2020年08月06日

基本的な方向性

前回は、デジタル技術を浸透させることで社会全体としての効率を抜本的に向上させ、社会的コストの最小化を図るためには、今ある業務プロセスの電子化(Digitized/Digitization)を図るだけでは不十分であり、デジタルを前提として業務プロセスの根底から見直すデジタル化(Digitalized/Digitalization)が必要だということをお話ししました。もっと言えば、デジタルを前提として業務プロセスの根底から見直すデジタル化を実現するためには、年末調整業務のように、税制のあり方も含め、社会的システムの根幹から見直すべきだと考えています。

デジタル化に推進するにあたっては、デジタルならではのメリットを最大限発揮できるように、以下の4つのポイントを踏まえる必要があります(提言書第3章)。

1. 発生源でのデジタル化
情報は発生源においてデジタル化する。近年ではPOSでの販売管理や、給与計算ソフトでの給与計算など、情報は当初からデジタルデータとして処理されていることが一般的ですから、これら発生源でのデジタルデータを起点とします。

2. 原始データのリアルタイムでの収集
発生源で生まれたデジタルデータは、情報量を維持するという観点で、合理的な範囲でそのまま、かつ、リアルタイム(もしくはリアルタイムに近い形)で次のプロセスに引き渡す 。

3. 一貫したデジタルデータとしての取り扱い
発生源で生まれたデジタルデータは、業務プロセス全体を通じて一貫してデジタルとして取り扱う。事業者内はもちろん、事業者間の業務プロセス、さらには行政への申告・申請等、ひいては行政内の業務プロセスにおいて、紙などのアナログを経ず、一貫してデジタルとして取り扱うべきです。
データは、XMLのように、後工程でのデジタルでの処理を前提とした構造化された(Structured)フォーマットとする。逆に紙の様式を模したデータフォーマットである必要性はありません。つまり、これまでの取り組みのように、事業者から行政の申告・申請等を中心とした紙の様式の電子化にはとどまりません。

4. 社会的コストの最小化の観点での、必要に応じた処理の主体の見直し
発生源から行政まで一貫してデジタルデータとして取り扱う中で、どの時点でどのような処理を行うのかは、必要に応じ、全体最適の観点で見直しを行うべきです。例えば、年末調整業務の処理主体を事業者から行政に移管することも検討すべきだと考えています。

今回は結構固い内容になってしまいました。最初から最後までデジタルで一気通貫で処理するなど、改めて見ると当たり前と言えば当たり前の話なのですが、デジタル化に際しての基本的な方向性を確立することは非常に重要だと考えています。次回は、より具体的に、どんな領域でデジタル化に取り組むかについてお話ししたいと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 18:00 | TrackBack(0) | デジタル化
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