前回お話しした事業所得か雑所得かの判断基準に関するパブコメの結果ですが、個人的にはかなりの驚きでした。もともと多くの意見が寄せられており、また大半が改正反対の趣旨の内容であったという報道から、ある程度の見直しはされるものとは思っていましたが、ここまで大幅な見直しになるとは思っていませんでした。 しかし、実のところ、今回の見直しに通じる提言を本ブログで行っていました。既にパブコメの募集自体は締め切った後ですが、9/2の本ブログで「雑所得にも特別控除?」というタイトルで、ちょっとした提言を行いました。以下、引用です。 副業を推進しようという動きもある中で、収入金額が 300 万円を超えない場合(かつ有効な反証がない場合)に税金上のメリットがない雑所得になることに対する反対の声もあるようです(というか報道によれば、そういった声が大きいのかと思われます)が、それであれば、雑所得にも一定の税制上の優遇措置を設けるという方向もありえるのではないでしょうか。事業所得でなおかつ青色申告の場合、1) 青色申告特別控除、2) 損失の繰越、3) 損失の他の所得との通算というメリットがありますが、例えば、雑所得についても一定の条件の下で特別控除を認める(逆に3)は認めない)という考え方もあるのではないかと思います。
以前お話ししましたが、業務に係る雑所得について、今年(2022年分、令和4年分)分の所得税(=来年の確定申告)から求められることが格段に増えています。まず業務に係わる収入が300万円を超えた場合には、領収書等の保存が義務化されます(ただし、逆に言えば、300万以下であれば領収書の保存すら求められないわけですから、雑所得と、帳簿の作成と証憑の保存が求められる事業所得とは大きく性格が異なることがわかるかと思います)。また、業務に係わる収入が1,000万円を超えた場合には、確定申告書とともに収支内訳書を作成し、提出することが義務付けられます。
上記も踏まえ、収入に関わらず、業務に係わる雑所得について、収支内訳書を作成し提出した場合には、特別控除として一定額の控除を認めるというのはどうでしょうか。収支内訳書は、もともと事業所得の白色申告の際に作成するものです。事業所得の白色申告について、2014年分から帳簿付けが義務化されていますが、これと足並みをそろえ、事業所得の白色申告および業務に係わる雑所得ともに、帳簿付けをして収支内訳書を提出すれば特別控除が認められるとなれば、やる気もおきるのではないでしょうか。
この内容自体は、あくまでも雑所得に関する提言で、雑所得にも一定の特別控除を認めたらどうか、というものです。これは今回の見直しとは異なりますが、注目いただきたいのは、この際に想定していた条件です。そう「帳簿付けをして収支内訳書を提出すれば」としています。要は白色申告と同様な条件で、雑所得に特別控除をという提言だったわけですが、今回の見直しでは、これが雑所得ではなく、事業所得として認められ得る条件として明らかにされた訳です。私の提言が今回の見直しに何ら反映されている訳では(当然)ないのですが、帳簿付けの価値を認めているという意味では、通じる部分があるのではないかと思います。
私の提言では、最後に「立場的に我田引水と見えるかもしれませんが(笑)、正しく帳簿を付けて正しく申告する人がトクをする仕組みのお手伝いをしたいと思っています。」と書きました。正直、今回の見直しは我田引水というよりは、漁夫の利です。帳簿付けの価値が示された訳ですから。
ただ、漁夫の利と書きましたが、弥生の存在価値が示されたという意味での「利」はありますが、実際問題として、(少なくとも直接的には)「利」はありません。なぜならば、やよいの白色申告 オンラインのフリープランであれば、ずっと無料だからです。少々宣伝になりますが(笑)、やよいの白色申告 オンラインであれば、帳簿付けから確定申告まで全ての機能がずっと無料で使えます(実際にやよいの白色申告 オンラインをご利用の方のほとんどはフリープランを選ばれています)。 やよいの白色申告 オンラインは、もともと2014年1月に白色申告でも帳簿付けが義務化されるのにあわせ提供を開始しました。新たに多くの方が帳簿付けをしなければならない中で、その受け皿を提供したいという想いから生まれたサービスです。今回の見直しを受け、晴れて事業所得として認められるために、やっぱりちゃんと帳簿付けをしなければという方も増えるのではないかと思いますが(注)、やよいの白色申告 オンラインで、しっかり支えたいと思います。 弥生にとっての本当の漁夫の利という意味では、その先は、できれば事業規模を着実に伸ばしつつ、青色申告にチャレンジしていただければと願いつつ(笑)。
(注) ただし前回お話ししたように、「事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかにより判定する」という原則は変わりませんから、帳簿を作成し、保存していれば事業所得になり得ますが、だからといって必ず事業所得と認められるわけではありませんので注意が必要です。
posted by 岡本浩一郎 at 21:33
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