昨年の半ばに、アルトア(当時はALT)が貸金業者としての登録が完了したとお話ししましたが、先日12月20日に、今度は弥生の登録が完了しました。もっとも貸金業者ではなく、電子決済等代行業者として。
電子決済等代行業者というと耳慣れませんが、今年改正された銀行法で新たに生まれたもの(解説PDF)です。簡単に言えば、お客さまのために、銀行と連携してサービスを提供する事業者です。例えば、預金口座の利用履歴等の情報を銀行から取得し自動的に帳簿を作成するサービスや、複数の振込先への銀行振込の依頼をワンクリックで行うことができるサービスを提供する事業者がこれに該当します。
前者は銀行の口座情報を参照してお客さまに提供するので、口座情報サービス提供者(AISP, Account Information Service Provider)、後者はお客さまにかわって銀行に資金移動などの指示を行うため、決済指図伝達サービス提供者(Payment Initiation Service Provider)という言い方をします。
これらのサービスはこれまでも存在していました。実際弥生は、10年以上前から、銀行の明細を取込み、仕訳を生成する機能を提供してきました(当時はMoneyLook for 弥生というツールを使用、現在はスマート取引取込機能によって)。こういった、いわゆるFinTechサービスがより一般的になっていく中で、より多くの方が安心してサービスを利用できるように、銀行法で電子決済等代行業者としての定義がなされ、なおかつ、財務局への登録を要することになりました。あくまでも登録ではありますが、実質的には審査に近い細かいやり取りがあり、ようやくこの度の登録となった訳です。
時を同じくして、過去一年以上に渡って銀行と議論してきた成果が、「銀行法に基づくAPI利用契約の条文例(初版)」として公開されました。電子決済等代行業者がAPIを通じて銀行と連携し、サービスを提供するためには、銀行とAPI利用契約の締結することが必要とされます。これはそれぞれの銀行と締結するものなのですが、下手をすると、銀行の数だけ交渉が必要になり、バラバラな契約を結ぶことになります。それでは社会的コストが高すぎるということで、可能な範囲でAPI利用契約の標準化を図ったものです。
標準化というのは、言うは易しく(総論では誰も反対しません)、行うは難い(各論ではそれぞれの思惑が顕在化しがち)。ということで、相当な時間はかかったのですが、完成形とは言えないまでも、議論の出発点として活用できる条文例にはできたのではないかと感じています。
晴れて電子決済等代行業者としての登録も済み、APIの利用を進めるための契約条文例も整いました。来年は、より多くの銀行との連携を進め、より安全かつ利便性の高いサービスを提供していきたいと思っています。
2018年も大変お世話になりました。皆さま、良いお年をお迎えください。