2022年02月16日

増え続ける区分

いよいよ本日から確定申告が始まりました。朝一番でカスタマーセンターのメンバー全員にZoomで激励のメッセージを伝えたのですが、皆やる気満々です。お話しした通り、今回も新型コロナウイルス禍の影響で、簡易な手続きで個別に申告期限の延長が認められますが、あくまでも原則的な期限は3/15(火)。このため、お問合せとしても4月までダラダラ続くのではなく、2月後半から3月中旬にピークとなるのではないかと考えています。お客さまに早く確定申告を終え、ホッとしていただけるよう、しっかりサポートしていきます。

さて、前回は、今回(令和3年分)の確定申告書の様式についてお話ししました。押印欄がなくなったというわかりやすい変化はありつつも、全体としては変更点は少ないとお話ししました。数少ない変更点ですが、目立つのが区分欄の増加です。

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前回もご覧いただきましたが、こちらが今回(令和3年分)の確定申告書の様式です(正確には申告書Bの第一表)。収入金額欄で「事業」「営業等」という行に「区分」という入力欄があることがわかります。

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一方でこちらは20年前、平成13年(2001年)分の確定申告書です。これを見ると、区分という欄はほとんどないことがわかります。様式は左右二段組みになっていますが、右側には2ヶ所区分欄が存在しているものの、左側には区分欄は存在していません。

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続いてこちらはぐっと今に近付いて平成27年分。区分という欄が少し増えています。右側に2つ増え、左側には新たに2ヶ所(給与所得、配偶者(特別)控除)の区分欄ができています。ここで改めて一番最初にお見せした令和3年分を見ると、特に左側で区分欄が増えていることがわかります。昨年(令和2年分)から今回(令和3年分)だけでも5ヶ所(事業収入で2ヶ所、不動産収入で2ヶ所、雑収入で1ヶ所)増えています。

なぜ区分が増えるのか、というと単純に言えば、税制が複雑化しているからです。税制が複雑化する一方で、申告書のページ数を増やせないことが区分欄の増加につながっています。

わかりやすい例で言えば、医療費控除欄にある区分ですが、これはセルフメディケーション税制に伴って生まれた区分です。医療費控除は、支払った医療費が一定の金額以上ある場合に認められる所得控除ですが、この特例として、支払った特定の医薬品の購入費が一定額(12,000円)を超える場合の控除を得られるという制度(セルフメディケーション税制)が平成29年分から認められるようになりました。

通常の医療費控除とセルフメディケーション税制の両方で控除を受けることはできず、どちらかを選ぶ必要があるのですが、そのどちらかを医療費控除欄に記載することになります。この際、セルフメディケーション税制の場合には、区分に「1」と記載することによって、セルフメディケーション税制の適用を受けていることを示すことになります。要は、医療費控除とセルフメディケーション控除という二つの行を作る代わりに、区分という欄が使われているということです。

(元)エンジニアとして、ツボにはまるのは、給与所得欄にある区分です。この区分はなぜか3つ(3マス)あります。ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、この区分は、特定支出控除を受けていることを示すものです。給与所得がある人は、個人事業主のように本を買ったり、会食をしたりということで自分の意思で経費を計上することは認められていません。そのかわり、必要経費に該当する金額ということで、給与所得控除というものが自動的に認められます。それでも、給与所得控除では収まりきらない経費もありうるということで、かなり厳しい条件のもとで認められるのが特定支出控除です(要件がかなり厳しいので、ほとんど使われることはないというのが実態ではありますが)。

特定支出控除には、9つの区分(例えば、区分4: 研修費や区分8: 資格取得費など)があるのですが、どの区分の適用を受けているのかを示すために、適用を受けている区分の番号を足した数字を、確定申告書の給与所得欄の区分に記載する必要があります。番号を足してどの区分の適用を受けているのがなぜわかるのか、と思いますが、実は、区分の番号は、「1, 2, 4, 8, 16, 32, 64, 128, 256」という一見脈略のない数字がふられています。わかりますか? そうです、これは2進数。ですから、足した数字が25であれば、これは区分1と区分8と区分16の適用を受けているということが一意で特定できるのです(要は9ビットのどの桁が1になっているかということです)。もうおわかりかと思いますが、9つの区分全ての適用を受けたとすると合計が「511」になりますから、給与所得欄の区分は3マスあるということです。

2進数の考え方で9つの区分を特定できるようにする仕組みは、個人的にはよく考えたなと思います。エンジニアであれば、ニヤリとすることは間違いないでしょう。ただまあ、正直わかりにくいですよね。

前置きが長くなりましたが、次回は、今回の申告書で追加になった区分についてお話しします。
posted by 岡本浩一郎 at 22:21 | TrackBack(0) | 税金・法令