2018年07月20日

キャッシュレス化のカベ

APIの話とキャッシュレスの話を行ったり来たりしていますが、今日はキャッシュレスについて。前回は、キャッシュレス化の意義についてお話ししました。キャッシュレス化の意義の一つは社会的なコストを下げること。そしてもう一つの大きな柱は、キャッシュレス化によって、データを収集し、新たな価値を生み出すこと。

だからこそ、キャッシュレス化を推進すべき。この方向性自体には私は全く異論ありません。ただ、その方法論となると、なかなか一筋縄ではいかないと考えています。よく言われることとして、日本ではクレジットカード(や電子マネー等)が使えないお店が多い、だからキャッシュレス化が進まない。これを打破するために、キャッシュレス支払いを処理する端末(CAT端末など)の導入費用を補助し、お店のクレジットカード等の受け入れを促すべき、といった議論があります。

このロジック自体、必ずしも間違ってはいないと思いますが、それだけで全てが解決するほど単純ではありません。

確かにカード等を使えない店舗の存在がキャッシュレス化へのハードルとなっているのは事実ですが、一方、カード等を使える店舗でも現金を選ぶお客さまが相当に多いという現実を無視するわけにはいきません。代表例が百貨店ですが、一般的に百貨店はクレジットカード支払いができるようになっていますし、種類にはよりますが、電子マネーを利用できることも珍しくはありません。つまり、キャッシュレス・レディー。にもかかわらず、現金で支払う方が多い。その理由は様々でしょう。現金に対する信頼か、拘りか、あるいは、キャッシュレスに対する不安なのか抵抗感なのか、はたまた、単純にこれまでの習慣を変えたくないのか。

これらの消費者側のカベに向き合わないことには、キャッシュレス化が大きく進むことはないでしょう。

同時に、店舗側のカベにも向き合う必要があります。店舗側のカベは、クレジットカード支払いを受けられる店舗であっても、現実には現金払いを好むという事実。よくありますよね。ランチは現金支払いのみとか、このお得なプランは現金払いに限るとか。店舗側の事情もよくわかります。クレジットカードの取扱手数料は一般的に3%前後と言われますが、特に利幅の薄い業態において、決して無視できないコストです。また、資金繰りの面でも現金で払ってもらった方が有利。こういった事情がある中で、単純にCAT端末の導入費用の補助を行っても、CAT端末自体は導入されるかもしれませんが、実際のキャッシュレス支払いは進みません。

今後キャッシュレス化を推進する上では、こういったカベに対する打ち手を積み重ねる必要があります。難しいのは、消費者側のカベに対する打ち手が、結果的に店舗側のカベを高くすることにつながりかねないということ。

消費者側のカベを崩すための一つの打ち手として、ポイントのようなインセンティブを強化することが考えられます。クレジットカード払いであれば、x%分のポイントが溜まるといったような。1%でもチリが積もれば山となるですが、これが例えば5%や10%になれば、クレジットカード払いを選ぶ消費者は確実に増えるでしょう。

しかし、です。これらポイントは何もないところから生まれる訳ではありません。消費者にインセンティブを提供するためには、当然、その原資が必要。そしてその原資は通常、店舗側にかかる手数料から賄われます。つまり、消費者側のインセンティブを増やそうとすれば、店舗側の手数料を増やすことによって、店舗側のカベ(ディスインセンティブ)を増やしかねないというジレンマがある訳です。

逆に店舗側のカベを崩すために手数料を下げようとすれば、当然消費者に提供するインセンティブを削る必要があります。これもまたジレンマ。

キャッシュレス化の意義は確かにありますし、だからこそキャッシュレス化は推進すべき。実際問題として、何もしなかったとしても、キャッシュレス支払の割合はじわじわと増えていくでしょう。ただ、短い時間軸の中でキャッシュレス化を急速に進めようとすると、正直なかなか難しいと感じています。

もっとも、あくまでも個人的に、ですが、策はあると思っています。このジレンマを解消するためには、国の役割が大きいと思っています。CAT端末の導入補助といった小手先ではなく、もっと大きな仕組みが必要だと考えています。その具体策についてはまた改めて。
posted by 岡本浩一郎 at 18:04 | TrackBack(0) | ビジネス
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