2023年03月17日

やり残したこと

道は永遠に平坦にならない。山を越えればまた山。弥生にとっての山道はまだまだ続くわけですが、正直にいってやり残したことも、それこそ山ほどあります。

代表的なところでは、弥生シリーズのさらなる進化。弥生シリーズには、デスクトップアプリ(現行は弥生 23 シリーズ)とクラウドアプリ(弥生オンライン)があります。位置付けとしては、さくさく使え、機能も充実しており、税理士といったプロにもご満足いただけるデスクトップアプリに対し、気軽に使い始めることができ、誰でも簡単に使えるクラウドアプリといった(あくまでも目安ですが)違いがあります。15年前には影も形もなかった弥生オンラインを0から立ち上げ、多くの方にご利用いただけるようになったことは大きな成果だと思っています。特に個人事業主の方を中心に、今や新規ユーザーはクラウドアプリの方がデスクトップアプリを上回るようになっています。

お客さまは多様であり、そのニーズも多様。その多様なニーズにお応えできるよう、デスクトップアプリとクラウドアプリという選択肢を提供する。ただ、実はこれは、これまでの技術の限界の裏返しでもありました。これまでの技術では、さくさく使え、機能も充実しており、税理士といったプロにもご満足いただける、ということと、気軽に使い始めることができ、誰でも簡単に使える、ということを両立させることができませんでした。しかし技術は着実に(というよりは加速度的に)進化しています。技術の進化とともに、将来的には、デスクトップアプリとクラウドアプリを一本化し、誰でもが気軽に使え、さくさくと動き、同時にプロにもご満足いただける機能を提供できる次世代の弥生シリーズを提供していきたいと考えています。

実は、昨年リリースしたリニューアル版のやよいの給与明細 オンラインはその嚆矢となる存在です。お話しした通り、リニューアル版のやよいの給与明細 オンラインは、これまでとは全く異なる新しいクラウドプラットフォームを採用しています。ただ、現状では弥生が提供する価値領域のほんの一部が次世代に進化したに過ぎません。カバーする領域を広げ、何より、これであればプロでも使えるとお墨付きをいただけるようにしなければなりません。これにはまだ一定の時間はかかりますし、結果的にやり残したところということになります。

あるいは、お客さまからは直接的には見えない弥生の土台となるシステムの進化。弥生では基幹システムとして、2007年に導入した販売管理システムを利用しています。一方で、サブスクリプションビジネスに最適化されたZuoraというシステムの導入も進めてきています。つまり現状では二つの基幹システムを併用しているということです。これもZuoraに一本化していくということで、その移行は徐々に進んできています。ただ、これも道半ば(正確にいえば半ばというよりは後半戦ですが)。やはりやり残したところです。

他にも色々とやり残したことはありますが、最大はやはりアルトアです。データとAIで金融のあり方を変える。やればやるほど、これは間違いなく金融のあり方を変えるとの確信は強まっています。そして今年10月からのインボイス制度を契機にしたデジタルインボイスの普及など、価値を生む源泉となるデジタルデータも着実に広がっていきます。金融機関へのサービス提供(Lending as a Service, LaaS)は、オリックスりそな銀行と進んできており、次の案件も秒読み段階(希望的観測)です。ただ、少なくとも現時点においては、ビジネスとして自立し、継続的な成長の目処が立ったかというと、それはまだであると言わざるを得ません。

やっぱりこう書いてくると、卒業していいのだろうかと思ってしまいます。本当にいいのだろうか。迷いがないといえば嘘になります。確かにやり残しはあります。ただ、全くの未着手というのは流石にありません。それぞれに着実に前進し、案件によって、芽吹き始めたところか、蕾が膨らんできているところかという差はあれども、やがては大輪の花が咲くでしょう。もちろん、自らの手で花を咲かせたいという想いもあるのは事実ですが、弥生にしてもアルトアにしてもGoing concernとして続いていくためには、どこかでバトンを渡さなければならない。それがいつなのか。もとより最初から決まった正解はありません。予め決まった正解はない以上、正解を選ぶのではなく、自分たちの行動によって、正解にするということなのだと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 12:38 | TrackBack(0) | 弥生