2023年01月25日

スマート証憑管理(その3)

これまでにもお話ししてきたように、弥生は、インボイス制度と改正電子帳簿保存法に対応し、業務のデジタル化を促進する新サービス「スマート証憑管理」を1/5に正式リリースしました。

スマート証憑管理は、請求書や納品書、領収書など、事業者が受領する、そして発行する証憑を一元管理できる仕組みです。ただ、この際に、画像データではなく、構造化されたデジタルデータとして一元管理できることがポイントです。画像データは、画面に表示し目で確認することはできますが、そのままでは後続業務には活用できません。これに対し、スマート証憑管理では、構造化されたデジタルデータを活用し、後続業務をデジタルの力で効率化することができます。

このためには、紙やPDFで証憑を受領した際に、そこから重要であり管理が必要な情報(いわばメタデータ)を抽出する必要があります。スマート証憑管理ではAI-OCRによって、証憑上の金額はもちろん、証憑番号、発行日、取引日、取引先名、登録番号、消費税率など様々な情報をデジタルデータとして抽出することができます。

では、これらメタデータを何に活用するのか。わかりやすい部分では、検索が可能になります。画像データのままでは、「弥生商会」からの請求書を検索するといったことはできませんが、メタデータがあればそれをもとに検索が可能になります。ただ、それでは十分なメリットとは言えませんし、業務効率化というのもちょっと無理があります。確かに検索できるに越したことはありませんし、特に税務調査の際に税務署の方には重宝されるでしょう(実際問題として電子帳簿保存法でこういった検索性が求められているのはそのためです)。ただ、日頃会計業務を行っている側としては、そこまで嬉しい話ではありません。

一方で、これらメタデータを活用することで、仕訳を入力するという作業がなくなったらどうでしょう。それであれば今必要な作業がなくなる訳ですから、メリットを実感できますし、明らかな業務効率化が実現します。スマート証憑管理が実現するのは、仕訳入力を不要とすることによる業務効率化です。

具体的には、メタデータとして管理される日付や金額といった情報から、仕訳を自動生成します。でもちょっと待ってください。仕訳と言えば勘定科目。勘定科目はどのように特定するのでしょうか。実はこれは、弥生がこれまでにも提供してきているスマート取引取込の推論エンジンを活用します。スマート取引取込では銀行のインターネットバンキングの明細を取込み、これをもとに仕訳を自動生成します。この際には、明細上の摘要情報をもとに勘定科目を推論しますが、この仕組みをスマート証憑管理でも活用します。

この仕組みは2014年から提供していますが、2021年にはそれまでのベイズ推定による推論からニューラルネットワークによる新しい推論エンジンに大幅リニューアルしました(詳細はこちらをどうぞ)。前回、スマート証憑管理で採用したOCRエンジンはAI-OCRであり、AI(人工知能)を活用することによって、文字認識の精度を向上させたOCRエンジン、とお話ししましたが、画像からメタデータを抽出する際にも、そしてそのメタデータから仕訳を生成する際にも、AIが活用されているのです(当然それぞれ別個のAIエンジンになります)。

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自動生成された仕訳は、弥生会計の仕訳日記帳などの画面で確認することが可能です。またこの際、この仕訳のもととなっている取引の内容を確認したいという場合には、仕訳日記帳上の証憑ビューアーのボタンをクリックしていただければ、その証憑の画像イメージをその場で確認することが可能です。画像からメタデータを経由して仕訳が自動生成される訳ですが、同時に、自動生成された仕訳から遡って画像を確認することもできる訳です。仕訳からもとになった取引の証憑を確認できる機能は2021年に会計事務所向けにリリースした記帳代行支援サービスで提供を開始したものですが、とても好評です。

スマート証憑管理は、その名の通り、証憑を一元管理できる仕組み。ですが、その本当の狙いは、証憑から仕訳を自動生成し、記帳業務を圧倒的に効率化することにあります。
posted by 岡本浩一郎 at 18:10 | TrackBack(0) | 弥生