2020年12月10日

データから見るGoToトラベル

前回ご紹介した「GoToトラベル」を利用している人は新型コロナウイルスへの感染リスクが高いとする東京大学などの研究チームによる調査結果ですが、政治の世界でもかなり話題になっているようです。ただ、相関関係なのか、因果関係なのか、で解釈がだいぶ分かれているようです。

津川先生ご自身が、「Go To トラベル事業の利用者は非利用者よりも新型コロナに感染するリスクが高いことを示して」いるという相関関係を認める一方で、「Go To トラベルの利用が直接的に新型コロナ症状の増加につながったという因果関係は断定できない」とも書かれているんですけどね。この種の話は、それぞれの人が自分が見たい真実を見出いがちということなのかと思います。見たい真実ではなく、本当の真実を見出すためには、データをしっかり見る必要があります。

今回の調査の一部のデータが論文中で記載されていますが、これはなかなか興味深いです。例えば、GoToトラベルへの参加者(N=3,289)では、大学卒以上が60.0%。これに対して非参加者(N=22,193)では、大学卒以上が48.3%。P値(統計的に有意な差があるかどうかを測る指標、小さいほど有意に差がある)が<0.001ですから、確実に差があります。収入が高位層に属する人が参加者は34.8%、非参加者が20.7%。経営者(Employer)である割合が参加者は34.8%に対し、非参加者が3.4%。

単純に言えば、やはり経済的に余裕のある人ほどGoToトラベルを活用しているという傾向があるということかと思います。これを政策として金持ち優遇と見るか、あるいは、補助という呼び水によってお金をどんどん使ってもらうのが目的だからむしろ狙い通りと見るか。

私は基本的に後者という理解です。ただ、金持ち優遇に見えることが心情的に許せないということも理解できます。もっとも健康状態に関するデータを見ると、また複雑な事情が見えてきます。この調査では基礎疾患の有無も調査しているのですが、これを見る限り、GoToトラベル参加者は羨ましいとは言えないように思います。

過体重に該当する方が、参加者26.9%、非参加者19.4%(P値0.04)。P値がやや大きくなっていくので、有意差という意味では少し弱くなっていきますが、高血圧が参加者32.6%、非参加者26.5%。糖尿病が参加者15.7%、非参加者9.9%。喘息が参加者19.7%、非参加者13.2%。心疾患が参加者12.2%、非参加者5.8%。

健康状態という観点でも差がありそうですよね。経済的に余裕があるのは、必ずしもいいことではないのかもしれません(苦笑)。まあ、これも疑似相関なのか、あるいは、相関があるとしてもどんな因果関係なのか、冷静に見極める必要がある訳ですが。
posted by 岡本浩一郎 at 23:42 | TrackBack(0) | その他
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