先週、私が昨年秋に「電動車」を購入したと書きました。先般菅総理が、「2050年カーボンニュートラル」を改めて宣言し、そのための施策の一つとして、「2035年までに、新車販売で電動車100%を実現」することを表明されましたが、それを先取りしたことになります。
ただ、ここでいう電動車とは一体どんなクルマを含むのでしょうか、あるいは含まないのでしょうか。そこに混乱があり、それが前回お話ししたトヨタの豊田社長の「反旗」(というよりも抗議)につながっています。電動車について語る前に、電動車とは何かをしっかりと定義する必要があります。
電動車と聞いて真っ先に思い浮かぶのは電気自動車(EV)でしょうね。メーカーで言えば、テスラ。電気モーターとバッテリーを搭載しており、バッテリーに蓄積された電気で電気モーターを駆動して走ります。未来のイメージはありますが、まだまだ圧倒的少数派です。
一方で、電動車を「駆動用の電気モーターを搭載している」と定義すると、いわゆるハイブリッド自動車(HV)まで含まれることになります。HVといえばトヨタ、そしてトヨタのHVと言えばプリウス(実際にはトヨタのほとんどの車種でHVが用意されていますが)。街中を一杯走っているプリウスは、この定義であれば立派な電動車ということになります。
EVとHV、この間には、プラグイン・ハイブリッド自動車(PHEV)が存在します。PHEVは、エンジン(内燃機関)と電気モーターの両方を搭載しており、石油燃料でも、電気でも、あるいはそれらを組み合わせて走ることができます。PHEVはHVと何が違うの、というのはよくある疑問ですが、HVはエンジンが主で、電気モーターはその補助にすぎません。このため、電気だけで走ることはできない(マイルドHV)、もしくは、電気で走れても発進時などごくわずかな距離に限られます(ストロングHV)。先ほど例に挙げたプリウスはここでいうストロングHVです。一方で、プリウスにはプリウスPHVというPHEVの車種も存在します。PHEVは外部からの給電ができ、なおかつ、その電力を貯める比較的大きなバッテリーを搭載しているため、それなりの距離を電気モーターだけで走ることができます。
逆にどんな定義でも電動に当てはまらないのが、内燃機関自動車です。内燃機関のことをInternal Combustion Engineということから、ICEという略称が使われます。正確に定義すれば、HVもPHEVも、ICEを搭載していますから、ICE「のみ」車と表現すべきなのかもしれません。
今回の日本の動きは海外の動きを追従するものですが、将来的なICE禁止について、昨年秋に具体的な動きを見せたのが、イギリス。ジョンソン首相が「緑の産業革命」の一環として2030年にHV含めICEの新車販売を禁止、2035年にはPHEVも禁止し、純粋なEVのみとすることを発表しています。つまり2035年には(あくまでもそれ以降の新車販売になりますが)EV 100%。
では、菅総理が表明した「電動車100%」で言う電動車の範囲は? 実はこれは明確には定義されていないのですが、一般的にEV/PHEV/HVと言われています。つまりエンジンを主、電気モーターは従であるHVも電動車に含まれる訳です。逆に言えば、日本において「ガソリン車廃止」という言い方は不正確ですし、非常に誤解を招く表現です。豊田社長が抗議をしたのもまさにこのポイントです。
ちなみに前回もお話ししましたが、今回私が購入したのはPHEV。現実主義者の私らしく(?)、EVとHVのいいとこどりを狙った訳です(しかしこれはどっちつかずで中途半端とも言えるのですが)。私自身はPHEVを選択し実際に3ヶ月近く乗ってみて、そしてまた購入してから(遅い!)色々と調べるにつけ、電動の良さも実感していますし、同時に課題もまた実感しています。結論から言えば、私は豊田社長と同様に、電動化は目指すべき、ただし拙速にではなく、日本という市場にあわせた方法と時間軸で、と考えています。