2019年12月20日

FACTFULNESS(その2)

前回FACTFULNESSという本についてお話ししました。

人はもともと自分の見たいものを見てしまいます。良いはずだ、良くあって欲しいという思いが強ければ、あるデータ群を見ても、良い部分だけが見えてしまうし、逆に、状況が悪いのでないかという不安が強ければ、悪い部分が目立ってしまう(昔話で言えば、柳もお化けに見えてしまう)。要は自分自分のフィルターを通して物事を見ているということです。

今回、本書を通じて、人間は悪いものや怖いものを見てしまう傾向が強いということを再認識しました。本書で言うところのNegativity InstinctやFear Instinctです。特にFear Instinctは人間の進化の過程を考えると、ある意味自然とも言えるものです。怖いと感じ、それを避けてきたからこそ生き延びることができた。これらのフィルターが組み合わさることによって、世界は全体として大きく改善してきているにも関わらず、それが正しく認識されていない。それが明瞭に出るのが、冒頭の12問に対するあまりに低い正答率です。

もちろん、全てにおいて改善している訳ではないし、世界に問題はまだまだ残っています。ただ、正しく課題をとらえ、最適な打ち手を講じるためには、良い面も悪い面も可能な限り正しく把握する必要があります。

重要なのは、フィルターや罠の存在を意識し、冷徹に数字を見極めるということ。一方で、この本が素晴らしいのは、数字だけでもダメだと言い切っていること。なぜならば、数字自体が誤っている可能性も否定できないから。本書(原書)P191で著者は、以下のように語っています。

I don't love numbers.  I am a huge, huge fan of data, but I don't love it.  It has its limits.
(私は数字を愛してはいない。私はデータの大、大、大ファンだけれども、盲目的に愛することはない。なぜならば、データには自ずと限界があるから。)

この後に続く、かつてのモザンビークの大統領、Pascoal Mocumbi氏のエピソード - GDPの数字は見てはいるけれども、必ずしも正確ではない、その代わりに年に一回行われるパレードで皆が何を履いているか、そして国中を回る中で、建築がどのように進んでいるかを注視している - は非常に示唆に富みます。

数値(統計)が必ずしも正確ではないのは、発展途上国ではよくあること。現場をしっかりと見る方が、よほど正しい状況を把握できるかもしれない(もちろん、一部だけを見て全部同じと思わないといった注意は必要です)。現代のビジネスにおいても、希望する全ての数字が入手できるわけではありません。そんな中では、数字を妄信するのではなく、まず何らかの方法(多くの場合は現場を見ること)によって、現実を理解するように努めることが必要です。

The world cannot be understood without numbers, and it cannot be understood with numbers alone.  Love numbers for what they tell you about real lives.
(世界は数字なしには正確に理解することはできないし、数字だけで正確に理解することもできない。数字が現実の人生を正しく語っていることを愛そう。)

ビジネスという観点でも様々な学びがありますし、世界を正しく理解し、自らと周囲の人生をより良い方向に向けるためにもとても有益な本だと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 18:06 | TrackBack(0) | ビジネス
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