2023年01月27日

スマート証憑管理(その4)

これまでお話ししてきたスマート証憑管理は、請求書や納品書、領収書など、事業者が受領する、そして発行する証憑を一元管理できる仕組みです。一元管理といっても、画像データだけでなく、構造化されたデジタルデータを一元的に管理できることがポイントです。画像データは、画面に表示し目で確認することはできますが、そのままでは後続業務には活用できません。これに対し、スマート証憑管理では、構造化されたデジタルデータを活用し、後続業務をデジタルの力で効率化することができます。

具体的には、紙やPDFで受領した証憑から、AI-OCRという機能によって、証憑上の金額はもちろん、証憑番号、発行日、取引日、取引先名、登録番号、消費税率などの情報をデジタルデータとして抽出します。これらは、重要であり管理が必要な情報(いわばメタデータ)と位置付けられます。次に、このメタデータに基づいて、仕訳を自動生成します。この際、仕訳に必要な勘定科目については、弥生がこれまでにも提供してきているスマート取引取込のエンジンを活用し推論します。自動生成された仕訳は、弥生会計の仕訳日記帳などの画面で確認することが可能になります。また、自動生成された仕訳から証憑の画像を遡って確認することもできます。

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スマート証憑管理の本当の狙い。それは、証憑を管理して終わるのではなく、証憑から仕訳を自動生成し、記帳業務を圧倒的に効率化することにあります。これまでの会計ソフトのメインの画面は仕訳入力画面。仕訳をいかにサクサクと入力できるかが会計ソフトの評価を左右してきました。しかし、インボイス制度を機に、会計ソフトのメインとなる画面はこのスマート証憑管理になると考えていきます。手での仕訳入力から、スマート証憑管理での証憑の確認・自動仕訳に。

一方で、紙やPDFで受領した証憑では自ずと限界があります。なぜならば、AI-OCRによって、日付や金額等のメタデータを抽出する訳ですが、この精度は100%ではないからです。AI-OCRはAIを活用することによって、文字認識の精度を向上させているとお話ししましたが、それでも100%にはなりません。これまでお話ししたように、税率ごとの対価の額と税率ごとの消費税額の整合性などの検算も行うことによって、AI-OCRの読み取りエラーを検知し、可能な範囲で補正する仕組みも実装しています。それでも、100%ではない以上、人の目による確認は必要になります。

人の目による確認が必要になる以上、記帳業務を効率化することは可能ですが、それが「圧倒的」な効率化と言えるかどうかは微妙なところです。それでは、記帳業務を「圧倒的に」効率化するためにはどうすればいいのか。

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その解になるのが、「ボーン・デジタル」、最初からデジタルという発想です。「発生源で生まれたデジタルデータは、業務プロセス全体を通じて一貫してデジタルとして取り扱う。事業者内、さらに事業者間の業務プロセスにおいて、紙などのアナログを経ず、一貫してデジタルとして取り扱う」。これは社会的システム・デジタル化研究会が提言してきていることです。(さらに続く)
posted by 岡本浩一郎 at 16:23 | TrackBack(0) | 弥生