今回の記事は書くべきか書くまいか結構悩んだのですが、確定申告期が終わり、営業妨害と言われることもないタイミングだと思いますので、少し躊躇いながらも書くことにしました。
今年の所得税確定申告の解説シリーズでは、たびたび、「やっかいな法令を理解する必要はなく、画面の誘導に従って情報を入力すれば、自然と正しい申告書が作成できるようになっています。これなら初めての青色申告でも安心ですよね」といった趣旨のことをお話ししています。これは弥生では当たり前の話。ただ、弥生で当たり前だから他社でも当たり前かというとそうではありません。むしろ他社ではそうではないケースがあるので、「弥生なら当たり前」と強調してきたわけです。
例えば確定申告書を作成するためのこの画面。これは弥生の画面ではありません。あえて特定個所を切り抜いており、見難くて申し訳ありません(どのソフトか特定はしたくないので…)。具体的には配偶者(特別)控除を記入するための画面です。配偶者(特別)控除は今回の確定申告から複雑さが増したのですが、この画面では明らかに矛盾した入力がなされています。控除として「配偶者控除」(配偶者特別控除でなく)が選ばれつつ、配偶者の合計所得金額は100万円と入力され、また、配偶者控除もしくは配偶者特別控除の金額が38万円になっています。
配偶者の所得が100万円の場合には、配偶者控除は適用できません。一定の条件下では、配偶者特別控除には該当しますが、その場合の控除額は26万円になります。つまり、このソフトで申告書を作成すると、明らかに誤った申告をしかねないということです。ひょっとしたら、このソフトの言い分としては、「お客さまが入力した通りに出力しており、誤りがあってもそれはお客さまの責任」ということなのかもしれませんが。
参考までに弥生の場合には、(本人の所得と)配偶者の所得から、配偶者控除もしくは配偶者特別控除に該当するのかどうか、また該当する場合にはその金額まで自動計算します。法令に関する知識が十分ではないお客さまであっても、自然と正しい申告書にできるようにするのが、弥生基準。そうでなければ、業務ソフトとしての存在価値を問われると考えています。ですから、先ほどのソフトの仕様は、弥生の基準で言えば「不具合」です。
さらに、こちらは扶養控除を記入するための画面です。本来は扶養控除の対象とならない16歳未満の家族をお客さまが入力してしまうと、そのまま扶養控除として計算されてしまいます。参考までに弥生の場合には、まずご家族の情報を入力いただき、年齢等を踏まえて扶養控除に該当するかどうかをソフトが自動で判断します(扶養控除には該当しない一方で、住民税に関する事項で記入が必要になるため、そちらには自動で出力します)。
余談ですが、この入力画面で、これも完全にありえない入力がされていることにお気付きでしょうか。そう、2月31日というあり得ない日付が入力されていますね(笑)。これももちろん、弥生であれば不具合です。
うーん、やはり書いていても気持ちのいいものではないですね。下手をすれば(しなくても?)悪口ですし。ただ、実はもう4年前に、なぜ弥生では当たり前なことが、他社で当たり前でないのか、ということを指摘しています(こちらとか、こちらとか)。「これだけ書けば、さすがに業界的に当たり前になることを期待し」ていたのですが、4年経っても残念ながら変わっていません(正確に言えば、一社はかなりの改善が見られたのですが、一社はほぼ改善が見られず)。今回、かなり具体的に書いてみましたので、さすがに来年の申告期までにはあるべき形になっていることを期待しています。