前回は確定申告書から性別の記入欄がなくなったこと、一方で(今のところ)押印欄が残っていることをお話ししました。また、それ以外にも多くの変更が発生していることは以前にもお話ししました。
性別の記入欄がなくなったことはまさに時代を反映したものだと思いますが、同様に時代を反映している、なおかつ、同時に国税庁の意思も反映しているように思えるのが、今回新しく登場した「業務所得」です。
業務所得って、事業所得とどう違うの、と思われるかもしれません。非常に紛らわしいですよね。正確に言えば、業務所得という所得が新設されたのではなく、これまでにも存在した「雑所得」に「業務に係るもの」という新しい区分が新設されました。これを受けて、今回の申告書では、雑所得が公的年金等とその他の2区分から、公的年金等、業務、その他の3区分になっています。
国税庁の定義では、雑所得とは「利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも当たらない所得」とされています。この中で、業務に係るものに該当するものとしては、「副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)」と説明されています。
新型コロナウイルス禍の中で、Uber Eats等の食べ物デリバリーを頻繁に見るようになりましたが、それ以前からいわゆるギグエコノミーで収入を得ている人が増えている、さらにそれ以前から、ネットオークション等で収入を得ている人が増えていると言われており、これに対し、国税庁として、ちゃんと申告してくださいという注意喚起がなされてきました。
今回の雑所得の中に業務という区分を新設したことは、今後こういった収入をしっかり見ていきますよ、という国税庁の強い意志を感じるのは私だけでしょうか。
なお、上記でネットオークションで収入を得ているというのは、売ることを目的に仕入れており、それをネットオークションで販売した場合です(いわゆる転売ヤーということになるでしょうか)。同じネットオークションでも、古着や家財など、もともと生活用物品として利用していたものの売却は非課税とされています(そもそもこれらは普通買った値段より安く売るわけですから、利益も出ませんしね)。