2020年01月16日

統計のきほん/確率のきほん

昨年末にFACTFULNESSという本をご紹介しました。この本の著者は、スウェーデン出身の医師であり学者であるHans Roslingさん(とその息子夫婦であるOla Roslingさんと Anna Rosling Ronnlundさん)。Hansさんは、残念ながらFACTFULLNESSが出版される前の2017年に亡くなられています。

家でこの本を読んでいた際に、娘が、どんな本を読んでいるの、と興味を持った様子(しめしめ)。本ブログでもお話しした、アメリカでSATというテストを受けた男女の数学の平均値をプロットした図をどう読み解くのかについて少し説明したところ、関心を持った様子でした。英語なので、娘はまだ読めないのですが、パラパラと本を眺めていると、「あれ、これ見たことある」とのこと。

2020011601.jpg

これこれと言って持ち出してきたのが、Newtonライト。雑誌Newtonが出版しているムック本で、その名も「統計のきほん」。この中に「収入と寿命の関係は?」というグラフがあるのですが、これとほぼ同様のものがFACTFULNESSでも紹介されています。「統計のきほん」では「このグラフは、スウェーデンの統計学者、ハンス・ロスリング博士がまとめ、発表したものです」と記載されていました。まさに。よく覚えていたね、という感じ。

このムックは、以前に娘が本屋で見つけて欲しがったということで、「確率のきほん」と合わせ、買ってあげたものなのだそうです(知りませんでした…)。娘に教えられて(笑)、改めてこの2冊を読んでみると、実によくできた本です。フリガナもなく、内容もまあまあ難しいので、おそらく中学生ぐらいを念頭に書かれているのではないかと思いますが、それなりに難しい話を平易に、なおかつ関心を惹くようにまとめられており、統計や確率の入門としてはとてもよくできていると感じました。大人でもかなり楽しめます。

両ムックともCOFFEE BREAKというコラムがあるのですが、これは大人でもへーという部分があります。オリンピックのチケットの話をした後だけにタイムリーな話題ですが、「ツキは存在するのか?」というコラム。結論から言うと、ランダムだからこそかたよりが発生するのであって、それは決してツキではない。「ギャンブルの期待値が100%を下回っているときには、運よく勝っている間に”勝ち逃げ”をするのが正解」ということです。およそギャンブルは期待値が1(=100%)未満なので、(少なくともリターンだけ考えれば)近寄らない方が賢明ということです。ここまではまあ当たり前と言えば当たり前。

ただ実は例外もあって、キャリーオーバーなどで賞金が多額になると、期待値が1を超えることがあるそうです。実際に、アメリカのヴァージニア州のロトくじでは、1口の金額が1ドル、数字の組み合わせの総数が700万通り(だから700万ドルですべての組み合わせを買える!)、それに対して、1等の当選金額が2,700万ドルに設定されたことがあったのだそうです。これに気が付いて実際に2,700万ドルを手にしたグループがいたとのこと。ギャンブルはすべてダメと決めつけず、常に期待値を計算すべきということでしょうか(笑)。

このほか、あえて中身には触れませんが、「ベストな結婚相手を選ぶには?」というコラムもなかなか興味深いです(もっとも確率論を持ち出す段階で、結婚相手に選んでもらえないかもしれませんが、苦笑)。

2020011602.jpg

データサイエンスがもてはやされる時代ですが、とことん突き詰めなくても、基本的な知識があるだけで、様々な判断がより合理的にできるはず。子ども向けではありますが、大人にとっても十分に役立つのではないかと思います。ちなみに、Newtonムックには、大人向けの「統計と確率」「確率パズル」といったものもあります。内容は少し難しくなり、確率パズルは私もしっかりと考えないと間違えそうです。それでも平易に書かれているので、楽しんで読むことができます。
posted by 岡本浩一郎 at 17:50 | TrackBack(0) | パーソナル
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/187042458
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック