2020年12月22日

電子インボイスが実現する業務効率化

前回はインボイス制度についてお話ししました。そしてこれを単なる法令改正対応に留めるのではなく、電子インボイスを通じて圧倒的な業務効率化を実現したいということをお話ししました。どうやって業務効率化を実現するのか、まず現状を振り返るところから始めたいと思います。

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一般的な商取引(ここでは特にB2B取引を想定)では、特に中小企業においては、見積から請求、支払までの業務の多くが紙と手作業で成り立っています。見積書をFaxで送信し、それに対し発注書もFax。納品書は紙として納品物に添付し、請求書は別途郵送。請求に対し、入金がなされたかは、預金通帳の明細を逐次チェックして確認。ここでポイントになるのは、決してIT化されていない訳ではないということです。例えば、見積書や請求書は弥生販売Misocaで作成するというのは決して珍しいことではありません。つまり社内においてはIT化されている訳です。しかし、会社と会社の間では途端にアナログになってしまいます。これは会社と会社の間の見積や発注、あるいは請求といった情報をデジタルでつなぐための標準規格が存在しないため、誰でも確実に使えるアナログな標準規格であるFaxや郵便になってしまっているからです。

結果的に、社内のIT化は進んでも、業務効率はなかなか上がりません。売り手側には見積書のデータはある。ただ、それがデータとして買い手に渡ることはないので、買い手は、改めて発注データとして手で入力する必要があります。見積から支払、入金の消込まで、改めて手で確認する、入力するということが何回も繰り返される訳です。

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この一連の流れをデジタル化すればどうなるか。売り手から見積がデータとして買い手に渡る。それは(内容に問題がなければ)そのまま買い手の発注データになる。発注データは逆に買い手から売り手に渡り、売り手にとっての受注データになる。その後、納品と同時に、納品データも買い手に渡って検収データになる。請求データは買い手に渡って、支払データのもととなり、支払データは入金データになる。そして請求データと入金データをシステムで突合することによって、自動消込が可能になる。

全てがデジタルでつながる世界。この世界では、既に存在する情報を改めて手で入力するという必要がなくなります。そしてデジタルデータをもとに多くの業務が自動で処理できるようになります。

あれ、でもこの話どこかで聞いたことがあるな、という方。実に鋭い。実は2016年2月に弥生がMisocaを買収した際に、弥生がMisocaともに実現したいビジョンということでお話ししました。もう5年近く前の話になります(遠い目)。ただ、残念ながら、Misocaとともに掲げたビジョンを実現するには至っていません。

今回の電子インボイスで実現するのは、このビジョンのうち後ろ半分ということになります。すなわちまずは電子インボイスを通じて、請求〜支払/入金消込業務の一気通貫を実現することになります。この部分だけでも大きな業務効率化になるはずです。さらには、まずは電子インボイスが一般化することによって、後工程が自動化され、それが呼び水となって結果的には前工程、すなわち受発注もデジタル化すべきだという流れにつなげていきたいと考えています。

次回は、なぜビジョンの実現に時間がかかっているのか、そして今回なぜ後工程から進めていくのか、についてお話ししたいと思います。
posted by 岡本浩一郎 at 20:47 | TrackBack(0) | デジタル化
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