今年の年末調整は、必要とされる申告書が大きく変わったとお話ししました。これまで2種類だった申告書が3種類に。
配偶者に関わる控除は、配偶者の所得が一定金額(基本的には基礎控除におさまる38万円)までの場合に適用される配偶者控除と、その一定金額を超えた場合に逓減しながら適用される配偶者特別控除が存在します。
昨年までは、配偶者控除に影響するのは、配偶者の所得のみであり、本人の所得は関係ありませんでした。一方で、配偶者特別控除については、配偶者の所得が一定の枠に収まる必要があるのと同時に、本人の所得も関係していました。
これに対して、今年からは、配偶者特別控除に加え、配偶者控除についても、本人の所得が影響するようになりました。
今回の申告書の見直しは上記の変更を反映しています。昨年までは、給与所得者の保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書の一部に、このような「給与所得者の配偶者特別控除申告書」という欄がありました。昨年までは、配偶者控除については、本人の所得に左右されませんでしたから、扶養控除等(異動)申告書で扶養対象配偶者として記載するだけでした。一方で、配偶者特別控除は、本人の所得と配偶者の所得によって変動するため、計算するための欄が存在していたわけです。
これに対して、今年は配偶者控除も、配偶者特別控除も本人の所得と配偶者の所得の両方に影響を受けるようになりました。そのため、配偶者控除と配偶者特別控除の両方を計算するための書類として、給与所得者の配偶者控除等申告書が新設された訳です。
配偶者控除等申告書では、本人(申告書上は「あなた」)と配偶者それぞれの合計所得の見積額を記載して、本人の所得をA〜Cの3つの区分(区分I)、配偶者の所得を@〜Cの4つの区分(区分II)のいずれかに当てはまるかを判定します。
さらに区分I×区分IIのマトリックスに当てはめることによって、配偶者控除の額と配偶者特別控除の額を算出することになります(逆に言えば、区分IがA〜C//区分IIが@〜Cに当てはまらない場合には、控除はありません)。
率直に言って、かなり複雑になりました。配偶者特別控除の対象となりうる配偶者の所得額上限が引き上げられるなど、必ずしも増税ではありませんし、この改正が一概に悪いという気はありません。それでも、制度が複雑化しすぎていることは事実かと思います。業務ソフトを開発している弥生の社内ですら、今年の申告書を記入するのは大変という声が上がっている中で、一般の事業者において全社員が正しく理解し、正しく運用するのはなかなか難しいのではないかと危惧しています。
それでもやらなければならないのが年末調整。弥生では、ソフトを提供するだけではなく、how toの情報発信にも力を入れています。まず第一関門は、従業員に正しく申告書を記載してもらうことですが、こちら(弥生マルシェ)で従業員向けの案内として利用して頂ける記事を公開していますので、是非ご活用ください。