新型コロナウイルス感染拡大のニュースが続いています。ここ一週間では、韓国、イタリア、イランでの感染者拡大が顕著になっており、この三ヶ国では判明している感染者数が2,000人を超えました(韓国は5,000人超)。アメリカでもまだ数は少ないものの、感染者数が徐々に増えており、危機感が増しているようです(対岸の火事だった状況から一転、日用品の買いだめなども起きているようです)。
現時点で、日本で確認されている感染者数は特殊環境であるダイアモンド・プリンセスを除けば300人弱と比較的小幅な増加に留まっています。学校の休校措置など日本の取り組みの是非について、色々な見解があるかと思いますが、一定の感染拡大は止められないものの、その増加のペースを極力抑えるという観点では一定の成果を上げているように見えます。
それでも、色々な報道に接し、不安に思うのは当然のことだと思います。一方で、ただただ不安である、というのではなく、正しく恐れることが重要ではないでしょうか。出発点となるのは、これまでに見えてきている事実です。それは、新型コロナウイルス感染による致死率は、SARSやMERSなどの過去に脅威となった感染症と比較して、決して高くないということ。まだはっきりと断言はできませんが、これまでにも私たちが対処してきたインフルエンザと大きくは変わらないレベルではないかと言われています。であるとすると、無闇に恐れる必要はないはずです。インフルエンザにかかりたくないのと同様に、新型コロナウイルスにかかりたくはない。一方で、かかったとしても、(批判を受けうる表現だとは思いますが)大したことではない。
もちろん、今後新型コロナウイルスが変異し、結果的に致死率が上がる可能性もありますから、手放しで安心すべきではありません。また、前回もお話ししたように、新型コロナウイルス感染による致死率は高齢者や基礎疾患のある方で明確に高い傾向があります(これはインフルエンザでも同様です)から、こういった方や同居の家族については、細心の注意が必要だと思います。これも前回もお話ししたことですが、現時点で最も怖いのは、治療を要する感染症患者が急増することによって、医療システムが維持できなくなることです。重度の感染症の場合、どこの病院でも対処できる訳ではありません。現時点で日本全国には2,000床超の感染症病床しかありません。今後これを5,000床超にまで拡大するとのことですが、このキャパシティの中に重症患者の数を抑える必要があります。そのために、ここ1〜2週間に感染拡大をどこまで抑えられるかどうかが重要なわけですし、個別の取り組みの是非については色々な見解があるにせよ、日本政府の取り組みは総体として正しいと個人的には考えています。
ただ、国民に正しい危機感を醸成することは必要だと思いますが、あくまでも無闇に恐れるのではなく、正しく恐れるべきということを、もっとはっきりと打ち出してほしいとは思っています。
まずは、感染はしやすいが、致死率はインフルエンザに近いということをはっきりと述べています。
The new coronavirus is similar to SARS, but with two important differences. First, the new virus is more infectious than SARS. Therefore it is harder to stop it from spreading. Second, the new virus is much less dangerous than SARS. About 10 per cent of those who caught SARS died. With the new virus, outside of Hubei province, the mortality rate is so far only 0.2 per cent. In comparison, seasonal influenza has a death rate of 0.1 per cent. So in terms of mortality, the new virus is much closer to influenza than SARS. (原文)
新しいコロナウイルスはSARSに似ていますが、2つの重要な違いがあります。 まず、新しいウイルスは、SARSより感染力があります。 したがって、拡大を止めることはより困難です。 第二に、新しいウイルスはSARSよりもはるかに危険性が低いです。 SARSにかかった人の致死率は約10%でした。 湖北省以外では、致死率はこれまでのところわずか0.2パーセントです。 これに対して、季節性インフルエンザの致死率は0.1%です。 したがって、致死率の観点から見ると、新しいウイルスはSARSよりもインフルエンザにはるかに近いです。(上で紹介した日本語訳に一部加筆)
新しいコロナウイルスはSARSに似ていますが、2つの重要な違いがあります。 まず、新しいウイルスは、SARSより感染力があります。 したがって、拡大を止めることはより困難です。 第二に、新しいウイルスはSARSよりもはるかに危険性が低いです。 SARSにかかった人の致死率は約10%でした。 湖北省以外では、致死率はこれまでのところわずか0.2パーセントです。 これに対して、季節性インフルエンザの致死率は0.1%です。 したがって、致死率の観点から見ると、新しいウイルスはSARSよりもインフルエンザにはるかに近いです。(上で紹介した日本語訳に一部加筆)
上述のように必要以上に恐れることはないことをはっきりと示しながら、私たちができることもはっきりと示しています。
Whatever the situation, we can each do our part. One, observe personal hygiene - wash your hands often, and avoid touching your eyes or face unnecessarily. Two...
状況がどうであれ、私たちはそれぞれ自分の役割を果たすことができます。 1つ目は、個人の衛生状態を保つこと。頻繁に手を洗い、目や顔に不必要に触れないようにしてください。 2つ目は...
状況がどうであれ、私たちはそれぞれ自分の役割を果たすことができます。 1つ目は、個人の衛生状態を保つこと。頻繁に手を洗い、目や顔に不必要に触れないようにしてください。 2つ目は...
私が特にこれは素晴らしいと思ったのは、以下のくだりです。
If the numbers keep growing, at some point we will have to reconsider our strategy. If the virus is widespread, it is futile to try to trace every contact. If we still hospitalise and isolate every suspect case, our hospitals will be overwhelmed. At that point, provided that the fatality rate stays low like flu, we should shift our approach.
(感染源が不明な)ケースが増え続ける場合、ある時点で戦略を再考する必要があります。 ウイルスが拡散している場合、すべて接触先を追跡することは無益です。 それらすべてを入院させ、疑わしい患者すべてを隔離したら、病院はキャパシティオーバーになります。 その時点で、新しいウィルスの致死率がインフルエンザのように低いままであれば、我々の戦略を変更する必要があります。
(感染源が不明な)ケースが増え続ける場合、ある時点で戦略を再考する必要があります。 ウイルスが拡散している場合、すべて接触先を追跡することは無益です。 それらすべてを入院させ、疑わしい患者すべてを隔離したら、病院はキャパシティオーバーになります。 その時点で、新しいウィルスの致死率がインフルエンザのように低いままであれば、我々の戦略を変更する必要があります。
今後感染が広がり続ければ、あくまでも致死率が低いままであればという条件付きですが、私たちはインフルエンザと同様にこの新しい感染症と付き合っていかなければならないかもしれない。その可能性をしっかりと示しています。今はまだそこには至っていないけれども、そうなる可能性を予め提示することによって、正しく恐れ、冷静に対処することを促しています。
驚くべきは、このメッセージが、昨日今日発信されたのではなく、約1ヶ月前となる2月8日に発信されていることですね。日本はこうだけれども、シンガポールは、といった比較をしたい訳ではありません。ただ、リー・シェンロン首相が発信しているように、正しく恐れること、そして自分たちができることをしっかりやることが重要だと思っています。
Let us stay united and resolute in this new coronavirus outbreak. Take sensible precautions, help one another, stay calm, and carry on with our lives.
新型コロナウイルスの流行に、団結して対峙していきましょう。 予防策を講じ、助け合い、落ち着いて、日常生活を続けていきましょう。
新型コロナウイルスの流行に、団結して対峙していきましょう。 予防策を講じ、助け合い、落ち着いて、日常生活を続けていきましょう。