2019年12月06日

年末調整って本当に必要?

12月は、弥生のカスタマーセンターへのお問合せが顕著に増加する月。そう、年末調整に関するお問合せが激増するためです。もう既にお問合せが増え始めていますが、来週には一段と増え、再来週からその翌週にかけてピークを迎えるのではないかと思います。ただでさえ忙しい年末に、一年に一回の業務が重なり、事業者の方にとっては実にしんどい時期となります。弥生は、お客さまがこの時期を乗り越えられるよう、お問合せにしっかりと対応していきます。

もっとも、最近私が考えているのが、そもそもこの年末調整という業務自体が要るのだろうか、ということ。給与所得は毎月の支払い時点で源泉徴収が行われるものの、これはあくまでも概算であるため、最終的にはどこかで調整が必要。最終的な調整が必要であり、それが年末調整ということはもちろん理解しているのですが、それが今の形の年末調整である必要があるのでしょうか。

年末調整の起源は昭和22年にまで遡ります。戦後、税制が大きく見直され、国が税金を計算し、課税する賦課課税という考え方から、国民が自ら税金を計算、申告し、納税する、申告納税という考え方に大きく舵が切られました。ただ、この申告納税がうまく機能するためには、国民が税金の仕組みをよく理解し、なおかつ、必要な計算をできることが必要です。しかし、これまで求められていなかったことをいきなりやれというのはなかなか難しい。そこで国が着目したのが、給与の支払い元である事業者です。事業者であれば、ある程度税金を理解し、必要な事務処理、計算もできるのではないか。

つまり、年末調整という業務は戦後、税金のあり方が大きく変わる中で、事業者に押し付けられた業務です。実際、これは非常にうまく機能しました。特に戦後、いわゆる会社勤めの人が激増する中で、給与所得から非常に効率的に徴税できる仕組みは欠かせないものでした。

ただ、税制が非常に複雑化する中で、年末調整の業務もまた、非常に複雑化してきています。それが特に顕著になったのが、昨年の配偶者(特別)控除の見直し。来年には基礎控除も見直しになりますし、細かいつじつまを合わせるための所得金額調整控除が新設されます。もはや普通の人が理解できる範疇を超えつつあると感じています。

もちろん、弥生給与のようなソフトウェアを利用することによって、一定程度は業務の効率化が図られています。言い方を変えれば、もはやソフトウェアを利用せずに年末調整を行うこと自体が困難になってきています。ただ、これは前回お話しした電子化に過ぎません。紙の業務の一部を電子化しているに過ぎない。

これからの時代においては、デジタルを前提として年末調整業務そのものを見直すべきなのではないでしょうか。事業者は引き続き、従業員から年末調整に必要な情報を収集する、ただしデジタルデータとして。そしてそのデジタルデータをもとに事業者ではなく、行政が一元的に計算をすることも、今の技術では十分に可能です。デジタルを前提として業務のあり方自体も見直す。それがデジタル化です。

上でお話ししたように、年末調整業務は紙を前提とした昭和の仕組みです。平成の時代においても、それを電子化して何とか処理してきた。ただ、令和という新しい時代においては、もはや昭和の仕組みを根本から見直すべきなのではないでしょうか。業務のあり方自体を見直し、本当の意味でのデジタル化を図るべきなのではないでしょうか。

残念ながら、これは現時点では夢物語に過ぎません。それでも、問題意識を持った人が声をあげ、行動を積み重ねれば、いつかは変えることができると信じています。
posted by 岡本浩一郎 at 18:45 | TrackBack(0) | 業務
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