先週金曜日に安倍総理が辞意を表明されました。体調不良説がくすぶっている中での記者会見ということで、ひょっとしたらとも思っていたのですが、まだ任期が一年あり、その間には晴れ舞台でもある東京オリンピック・パラリンピックもあり、また、安倍総理自身が掲げられていた課題も道半ばということもあり、このタイミングでというのは正直意外でした。このタイミングでの辞任の理由として、「体力が万全でないという苦痛の中、大切な政治判断を誤ること、結果を出せないことがあってはなりません。国民の皆様の負託に自信を持って応えられる状態でなくなった以上、総理大臣の地位にあり続けるべきではない」というのは、一国のリーダーとしての矜持を感じます。
色々な意見があるとは思いますが、少なくとも第二次政権となった以降のこの8年弱のリーダーシップを私は高く評価しています。一国のリーダーとして陣頭に立ち、判断をし、その結果に責任を取る。誰にとってもバラ色の解は存在しません。税金を上げるにせよ、下げるにせよ、あるいは変えないにせよ、それを良しとする人もいれば、それではダメだという人もいる。完璧解は存在しません。その中で判断をし、責任を取る。先だって本ブログでもお話しした10万円一律給付についても、絶対的な正解はなく、本当に難しい判断だと思います。それを約8年間。誰にでもできることではありません。
スケールは全くことなりますが、企業の経営者も、完璧解の存在しない世界において、陣頭に立ち、判断をし、その結果に責任を取らなければなりません。私も12年以上やってきて実感しますが、それは決して容易なことではありません。迷うこともあれば、泣きたくなることもある。これも私は比較にもなりませんが、日立製作所の川村さんの言う、「ザ・ラストマン」としての覚悟がなければ成り立ちません。今回、安倍総理は「ザ・ラストマン」として、この時点でバトンを渡すことが自分の責任であると判断されたのでしょう。
あえて言えば、目指す方向は正しくても、中途半端に終わってしまった、うやむやになってしまったことも多くあるのは残念です。個人的に私がこれは凄いと思ったのは、日本再興戦略において、開業率だけでなく、開業率・廃業率ともに10%以上を目指すとしたこと。開業率という誰が聞いてもいいよね、という甘い部分だけに取り組むのではなく、廃業率という一見すれば後ろ向き、しかし日本全体としては新陳代謝の観点で必要なものにも踏み込もうとしたことは、安倍総理ならではだと感じました。残念ながらこの目標は途中で消えてしまいましたし、全体としてのアベノミクスもやや尻切れトンボになってしまったように感じます。しかし、この種のことに文句だけ言ってもしょうがないのだと思います。できなかったことをあげつらうのではなく、できたことを素直に評価すべきだと思います。
新型コロナウイルス禍の克服もまだ見通しが立たない中で、次の総理大臣はどなたがなられるにしても、相当な難局だと思います。文句をつけることも容易でしょう。でも、文句だけ言っていても何も変わらない。この難局の中で、重要なのは私たちに何ができるかということ。今こそ、かつてJohn F. Kennedy大統領が就任演説で言ったことを噛みしめたいと思います。
Ask not what your country can do for you. Ask what you can do for your country.
(国が皆さんのために何ができるのかを問うのではなく、皆さんが国のために何ができるのかを問うてほしい。)
(国が皆さんのために何ができるのかを問うのではなく、皆さんが国のために何ができるのかを問うてほしい。)
安倍総理大臣、本当にお疲れさまでした。