2020年11月06日

青の国と赤の国

開票が進む米国大統領選挙ですが、まだ最終結果は見えていません。バイデン氏がリーチとも見えますが、開票はまだ続いており、バイデン氏が勝ったとされるアリゾナ州においてトランプ氏が僅差に迫る(このため、アリゾナ州についてはバイデン氏を当確とするメディアとまだ判断はできないとするメディアで判断が分かれているようです)、その一方で、トランプ氏優位だったジョージア州で開票率99.0%の段階でバイデン氏が僅か2,000票以内に迫るなど全く予断を許さない状況です。

前回は「米国はお互いに相容れない二つの国(東海岸と西海岸の「青の国」と中西部の「赤の国」)に分断されつつあるのかもしれません」と書きましたが、より詳細に見てみると実はもっと複雑です。WSJ(Wall Street Journal)で今回の選挙の特集記事が公開されていますが、記事の地図内の州をクリックしてみると、その州内の郡単位で青(民主党優勢)なのか赤(共和党優勢)なのかを見ることができます。上でお話ししたアリゾナ州やジョージア州を見てみると、アリゾナ州では、PhoenixのあるMaricopa郡やTucsonのあるPima郡は青(民主党優勢)であるのに対し、それ以外の郡には赤(共和党優勢)も目立ちます。ジョージア州に関しては、Atlantaおよびその近郊は明確に青、それ以外は赤に染まっている地域が目立ちます。

つまり、州レベルで言えば、東海岸と西海岸の「青の国」と中西部の「赤の国」というのは大きな傾向としてはその通りなのですが、実際には州の中にも、都市部の「青の国」、逆に地方の「赤の国」という対立構造が生まれているのです。

私の両親はだいぶ昔にテキサス州のHoustonに住んでいたのですが、4年前の選挙でトランプ氏が選ばれたことを信じらないと言っていました。両親がかつて見ていた、成熟した大人の国のイメージからはかけ離れていたのかと思います。ただ、これもテキサス州の中を見てみると、何が起こっているのか見えてきます。Houston, Dallas, San Antonio, Austinという都市部は青、一方で地方(面積でいえば80%程度)は赤で埋め尽くされています。つまりHoustonに暮らしていて見える米国と、地方に暮らしていて見える米国は異なるのだと思います。私自身も4年前にまさかという感想を本ブログに残していますが、青の国のカリフォルニア、しかも都市部に暮らしていたからこそ、本当の米国の姿が見えていなかったのかと思います。

もっとも、青の国と赤の国の対立構造はここ10年〜20年で顕著になってきたのだと思います。これは、グローバル経済/IT経済が広がる中で、そのメリットを受けやすい人と、メリットを受けにくい人という意味での差が大きくなったということもあるでしょうし、また、それがソーシャルメディアを通じて目に見えるように(場合によっては、真実ではなくても、真実以上の説得力を持つように)なってきたということもあるのでしょう。

日本が同質社会であるのに対し、米国は多様性の国と言われます。米国は多様性を強みにしてきた国です。それが今、多様性を認めるのではなく、お互いに相容れない対立構造を深めつつあるように見えることに憂慮しています。ましてやその一因が自分も関わっているITの力にあるのかもしれないというのは非常に複雑な思いです。一方で、米国は危機を機会にしてきた国でもあります。今回の選挙の結果がどうなるのかはまだわかりませんが、どういった結果になるにせよ、多様性の中での連帯を深める方向に進むことを願っています。
posted by 岡本浩一郎 at 16:30 | TrackBack(0) | その他
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