先週参加したLendIt USA 2020ですが、お話しした通り新型コロナウイルス禍によってバーチャル開催となりました。日本では新型コロナウイルス禍は比較的落ち着いた状態に(今のところは)なっていますが、米国では新型コロナウイルス禍の収束の目処が立っておらず、米国経済全体に大きな影響が出ています。それはFinTechについても例外ではありません。
今回LendIt USAに参加して感じたのは、新型コロナウイルス禍はFinTechにとってまさに「危機」であるということ。これは私がいつも思っていることですが、危機は「危」と「機」の二文字、すなわち「危険」と「機会」で成り立っています。うまく乗り越えられなければ存在意義が問われる危険、一方で、進むべき方向を見極め、それに応じた方向転換をすることによって大きな成果を得られる機会、どちらにも転がりうるのが、今回の新型コロナウイルス危機であると考えています。
FinTechといっても、支払い/決済や、融資、資産運用など様々な分野が存在しますが、この中には新型コロナウイルス禍がまさに追い風になっている分野も存在します。例えば、オンラインショッピングの利用が広がる中で、支払い/決済に関するFinTechは大きな追い風を受けています。もともとデジタルの活用は日本よりも明らかに進んでいる米国ですが、その米国においても、今回の新型コロナウイルス禍によって、「デジタル・エコノミーへのシフトが5年から10年分の跳躍を遂げた」と言われています。今回のLendItでも登壇するパネリストによる「うちの親も遂にオンラインで買うようになった」といったコメントも複数見られました。ですから一口に支払い/決済といっても、リアルな店舗での利用が中心のSquareにとってはマイナス面がある一方で、オンラインでの利用が中心となるStripeは大いにプラスとなっているのではないでしょうか。
資産運用という観点では、3月には相場が大きく崩れたものの、4月には値段を戻し始め、夏には新型コロナウイルス禍前に近いところまで戻しています。金融緩和によるものであり、正直バブル感は否めませんが。米国でも特別定額給付金のような支援が実施されていますが、それをスマホ証券会社で投資に回すRobinhooder(名前はスマホ証券会社の代表格Robinhoodから)の存在が相場を押し上げる要因となっているとも言われています。そういった意味で資産運用という観点でも追い風と言えるかもしれません。
では融資という観点ではどうか。FinTech全体をカバーするカンファレンスとしてはMoney 20/20などいくつか存在しますが、LendIt USAはその名が示す通り、融資分野を中心としたカンファレンスです。だからこそ5回連続で参加してきている訳です。結論からお話しすると、融資分野においては、新型コロナウイルス禍はまさに危機です。危険でもあり、機会でもある。危険だけでもないし、機会だけでもない。何が危険で、何が機会なのか、次回お話ししたいと思います。