前々回に、年末調整には欠かせない書類である「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」、通称、マル扶でマイナンバーの記載を省略できる方法が二つあるとご紹介しました。二つのうち、一つ目の方法、すなわち、予め別の方法で従業員等のマイナンバーを収集しておいた上で、従業員が扶養控除等申告書の余白に「マイナンバー(個人番号)については給与支払者に提供済みのマイナンバー(個人番号)と相違ない」旨記載する方法を推奨するとも。
この方法について、若干の補足です。この方法の詳細については、国税庁が提供しているこちらのFAQが詳しいのですが、大きく以下の4つの要件があります。
1) 事業者(給与支払者)と従業員との間での合意があること
2) 事業者(給与支払者)が、従業員から既にマイナンバーの提供を受けていること
3) 従業員が扶養控除等申告書の余白に「マイナンバー(個人番号)については給与支払者に提供済みのマイナンバー(個人番号)と相違ない」旨を記載すること
4) 事業者(給与支払者)は、既に提供を受けている従業員等のマイナンバーを確認し、確認した旨を扶養控除等申告書に表示すること
2) 事業者(給与支払者)が、従業員から既にマイナンバーの提供を受けていること
3) 従業員が扶養控除等申告書の余白に「マイナンバー(個人番号)については給与支払者に提供済みのマイナンバー(個人番号)と相違ない」旨を記載すること
4) 事業者(給与支払者)は、既に提供を受けている従業員等のマイナンバーを確認し、確認した旨を扶養控除等申告書に表示すること
この要件について、実務レベルでどのような対応が可能か、税務署や内閣官房に確認しました。まず、1)の合意ですが、事業者から従業員への一方向の通知で合意とすることができるとのこと。つまりマル扶の記入を従業員に周知する際に、マイナンバーの記載を不要とすることを通知すればokということになります。
次に2)ですが、これは、いわゆるマイナンバーの収集方法になります。既に済ませている事業者の方も多いと思いますが、これからという場合には、色々と注意事項がありますので、弥生が提供している「よくわかる事業者のためのマイナンバーガイド」(pdf)のP25以降をご参照下さい。
実際にマル扶の記入の際に必要になるのは3)になりますが、これは必ずしも従業員の直筆である必要はないということです。従業員が多い場合には、この文言の判子を作って、会社で押してからマル扶を配布することも可能ということになります。あるいは、マル扶にこの文言をプレ印字して配布することも可能です。まもなく提供する弥生給与/やよいの給与計算の平成28年分年末調整機能では、開発期間の関係からこのプレ印字の機能は提供していませんが、今後という意味では、ソフトでプレ印字したものを配ることが中心になるかもしれません。
なお、「マイナンバー(個人番号)については給与支払者に提供済みのマイナンバー(個人番号)と相違ない」という文言ですが、マイナンバーの欄ではなく、余白に記載するということに注意が必要です。これはマイナンバーの記載が省略されたマル扶について、税務署長から提出を求められた場合には、事業者がマル扶に従業員等のマイナンバーを付記して提出する必要があるためです。つまり、後で記入ができるよう、マイナンバーの欄は空けておかなければならないということですね。
最後に4)で、確認した旨を扶養控除等申告書に表示することとありますが、「マイナンバーを確認しました」と書かなければならない訳ではなく、何かしらのチェックの印があれば十分ということなので、「マイナンバー(個人番号)については給与支払者に提供済みのマイナンバー(個人番号)と相違ない」という文言の横に、チェックマークを記入するだけでも大丈夫のようです。
マイナンバーの実務での運用はほぼ初めてということで、試行錯誤というのが正直なところ。正直ベースで言えば、対応するソフトを作る上でも、弥生も同様な試行錯誤状態です(苦笑)。いずれは運用も定着し、ソフトがカバーできる部分も増えてくるものと思いますが、まずは、上記の情報も参考にして頂き、できるだけ簡易な方法で対応を進めて頂ければ幸いです。