2019年09月27日

消費税の負担(その2)

前回は、事業者は実際には、消費税を負担しない、ただし、資金繰りには大きな影響を与えるとお話をしました。ご質問をいただいたので、もう少し解説したいと思います。消費税を負担するのは、あくまでも最終的な消費者。例えば、下の図の左側のケースのように、課税売上が2,000万円の小売事業者がいるとして、この場合は、現状であれば消費税8%分となる160万円を消費者から受け取って(預かって)いるはずです。預かっている消費税を納付するだけですから、事業者自身が負担しているわけではありません。

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ただし、実際には、預かっている160万円を丸々納付するわけではありません。前回も少しお話ししたように、仕入の際に支払った消費税額を控除(仕入税額控除)し、その差分を納付することになります。例えば、この事業者の課税仕入が1,200万円だったとすると、その仕入に際し、消費税96万円を払っているはずですから、実際の納付額は、預かった160万円から、既に支払っている96万円を控除し、差分となる64万円を納付することになります。

10月1日から、消費税率が10%になるとどうなるか。上の図の右側のケースとなりますが、課税売上2,000万円は変わらないとして、消費者から預かる消費税は200万円になります。これに対し、課税仕入1,200万円に対し支払っている消費税が120万円になりますから、納税額はその差分の80万円となります。課税売上/課税仕入の額は変わりませんが、納税額が64万円から80万円に1.25倍に増えるということです。

繰り返しになりますが、これはあくまでも預かっている消費税を納付するだけですから、事業者の収益性には影響を与えません。ただし、資金繰りという観点では、いざ納付という際に、あれ手元資金がない、と慌てるケースが多いのが実際です。

さらに、今回は軽減税率が導入される訳ですが、食材の仕入は軽減税率になる一方で、売上は標準税率となる外食では、納税額がさらに増えることになります。

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左側はこれまで。先ほどと同様で、課税売上が2,000万円/課税仕入が1,200万円のケースで、納税額は64万円。右側は10月以降で、課税売上が2,000万円/課税仕入が1,200万円は変わらないものの、仕入のうち、600万円が食材の仕入であり軽減税率の対象であるとすると、仕入に際して支払っている消費税額が合計で108万円となるため、納税額は92万円となります。つまりこれまで(64万円)よりも1.44倍に増えることになります。

やや蛇足ですが、どんな事業者であっても(外食でなくても)、多少は軽減税率対象の経費は発生します。お客さま用にお茶やペットボトルのお水を買うことはほぼどんな事業者でもありますからね。厳密に言えば、額は小さいのですが、これも納税額に影響します。

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もう一点注意が必要なのは、移行期の納税額。消費税は、前期の確定消費税額に応じ、中間納付が求められるのですが、当期が8%、翌期が10%となる場合に、中間納付額が過少(実際には10%なのに、前期の8%基準で計算されるため)となるため、結果的に期末での納付税額が膨らむケースがあります。

なお、実際には課税売上が2,000万円の場合には、簡易課税を選んでいるケースも多いと思いますので、上の説明はあくまで一般論として理解いただきたいのですが、いずれにしても、納税額は意外に大きくなるということには注意が必要です。

三たび繰り返しますが、消費税は消費者が負担するものを事業者が変わって納付するだけなので、事業者の収益性には基本的には影響はありません。ただ、資金繰りには大きな影響が出ますので、注意が必要です。もっとも、事業者の収益性には影響がないというのは、消費税率のアップ分を、お客さまに転嫁できてこその話。価格の見直しについてお話ししましたが、税込価格だし、まあ、そのままでいいやとしてしまうと、消費税のアップ分を事業者が負担することになります。先ほどの飲食業の例で言えば、税込価格を変えないでいると、納税額の増加分28万円をお客さまから預かったおカネではなく、自らの利益から捻出することになってしまいます。つまり、収益性に大きな影響があり、なおかつ資金繰りにも大きな影響が出るということです。

納税時にこんなはずじゃなかったと後悔しないためにも、10月1日以降の価格についてどうするのか、しっかりと考えなければなりません。
posted by 岡本浩一郎 at 17:59 | TrackBack(0) | 税金・法令
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