算だとして、12月決算の処理が終わっていないけれども、新年度(1月)の仕訳を入力するというパターンですね。この場合は、新年度の仕訳入力と前年度の決算処理が同時並行で進むため、年度切替で行ったり来たりすることがあります。

一方で、前年度の仕訳を参照することは頻繁にあります。というのは、ある程度帳簿付けをしたことのある人であればおわかりのように、発生する仕訳はだいたいパターン化するからです。前年度発生した仕訳は今年度も発生する可能性が高いということですね。その中でも、一年に一回や数回のみ発生する仕訳については、あれ、これ前年度はどう仕訳したっけと確認したくなることがよくあります。典型的なのが、決算仕訳ですね。決算時にのみ発生する仕訳は、基本的に毎年同じ仕訳なのですが、年に一回だけに、覚えていないものです。

こうした時に便利なのが、これまでにもあった前年度仕訳日記帳という機能(帳簿・伝票メニューからアクセスできます)。この機能を使えば、年度切替をしなくても、即座に前年度仕訳日記帳を参照することができます。さらに前年度仕訳日記帳で、前年度の確認したかった仕訳をコピーして、当年度の仕訳日記帳に貼り付けすることもできます。

これに対し、今回の弥生会計 22からは、前年度仕訳日記帳に加え、前年度総勘定元帳/前年度補助元帳(帳簿・伝票メニュー)、そして前年度残高試算表(集計メニュー)という機能が追加されました。名前で想像できる通りですが、年度切替をしなくても、前年度の総勘定元帳や残高試算表をすぐに確認することができます。もちろん、前年度残高試算表を表示したら、そこから普通預金をドリルダウンして前年度総勘定元帳を表示するということも可能です。

また、行コピーして、行貼り付けという2ステップではなく、前年度仕訳日記帳(もしくは総勘定元帳)から「当年度の仕訳日記帳(総勘定元帳)へ登録」というサブメニュー(右クリック)を選択すると1ステップで該当の仕訳が当年度の仕訳日記帳(総勘定元帳)にコピーされるようになりました。

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前回お話ししたように、私の会社の決算では、まず入出金に使っている楽天銀行の明細をスマート取引取込で仕訳します。その後は、この「前年度」機能を使って前年度の仕訳をポチポチと当年度にコピー、その上で金額を調整すればあっという間に当年度の帳簿が完成するという訳です。実際に使ってみて、前年度からの仕訳のコピーがさらに簡単になったことを実感することができました。

地味な機能なので、お気付きでない方もいらっしゃるかと思いますが、是非一度試してみてください。会計事務所からの強い要望で追加した機能だけに、特に会計事務所の方からは、おお、これはいいね、と言っていただけるものと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 19:30 | TrackBack(0) | 弥生

2022年02月07日

弥生会計の着実な進化(1/2)

この間お話しした通り、一年振りに自分の会社の決算処理を行いました。といっても、前回お話しした通り、この会社としての活動は休止中であり、当然のことながら仕訳はごくごく少ない行数(具体的には40行)に過ぎません。それでも、少ない仕訳件数とはいえ、できるだけ短い時間で処理を終えられるように工夫はしているとお話ししました。

工夫の一つは、スマート取引取込を利用していること。弥生会計では、スマート取引取込という機能で外部から取引データを取り込み、それを仕訳として自動で記帳することができます。外部から取り込む取引データの代表例が銀行の明細ですね。自分の会社は3つの銀行(メガ2行、ネット銀1行)に口座を開設しているのですが、ネット銀(具体的には楽天銀行)ではインターネットバンキングを利用しています。最近では法人でもインターネットバンキングの利用に手数料がかからない銀行が出てきましたが、ネット銀は、インターネットありきだけに、インターネットバンキングの利用にお金はかかりませんし、振込時の手数料も安い。そのため、自分の会社では、メインの口座こそメガと位置付けていますが、日々の入出金は楽天銀行に集中させています(もっともその日々の入出金も件数が多い訳ではありませんが)。

この楽天銀行の口座について、弥生会計からスマート取引取込でAPI連携させることによって、銀行の明細を一瞬で仕訳記帳できるようにしています。この機能自体は従前から活用していたのですが、2019年には楽天銀行との接続が従来のスクレイピング方式からAPI方式に切り替わり、よりセキュアに、より安定的に利用できるようになりました。

その後もスマート取引取込で部門の設定ができるようになったり、スマート取引取込の画面をブラウザーで表示して確認後、弥生会計に取り込むという従来からの方式に加え、弥生会計に直接取り込んで弥生会計側で確認・修正ができるようになったり、と実は着実に進化を続けているのがこのスマート取引取込です。今回決算処理を行った際に目立ったのは、スマート取引取込で生成された仕訳について、はっきりとした付箋がつくようになったこと。どの仕訳がスマート取引取込で生成されたものかが一目でわかるだけでなく、どのようなロジックで仕訳が生成されたのかが示されるため、通常確認が必要ない仕訳、それに対して重点的に確認を必要とする仕訳が判別できるようになっています。今回の決算では全て銀行明細から推論での仕訳作成ということで、緑の○印となっています。

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実は、全く外部からは見えないのですが、昨年、推論のロジックの大幅な見直しも行っています。これについてもまた改めて熱く語りたいのですが、ひとまずはこの開発を引っ張ったUさんの記事をどうぞ。
posted by 岡本浩一郎 at 23:01 | TrackBack(0) | 弥生

2022年02月03日

申告期限の事実上の延長

本日、今年の所得税の確定申告期限について、国税庁から発表がありました(pdf)。今年の所得税の確定申告期限は事実上一ヶ月間延長され、4/15(金)となります。実はこれは想定通り。というのは、昨年も申告期限が延長されましたが、それが発表になったのが2/2だったからです。つまり、今年もほぼ同じタイミングで発表になったということです。足元の新型コロナウイルス禍の状況を鑑みると、延長せざるを得ないだろうというのも、またその延長幅が一ヶ月であろうというのも、やはり想定通りです。

ただ、正確に言えば、昨年の延長と今年の延長では違いがあります。昨年は緊急事態宣言の期間が確定申告期間と重なるということで、無条件での延長でした。ですから、延長された期間内に提出する際には、特段の手続きは必要ありませんでした。これに対し、今年は、「新型コロナウイルス感染症の影響により申告期限までの申告等が困難な方」のための手当てとして、簡易な方法で延長を申請できる、とされています。

要は昨年は緊急事態宣言があり、誰にとっても申告期限内に申告をすることが難しいであろうから、何ら手続きの必要がなく無条件の延長となった訳ですが、今年に関しては(おそらく現時点では緊急事態宣言が発出されていないからだと思いますが)、全体としての申告期限は変わらない、ただし、申告期限内に申告をすることが難しい人については、簡易な手続きで個別に延長を申請できるということになっています。延長ではありますが、無条件ではなく、条件付き、もっとも、誰でもができる簡易な手続きなので、「事実上の」延長と言えるかと思います。

手続きといっても、簡易な手続きということで、予めの申請は必要ありません。申告書を提出する際に、申告書の余白等に新型コロナウイルスの影響により延長を申請する旨を記載すればよいとされています。

具体的には、申告書を紙で提出する場合には、申告書の右上の余白に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と記載する必要があります。また、e-Taxで提出する場合には、特記事項として、「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と入力する必要があります。

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もちろん、やよいの青色申告 22でも、やよいの青色申告 オンライン/やよいの白色申告 オンラインでも特記事項への入力が可能になっています。本来の申告期限(3/15)から、(事実上の)延長後の期限(4/15)の間に申告される際には、特記事項への入力(紙の場合には、余白への記載)を忘れずに。

もっとも、当たり前ですが、本来の申告期限(3/15)までに申告を終える分には何の手続きも必要ありません。今回、申告期限の事実上の延長が認められたことは良いことだと思いますが、それで安心してずるずると先延ばしにするのではなく、できるものはさっさと終えてしまいましょう。
posted by 岡本浩一郎 at 20:19 | TrackBack(0) | 税金・法令