今年の確定申告も締切(3/15(木))前の最後の週末が終わり、最終コーナーを回って最後のストレートというところでしょうか。弥生のお客さまの利用状況からも、無事に完了した方が一気に増えたことがわかります。利用状況を分析すると、青色申告の方は比較的早めに始めて余裕をもって終わる方が多い一方で、白色申告の方はギリギリねばって締切間際に一気に終える方が多いといった傾向(あくまでも傾向ですので、個々人はかなりばらつきますが)が見えます。
終わった方はお疲れ様でした & まだ終わっていない方はもう一頑張り、まだまだ応援しています!
さて、確定申告ネタということで、ふるさと納税のお話を少々。ふるさと納税というと盛り上がるのは年末にかけてですが、実際に節税メリットを享受するためには、(ワンストップ特例の適用を受けない限り)確定申告が必要になります。
確定申告では、寄附した金額を申告する訳ですが、実はもう一点考慮が必要なポイントがあります。それは多額の寄附を行い、またそれに伴って多額の返礼品を受け取った場合に、一時所得の申告が必要になるということ。例えば、2万円のふるさと納税を行い、1万円(相当)の返礼品を受け取った場合、この1万円が一時所得に該当するということです。
ただし、申告時に一時所得の金額を計算するにあたっては、
一時所得の金額 = [A: その年中の一時所得に係る総収入金額] - [B: その収入を得るために支出した金額の合計額] - 50万円
という計算式になっており、返礼品の合計額(およびその他の一時所得)が特別控除額である50万円を超えない限り、課税対象にはなりません(なお、返礼品の贈与は寄附の対価としてではなく別途の行為として行われていると位置付けられますので、寄附金は上記の計算式のBには該当しません)。仮に寄附金に対する返礼品の割合が50%だとすると、100万円寄附してようやくこのラインに達しますので、対象となる方は限られるものと思います。ただし、満期保険金を一時金で受領したなどの場合には、これも一時所得となり、あわせて50万円の特別控除額を超えるかどうかの判定になります。つまり、他に一時所得があった場合には、ふるさと納税の返礼品がそれほど大きな金額ではなくても、結果として特別控除額を超え、申告が必要になる可能性もありますので、要注意です。
一方で、一時所得として申告が必要になりうるほどに返礼品が出されるのは、どうなの、という論点もあるでしょう。これだけふるさと納税が広がってきた背景には返礼品の存在があるのは間違いないことだと思います。私自身もふるさと納税をする中で、まずは震災復興のための寄附を優先して行いますが、ここ数年は返礼品目当てのふるさと納税も行うようにしています。そういった中で、どういった自治体にどういった名産品があるのかを知るようになった(そして実際に、体感するようにもなった)ことは間違いなくふるさと納税のメリットだと思います。
一方で、ふるさと納税が返礼品競争に陥り、単なるお得なネット通販になりつつあるというのもまた事実です。この総務省のサイトでは、ふるさと納税の実績や各種の調査、自治体に向けた通知などが時系列でまとめられていますが、ふるさとに関心を持ってもらえるという「光」の面と、返礼品競争に陥っている/陥りかねないという「陰」の面のせめぎ合いが垣間見えます。
直近では昨年の4月1日に総務大臣名で、ふるさと納税の趣旨を鑑み、金銭類似性の高い返礼品や資産性の高い返礼品を「送付しないようにすること」、また、返礼割合については、「社会通念に照らし良識の範囲内のものとし、少なくとも、返礼品として3割を超える返礼割合のものを送付している地方団体においては、速やかに3割以下とすること」とかなり踏み込んだ(自治体向けの)通知が行われています。
あくまでも個人的な見解ですが、納税者の立場からすると、制度として認められている以上、返礼品の最大化を図ることは合理的なことだと思います。もちろん、ふるさと納税の趣旨に鑑み、ふるさとを応援することが大事ですし、その中で、特に災害復興などについては、返礼品がなくても優先させるべきだと思いますが。
納税者側の合理的な行動は変えられない以上、やはり自治体側で返礼品競争に歯止めをかけるべきですし、その観点からは、実質的な返礼品3割規制も、妥当なことだと思います。ふるさと納税がこれ以上過熱し、弊害ばかりが見えるようになってどこかで揺り戻し(極端な場合、制度の廃止)が避けられなくなるまで放置するのではなく、徐々に徐々に制度としてあるべき姿を目指していくべきだと考えています。今回は3割という通知が行われた訳ですが、これが段階的に2.5割、2割…となっていく、また、所得の高い人ほど、累進的にふるさと納税の枠が大きくなる仕組みも、どこかで見直しが必要でしょう。同時に、返礼品ではなく、集まった寄附をどのように使うのかにより注目が集まるようになっていくようになっていく。そうやって、一定の時間はかかりながらも、本当の意味でのふるさと納税になっていくのではないかと思います。