2022年09月30日

非連続的な成長

今日で9月も終わり。弥生は9月決算ですので、今日でFY22が終わります。毎年思うことですが、FY22もあっという間でした。

弥生のFY22の最大のトピックと言えば、株主が変わったこと。案件自体は昨年の12月に発表されましたが、その後今年の3月に、株主が正式にオリックス株式会社から、グローバルな投資ファンドであるKKRに変わりました。私が弥生の社長を務めている間では3社目の株主となりますので、まあ慣れていると言えば慣れている(笑)のですが、それでもやはり一大事です。

投資ファンドが投資先企業の価値向上を図るアプローチには大きく二つあります。ひとつは、リストラクチャリング(事業の再構築)等を通じ、大幅なコストダウンを進め、収益性を回復するアプローチ。いわゆる「事業再生」です。もうひとつは、短期的な収益性を度外視してでも、成長に対し投資し、飛躍的な成長を実現するアプローチ。こちらは「非連続的成長」のアプローチと言えばいいのでしょうか。もちろん弥生とKKRの組合せは後者、すなわち、「非連続的成長」のアプローチです。ちなみに、縮むもあり、逆に大きくジャンプするのもありなのですが、逆に「ない」のは現状にとどまること。投資ファンドの世界では「現状維持」は許容されません。

これまでの弥生は、売上が若干の計画未達でも、利益が計画を達成していれば、概ねよしとしてきました。「自分の限界は自分が決める」からこそ、売上の計画は確実に達成できるものではなく、健全なストレッチが必要。逆にストレッチであり、チャレンジだから、結果的に若干の未達になってもやむを得ない。しかし、この考え方は変えるタイミングです。これまでKKRと議論を続けてきて、一番驚いたのは、「KKRとしては、売上アンダー/利益達成よりも、将来につながる形で利益アンダー/売上達成の方が良いと考えている」と言われたこと。これはかなり衝撃的でしたし、考え方を変えなければならないと痛感しました。

利益が計画を達成できない、それに対してどうするんだと詰められるのは結構辛いものです。私が弥生の社長に就任した直後にはそういった時期もありました(もう10年以上前ですし、それこそリーマンショックの中で世間全体としてそういった時期でした)。幸いにして、そういった時期は短期間で終わり、以降弥生は概ね利益計画を着実に達成してきましたし、結果的に株主からあまり詰められることはありませんでした(笑)。しかし、一方で、利益は一旦脇に置いていいから、もっと成長しようよと言われるのもこれはこれで大変です(苦笑)。むろん、成長に向けて取れる選択肢が増えること自体はとても有難いことですが、現実的には「やりたいのはやまやまだが、リソースの制約上難しい」となってしまいます。

しかし、せっかく成長に向けた強い援軍を得た訳ですから、これを活用しない手はありません。明日からのFY23に向けて、既に計画の策定を終えていますが、FY23の計画は、短期的な収益よりも、成長に向けた投資を色濃く反映しています。粛々淡々とできることをやるのではなく、どうすればできるかを徹底的に考え抜き、実行する。FY23は、弥生の飛躍的な成長に向けた明確な転換点となる年にしたいと思っています。
posted by 岡本浩一郎 at 18:38 | TrackBack(0) | 弥生

2022年09月27日

弥生PAPカンファレンス 2022 秋

前回はこの6月に開催した弥生の会計事務所パートナー(PAP)向けカンファレンス「弥生PAPカンファレンス 2022」の開催レポートをご紹介しました。開催してから約3ヶ月、開催レポート自体を公開してからも2ヶ月経っているので、本ブログでのご紹介が遅すぎるのですが、そこには一つ言い訳が。そうです、今日の話につなげようということで、本ブログでは紹介を温存していたのです(笑)。

ということで前置きが長くなりましたが、10月後半から11月後半にかけて、弥生PAPカンファレンス 2022 秋を開催します。今回も、リアル会場とオンライン配信のハイブリッド開催。リアル会場は前回同様、全国7会場、そしてオンライン配信も前回同様3回、合計10回の開催となります。これを10/20(木)の仙台会場に始まって、11/24(木)のオンライン配信(3回目)まで5週間で開催しますので、今年の秋も相当忙しくなりそうです。

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今回のPAPカンファレンスのテーマは何といってもインボイス制度への対応。6月のカンファレンスでもお話ししたテーマではありますが、(カンファレンス開催時点では)来年10月のインボイス制度開始まで1年を切り、いよいよ具体的な対応を決め、準備を進めるタイミングです。これまでにもお話ししているように、インボイス制度や改正電子帳簿保存法を、後ろ向きな法令改正として渋々最低限対応し、業務の煩雑さを許容するのか、あるいは、業務を圧倒的に効率化する好機として前向きな対応をするのかによって、事業者や会計事務所の業務は大きく変わります。今回のカンファレンスにご参加いただくことによって、事業者や会計事務所のオペレーションがどのようになるのか、具体的なイメージを持っていただけるようにしたいと考えています。

弥生PAPカンファレンスのご参加には事前にお申し込みが必要ですが、本日時点ではまだ全会場お申込みが可能です。ただ内情をお話しすると、10/20(木)の仙台会場および11/17(木)の広島会場については既に想定の集客目標を超えており、会場のレイアウト調整が始まっています。そういった意味では、早めにお申込みいただくのが吉かと。また全国(+オンライン)で皆さんとお会いできることを楽しみにしております。
posted by 岡本浩一郎 at 22:26 | TrackBack(0) | 弥生

2022年09月22日

弥生PAPカンファレンス 2022 開催レポート

今年6月に、弥生の会計事務所パートナー(PAP)向けに、弥生PAPカンファレンス 2022を開催しました。6/3(金)の札幌開催を皮切りに、25日間で全国7会場、さらにオンラインで3回開催ということで、6月はまさにカンファレンスで始まり、カンファレンスで終わったという感じでした。

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そのカンファレンス開催から早くも3ヶ月ほど経ってしまいましたが、弥生PAPカンファレンス 2022 開催レポートを公開しています。終わってから3ヶ月とは遅い!と思われるかもしれませんが、担当チームの名誉のためにお話しすると、実は開催レポート自体は7/15には公開を開始しています。そうです、単純に本ブログでお話しするのを怠っていたということです。申し訳ありません > 担当チームの皆さま。

開催レポートは、単純にビデオを公開するだけではなく、プレゼンのサマリーを書き起こしていますので、とりあえず内容をサッと確認していただくこともできるようになっています。もちろん、ビデオを一通りご覧いただければ、当日お話しした全てをご確認いただくことができます。また、PAP会員としてのログインが必要になりますが、カンファレンスで使用した資料をダウンロードいただくことが可能です。

それにしても、なぜこのタイミングでPAPカンファレンスの開催レポートの話をするのか、と不思議に思われるかもしれません。PAP会員の皆さまであればもうお気付きかとは思うのですが、その理由は次回に。
posted by 岡本浩一郎 at 18:47 | TrackBack(0) | 弥生

2022年09月20日

最近のトレーニング 2022/9

あと一ヶ月で私の今年2回目のトライアスロン大会となる千葉シティトライアスロン大会ということで、最近のトレーニングの状況を。もうお分かりだと思いますが、こうやってたまに本ブログで公開することで、自分自身を追い込んでいます(笑)。

今年1回目のトライアスロン大会は6/19の木更津トライアスロン大会でしたが、この大会前のトレーニングは、4月にスイムが10km、バイクが42km、ランが60.5km、5月はスイムが10km、バイクが62km、ランが62.0km。私のトレーニングの毎月の目安はスイム10km、バイクが40km、ランが50kmですから、ほぼ目安通り、若干+αという感じです。それでも本当に完走できるのかは不安だらけ。どんなに練習しても、これなら100%大丈夫とはならず、不安とワクワクの両方を抱えて大会に臨むことになりました。ただ、昨年の初挑戦と異なり、まずまずの体調で大会に臨むことができ、当日はそれなりに苦しみながらも、今年の目標であったオリンピック・ディスタンスの完走を達成することができました。

その後ですが、6月は大会出場分も含め、スイムが12km、バイクが100km、ランが62.6kmとペースを維持できました。完走という目標を達成し、少しスローダウンするかなと自分でも思っていたのですが、大会の翌週にはトレーニングを再開し、結果的にペースを守ることができました。トレーニングが習慣付いたということでしょうか。もっとも6月の末からは夏本番並みの暑さに苦しめられましたが(特にラン)。

続いて7月は、スイムが20km、バイクが82km、ランが108.0kmとかなりのハイペース。1月に続いて目安の倍を達成しました。くらくらする暑さの中、我ながらよく走ったと思います(朝一番や夜日が暮れてからなど少しでも走りやすい時間帯を狙いますが、それでも暑い…)。実のところ、この月にAppleWatchに課された月間チャレンジが「7月に259.9kmの距離を移動する(=ウォーク or ラン)」だったので、この月間チャレンジを達成しようと頑張った結果です(ちなみに1月もハイペースだったのは、月間チャレンジがアクティブエネルギーとして26,400キロカロリーの消費という高いゴールを何とか達成しようとした結果です、苦笑)。

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そして8月。夏休みもありましたが、スイムが21km、バイクが75km、ランが70.6km。夏休み中に海(といっても波がほとんどないラグーンの中)でガッツリと泳げたのは収穫でした。なかなか海で泳ぐ機会は多くないですからね。ということで、少なくとも目安+αでトレーニングを続けることはできています。タイムを競うのであればもっと練習すべきでしょうが、私の目標はあくまでも完走。まだひいひい言いながら、何とか完走を目指す状態なので、無理をせず、できれば楽しみながら完走できる体を目指したいと思います。

それにしても我ながらよくやるな、と思うのは、自分で設定した目標でなくても、目標を設定されるとそれを達成しようと頑張ってしまうこと。1月(アクティブエネルギーとして26,400キロカロリーの消費)と7月(259.9kmの距離を移動する)がいい例です。実は今月9月の月間チャレンジ(ムーブ/エクササイズ/スタンドの3つの目標を全て達成する日を月で25回)も結構大変な目標です。AppleWatchに追い込まれているな、と思うのは、「ここ数ヶ月間の平均が25日だったので9月も頑張りましょう」と目標設定されること。要は頑張れば頑張るほどハードルが上がっていくわけです(ちなみに3月も同じようなチャレンジでしたが、達成目標は18回でした)。それでも頑張れば何とか達成できる目標というのも小憎らしいところです(そのうち、ここ数ヶ月間の平均が31日だったので、9月も31日頑張りましょう、と不可能なことを要求されるかもしれませんが)。

目標があるとついつい達成しようと頑張るというのは決して悪い性向ではないと思うのですが、折角なのでトレーニング以外の領域でも発揮したいところです。例えばビジネスとか(笑)。ただビジネスの場合、一人で成し遂げられるものではないですし、目標の置き方がなかなか難しいですね。
posted by 岡本浩一郎 at 21:23 | TrackBack(0) | パーソナル

2022年09月16日

あと一ヶ月

今日からちょうど一ヶ月後の10/16に、私にとって今年2回目のトライアスロン大会、千葉シティトライアスロン大会が予定されています。

今年1回目は、6月に開催された木更津トライアスロン大会。初のオリンピック・ディスタンス(スイム1.5km、バイク40km、ラン10km)挑戦でしたが、無事に完走することができました。本当は今年2回目として、9月末に開催される横浜シーサイドトライアスロン大会に参加する予定でした。横浜シーサイドトライアスロン大会は最長でもスプリント・ディスタンス(スイム0.75km、バイク20km、ラン5km)。地元ということもあり、気軽に出場できる大会です。木更津でも2人の仲間がトライアスロン・デビュー(まずはリレーで)を果たしたのですが、横浜シーサイドトライアスロン大会でも新メンバーのデビューを予定していました。

横浜シーサイドトライアスロン大会の難点は実際に参加できるかどうかが抽選というところ(他の大会は先着順がほとんど)。ドキドキしながら抽選結果を待っていたのですが、結果発表の日、送られてきたメールはなんと「落選」。がーん。メールをよく見てみると、実はそもそも大会自体が中止ということでした。昨年の横浜シーサイドトライアスロン大会は私にとってデビュー戦となる予定だったのですが、残念ながら新型コロナウイルス禍で中止。結果的にその後に開催された千葉シティトライアスロン大会が私のデビュー戦になったという経緯があります。

今年こそはと意気込んでいたのですが、残念ながら今年も中止。新型コロナウイルスの感染には山谷がありますが、どのタイミングで谷となるのはなかなか予測が難しいですね。足元では収束傾向ですが、8月に判断せざるを得ないとなると中止はやむを得なかったのかと思います。非常に残念ではありますが、おそらくもっと残念に感じているのは大会関係者の方でしょうね。来年に期待しています。

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ということで、今年の第2戦であり、最終戦は、10/16(日)の千葉シティトライアスロン大会となりました。トライアスロン・デビューから数えれば3回目の大会。こちらは今のところ開催の予定ですし、直近の傾向的に感染状況も大丈夫ではないかと(希望的観測)。昨年の千葉シティトライアスロン大会は初の大会ということで、まずはスプリント・ディスタンスでした。今回はいよいよ2倍の距離となるオリンピック・ディスタンスです。とはいえ、6月の木更津でオリンピック・ディスタンスを完走できたため、大丈夫かな、という不安はかなり減りました。それでも泳ぎだした瞬間に、ああなんでこんな無謀なことをやっているんだ、と思ってしまうのですが(苦笑)。

私のトライアスロンの目標はまずは完走。とはいえ、多少なりとも成長していることを実感するためにも、少しずつでも自己記録の更新を目指したいと思います。残り一ヶ月、トレーニングも頑張ります。
posted by 岡本浩一郎 at 19:17 | TrackBack(0) | パーソナル

2022年09月14日

マーケット・フィット

本日よりオリックス株式会社が提供するオンライン融資サービスの商品性が大きく変わりました。これまでは、金額が最大300万円、期間が最長1年間といういわゆる少額短期の融資に限定されていましたが、本日より金額が最大1,000万円、期間が最長5年間(法人の場合)と、融資を受ける方からすると大きく改善されました。また金利についても、従来の2.8%〜14.8%に対し、本日から1.8%〜5.8%とこちらも大きく改善されました。今回の商品性改定によって、より多くの事業者の方にこれはいいね、と言っていただき、ご活用いただけるようになるのではないかと思います。

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オリックスのオンライン融資サービスは、もともとアルトアが提供していたサービスを昨年移管したものであり、これまでは、アルトア提供時の商品性を引き継いでいました。2017年12月にアルトアが営業を開始した際に、少額短期という商品性でスタートしたのには大きく二つの理由がありました。まず一つ目は、新たなマーケットを開拓したいという想いです。圧倒的な利便性を提供することによって、必要な分を必要なタイミングで借りることができるようにしたい。一方で、融資する側の観点からは、AIの活用によって審査コストを下げることによって、従来は難しかった採算性を確保できるようにしたい。もう一つの理由としては、スタートアップであるアルトアの体力的にそこまでリスクを取れないという現実もありました。融資をするというのはリスクをとることですが、リスクを分散するためには、一件当たりの融資金額を限定せざるを得ませんし、また、リスクを限定するためには、融資の期間も短期に限定せざるを得ませんでした。

結果としては、アルトアのオンライン融資サービスについて、利用いただいた方からは、非常に高い評価をいただけたものの、なかなか利用する方を期待ほどには増やせませんでした。

オンライン融資サービスは、もともと米国で広がってきました。米国では、日本と比べ、小規模事業者は金融機関からの融資を受けにくく、その代替としてオンライン融資サービスへのニーズが顕在化しました。これに対し、日本は、手間と時間はかかるものの、金融機関や(公庫などの)公的機関から(海外から見れば圧倒的に)低い金利で長期の融資を受けられる。要は市場の違いが厳然としてあり、その中でアルトアは日本の市場で受け入れられる商品性を目指したものの、十分ではなかった(= 訴求できる層が限定されてしまった)ということです。

アルトアのオンライン融資サービスの商品性がマーケットとフィットしていないということが見えてきても、スタートアップとしてはできることに限界がありました。そういった背景もあり、昨年、融資事業はオリックスに移管するという判断に至りました。融資を行う(=リスクをとる)部分はリスクを取ることが事業である金融機関に任せ、アルトアはAIによる審査システムを提供することに特化しようという判断です。

そして今回、関連するオリックスメンバーの多大な努力もあり、オリックスオンライン融資サービスの商品性を圧倒的に改善することができました。これによってようやくアルトアが目指すオンライン融資サービスの「マーケット・フィット」が達成できると考えています。新型コロナウイルス禍の影響はなくなった訳ではありませんが、with コロナを前提に新たな資金需要が生まれてきています。今回商品性が大幅に改善されたオリックスオンライン融資サービスはそういった需要にお応えできるのではないかと考えています。申込み自体はオンラインで10分もあればできますから、是非一度試していただき、その圧倒的な利便性を実感いただければと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 21:50 | TrackBack(0) | アルトア

2022年09月12日

価値算定

前々回前回と8月末にスタートした「弥生のあんしんM&A」についてお話ししました。弥生のあんしんM&Aは事業承継ナビの一部をなすサービスで、会社や事業を売りたいという人と、買いたいという人が、M&Aの相手を探すことのできる登録無料のマッチングプラットフォームです。

日本の中小企業・小規模事業者の経営者の高齢化が進む中で、事業承継は社会的な課題になりつつあります。経営者の引退 = 廃業となるのは、その事業のお客さまに直接影響を与えるだけでなく、それが積み重なれば日本経済全体への影響も無視できなくなります。一方で、事業を承継することによって事業を拡大したいという事業者も多く存在しますし、起業・開業の選択肢の一つとして、事業承継による起業・開業という可能性も存在します

つまり、事業承継には供給(経営者引退に向けた事業の譲渡)もあれば、需要(事業譲受による事業拡大、および起業・開業)も確実に存在します。しかし、難しいのは供給と需要を結びつけること。それを目指すのが弥生のあんしんM&Aです。

ただし、供給と需要を結びつけるというのは、単純にお互いに知る機会を作ればいいということだけではありません。事業を譲渡したいという人と、事業を譲り受けたいという人の間で、お互いにとって納得のできる事業譲渡価格を示すということも、マッチングプラットフォームとしての大きな役割です。

このため、弥生のあんしんM&Aでは、譲渡対象となる事業の価値を算定する価値算定書作成ツールというツールを提供しています。これは売上/利益や業種等の情報を入力すれば、複数のロジックに基づいた事業価値を算出し、それを価値算定書として作成することができるツールです。事業価値の算出には複数のロジックが存在し、どれかが絶対的に正しいということはありません。そのため、弥生のあんしんM&Aの価値算定書作成ツールでは、純資産法や類似業種比較法、DCF法など複数のロジックで事業価値を算出し、その横比較を可能にすることによって、より納得感のある事業譲渡価格を見出せるようになっています(もちろん、価値算定書作成ツールの結果はあくまでも参考情報であり、最終的に事業譲渡価格を決めるのは、事業を譲渡したい人であり、それに合意する事業を譲り受ける人です)。

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(この算定結果はサンプル・イメージであり、弥生のあんしんM&Aが想定している対象会社の規模からするとかなり高めの価値になっている点はご容赦ください。)

事業承継のM&Aは事業方針の継続、従業員の雇用など、価格だけで決まるものではありませんが、一方で譲渡価格が非常に大きなポイントであることも事実です。事業を譲渡したいという人と、事業を譲り受けたいという人の間で、お互いにとって納得のできる価格を見出すことができるように、価値算定書作成ツールをうまくご活用いただきたいと思っています。今後も、実際にご利用いただきながら、価値算定書作成ツールの改善を図っていきます。現時点では必要な情報を手で入力する必要がありますが、弥生が提供するツールだけに、将来的には会計データがあれば、ほとんどの入力が不要になるようにしなければならないと考えています。
posted by 岡本浩一郎 at 23:06 | TrackBack(0) | 弥生

2022年09月08日

事業のライフサイクル

前回は8月末にスタートした「弥生のあんしんM&A」についてお話ししました。弥生のあんしんM&A事業承継ナビの一部をなすサービスで、会社や事業を売りたいという人と、買いたいという人が、M&Aの相手を探すことのできる登録無料のマッチングプラットフォームです。

事業承継のためのM&Aマッチングの仕組みは、世の中に複数存在していますが、弥生のあんしんM&Aの最大の特徴はスモールビジネスに特化しているという点です。実際に弥生のあんしんM&Aのサイトを見ていただくと、(本日時点で)約40件の事業売却案件が登録されていることが確認いただけるかと思います。案件は当初は匿名化されているので、具体的にどの会社かということはわかりません(情報は所定の手続きを経て開示されます)。また、譲渡希望価格についても、要相談となっているケースの方が多いのですが、一部では金額が(あくまでも参考情報の位置づけですが)明示されている案件も存在します。中には譲渡希望価格が1,000万円や1,500万円という案件もあることがわかります。

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これは一般的なマッチングの仕組みではなかなか採算があわない(それがゆえに積極的に取り組めない)金額ですが、弥生のあんしんM&Aではこういった金額帯の案件こそお手伝いしたいと考えています。

その一つの理由は、弥生として、事業の譲受(買収)を起業・開業の一つのオプションとして確立したいと思っているからです。これまでにもお話ししている通り、弥生は起業・開業を支援しています。ただ、ここでいう起業・開業というのは必ずしも0からのスタートである必要はないと考えています。既に事業として確立しており、一定程度顧客基盤が確立した事業を受け継ぎ、それを発展させていくというのも、起業・開業の一つのオプションになり得るはずです。例えばですが、パン屋さんを開業したいという方にとっては、設備を0から揃え、お客さまの獲得も0からスタートするだけではなく、既に街に定着したパン屋さんを受け継ぐというのも有効なオプションなのではないでしょうか。

一方で、豊富な資金とともに起業・開業される方は僅かです。事業承継が一つのオプションと言っても、ポンと1億円を出して事業を買収できる人はごくごく限られるでしょう。それでも、例えば1,000万円だったらどうか。今はもうありませんが、かつては株式会社の最低資本金は1,000万円でしたから、起業・開業に向けて1,000万円を蓄えようというのは決して無理な要求ではないと思います。弥生は弥生のあんしんM&Aで、これから起業・開業される方にとっても選択肢となりうる規模の事業承継をサポートしていきたいと思っています。

さらに野望(笑)を言えば、起業・開業される方が事業を買収し承継する際に、金融機関から融資を受けることのお手伝いまでできればと思っています。もちろん起業・開業に向けて自己資金をしっかりと蓄え、準備することは必要です。ただ例えば、頑張って1,000万円を蓄えた、しかしそれを全額事業買収に使ったのでは、手元資金不足から事業の承継早々資金繰りに窮することになりかねません。このため、例えば1,000万円で事業を買収するとしても、自己資金は300万円、残りの700万円は金融機関からの借り入れで賄うという選択肢を提供できればと考えています。自己資金の一部は事業の資金繰りのためにしっかり確保しておくということですね。金融機関の観点でも、全く0ベースでスタートする事業よりも、既に存在している事業が裏付けとなっている方がより安心して融資ができるのではないかと思います。

夢を抱いての起業から、事業を継続し、成長させ、そしていつかは事業の廃業もしくは承継がやってくる。事業のライフサイクルが廃業で終わるのではなく、新たな起業家にバトンが渡ることによって、新たなライフサイクルにつながっていくよう、支援していきたいと思っています。
posted by 岡本浩一郎 at 21:19 | TrackBack(0) | 弥生

2022年09月06日

弥生のあんしんM&A

ちょうど一週間前となる8/30に、弥生は新サービス、「弥生のあんしんM&A」をスタートしました。弥生のあんしん M&Aは、会社や事業を売りたいという人と、買いたいという人が、M&Aの相手を探すことのできる登録無料のマッチングプラットフォームです。

お気付きの方も多いかと思いますが、この弥生のあんしんM&Aは、6月末にスタートした事業承継ナビの一部となるサービスです。事業承継ナビは事業者がどこかで直面する事業承継という課題について、「わかりやすく」「あんしん」「かんたん」に理解するためのサービスとお話ししましたが、実際にM&Aという形で第三者への事業承継を図る際に活用いただけるのが今回の弥生のあんしんM&Aです。

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弥生のあんしんM&Aの最大の特徴はスモールビジネスに特化しているという点です。事業承継のためのM&Aマッチングの仕組みは、これまでにも存在していますが、マッチング事業者の採算性の観点から、対象となるのは中小企業と言ってもそこそこの事業規模に限られていました。ボリュームゾーンで言えば、売上で数億円、毎年の利益もしっかり出ており、何千万円、何億円という値段がつく事業ということになります。

事業承継は日本経済にとって(一部には過大な表現もされているものの、現実問題として)大きな課題となりつつありますが、数が多い一方で特に難しいのは、小規模な事業者の事業承継です。だからこそ弥生は事業承継ナビを立ち上げた訳ですし、実際に事業承継を進めるためのプラットフォームとして立ち上げたのが今回の弥生のあんしんM&Aです。

弥生のあんしんM&Aのもう一つの特徴は、「あんしんエージェント」と呼ぶ弥生の会計事務所パートナーであり、M&Aの専門家が、M&Aの支援業務を行う点です。マッチングのコストを下げるためには、極力人手をかけずにマッチングが成立するようにしなければなりません。一方で、M&Aで扱うのは工場で生産され一定の品質が担保された製品ではありません。それぞれに想いがこもり、また、置かれた状況も千差万別の事業です。ですから、AIで全自動という訳にもいきません。やはり専門的な知見を活用することが必要です。弥生のあんしんM&Aでは、弥生の会計事務所とのパートナーシップを活用し、必要に応じて専門家のサポートが得られるようになっています。

事業承継ナビ立上げの際にもお話ししましたが、事業承継ナビにせよ、弥生のあんしんM&Aにせよ、取り組むべき課題に対し、スモールスタートに過ぎません。しかしそこに事業者の悩みがある以上、弥生として小さな一歩でもまず踏み出し、事業者の皆さまを支援していきたいと思っています。
posted by 岡本浩一郎 at 22:11 | TrackBack(0) | 弥生

2022年09月02日

雑所得にも特別控除?

事業所得か雑所得かの判断基準に関するパブコメは8/31で締め切りとなりました。パブコメを受けてどのような結論になるのか興味津々です。ただ、先週末の段階で既に4,000件超の意見が寄せられていたということで、整理するのも時間がかかりそうですね。

これまでにもお話しした通り、私自身としては今回の改正については全体としては賛成です。事業所得と雑所得の境界線が曖昧だった中で、一つの判断基準が示され、どちらに該当するかの予見性が高まることはプラスだと考えているからです。一方で、今回示された、主たる所得でなく、かつ、その所得に係る収入金額が 300 万円を超えない場合についてのみ、反証がない限り雑所得という基準に関して、反証となり得る事例を示すべきだとも考えています。例えば副業だが例年は収入300万円以上であり、社会通念上事業と称するに至る程度になっている方が、新型コロナウイルス禍など外的な要因により一過性で収入が300万円未満となった場合。この場合、外形的には今回の判断基準では雑所得となりますが、事業所得として扱うべきだと思いますし、それが明示されるべきだと考えています。

副業を推進しようという動きもある中で、収入金額が 300 万円を超えない場合(かつ有効な反証がない場合)に税金上のメリットがない雑所得になることに対する反対の声もあるようです(というか報道によれば、そういった声が大きいのかと思われます)が、それであれば、雑所得にも一定の税制上の優遇措置を設けるという方向もありえるのではないでしょうか。事業所得でなおかつ青色申告の場合、1) 青色申告特別控除、2) 損失の繰越、3) 損失の他の所得との通算というメリットがありますが、例えば、雑所得についても一定の条件の下で特別控除を認める(逆に3)は認めない)という考え方もあるのではないかと思います。

以前お話ししましたが、業務に係る雑所得について、今年(2022年分、令和4年分)分の所得税(=来年の確定申告)から求められることが格段に増えています。まず業務に係わる収入が300万円を超えた場合には、領収書等の保存が義務化されます(ただし、逆に言えば、300万以下であれば領収書の保存すら求められないわけですから、雑所得と、帳簿の作成と証憑の保存が求められる事業所得とは大きく性格が異なることがわかるかと思います)。また、業務に係わる収入が1,000万円を超えた場合には、確定申告書とともに収支内訳書を作成し、提出することが義務付けられます。

上記も踏まえ、収入に関わらず、業務に係わる雑所得について、収支内訳書を作成し提出した場合には、特別控除として一定額の控除を認めるというのはどうでしょうか。収支内訳書は、もともと事業所得の白色申告の際に作成するものです。事業所得の白色申告について、2014年分から帳簿付けが義務化されていますが、これと足並みをそろえ、事業所得の白色申告および業務に係わる雑所得ともに、帳簿付けをして収支内訳書を提出すれば特別控除が認められるとなれば、やる気もおきるのではないでしょうか。

特別控除が認められるということは、納税者にとっては節税になるわけですから、国の税収としてはマイナスになるのではないかと思われるかもしれません。ただ、帳簿があることによって、より確からしい申告が可能になるわけですから、全体としては納税者も嬉しいし、国としても嬉しいとなり得るのではないかと思います。立場的に我田引水と見えるかもしれませんが(笑)、正しく帳簿を付けて正しく申告する人がトクをする仕組みのお手伝いをしたいと思っています。
posted by 岡本浩一郎 at 19:23 | TrackBack(0) | 税金・法令