2014年10月27日

G型L型と弥生会計

思わぬところで名前を取り上げられたシリーズの第2弾です(いや、シリーズのつもりではなかったのですが)。ただ、今回名前が取り上げられたのは、私ではなく、弥生会計。

ここ数日ほど、G型L型というキーワードとともに、弥生会計の名前がポツポツ出てきます。ソースをたどってみると、「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議」の第1回(10/7開催)で、委員である株式会社経営共創基盤の冨山さんの資料(pdf)が出元のようです。

具体的には資料を見て頂いた方がいいと思うのですが、かいつまんでご紹介すると、日本経済をグローバルに伍して戦うGの世界(グローバル経済圏)とLの世界(ローカル経済圏)に分けて、それぞれの目指すべき姿を考えるべき。そのためにも、高等教育機関(≒大学)も、皆がGの世界を目指すのではなく、むしろ多くはLの世界で、いかに労働生産性を上げるかに特化すべき。例えば、L型大学の経済・経営学部で教えるのは「マイケルポーター、戦略論」ではなく、「簿記・会計、弥生会計ソフトの使い方」であるべき、という内容です(「」内は原文のまま)。

これは刺激的ですね… 経済・経営学部に簿記・会計、弥生会計ソフトの使い方というのはまだしも、法学部は「憲法、刑法」ではなく、「道路交通法、大型第二種免許・大型特殊第二種免許の取得」というあたりは、正直喧嘩を売っているような気もします(笑)。せめて、「労働基準法や知的所有権」あたりであれば良かったような気がします。

かなり刺激的な物言いであることは事実だと思いますが、仰っていることには共感します。資料中には、「筆者が卒業したスタンフォードビジネススクールのMBAプログラムでさえ、その本質は高級職業訓練校(言わば高級簿記学校)に過ぎない!」とありますが、私が卒業したUCLAのビジネススクールも全くその通りです。研究して新たな戦略論を生み出すというよりも、会計の基礎から始めて、既に存在している事例を学ぶことによって、様々な経営上のツールを使いこなせるようにするのが主眼です(念の為ですが、博士課程は全く異なります)。

また、実学志向ですから、教員も純然たるアカデミックキャリアだけではなく、実務経験者も多くいます(もっと言えば、教授をやりながら、ファンドの運用をしたりなど、アカデミックと実務の二足のわらじも珍しくありません)。下手な研究志向教員よりは、経験豊富な実務経験教員の方が人気があったりします。職業訓練校として象徴的なところでは、履歴書の書き方講座すらあります(ただし、これは正規のクラスではなく、キャリアセンターというところで、そういったレッスンがあります)。

弥生でも、起業する方を応援するために、起業教育のお手伝いを(力不足ながら)行っているのですが、大学の場合、どうしても実学ではなく、アカデミックに偏りがちという印象は持っています。起業教育というと、頑張ってビジネスプラン作成までで、ではそのプランをどう実践するか、まで至りません。事業をする上で一番大事なこと(夢や情熱は当然大事として)は、おカネの管理ですが、大学ではそこをあえて避けて通ってしまっているようにも感じます。

最も、大学も色々とあります。弥生では、実際に弥生会計を利用して簿記・会計を教える教育機関向けに、「弥生スクール」という制度をご用意しています。多いのは、商業高校などですが、大学の授業で弥生会計を取り入れているケースも存在します(ここに一部のリストがありますが、弥生スクール全体では職業訓練校なども含め300校以上にご利用頂いています)。

私としては、マイケルポーターや戦略論が不要とまでは言いませんが、やはり、事業をする上でも、会社に勤める上でも欠かせない簿記・会計がまず必要だと思います。もちろん、その際に弥生会計を利用して頂くことは大歓迎(高等教育機関の皆さま、弥生スクール制度を是非ご活用下さい)。

ちなみに冨山さんはBCGマフィアの一員ですが、私は一度か二度しかお会いしたことがないので、私を気遣って資料に弥生会計を盛り込んだ、ということはないと思います。念の為。今回の資料もそうですが、「歯に衣を着せず」という表現がピッタリ。とはいえ、先ほどのL型大学で学ぶべき内容には、あくまでも(例)と書いてありますし、あえて刺激的な発言をすることによって、まずは問題意識を持ってもらい、キチンと議論しようということかと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 23:22 | TrackBack(0) | 弥生
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