3月になりました。例年であれば確定申告も折り返し地点です。自分自身の申告の下準備はしていたものの、なかなか申告を済ませる時間がなかったのですが、先週末ようやく申告を済ませました(もちろんマイナンバーカードを使って電子申告)。今年は期限が一ヶ月延長され、まだ時間的な余裕があるとはいえ、やはりやらなければならないことを積み残しているのは気分がよくないもの。申告が済んでようやくすっきりです。
今年は期限が一か月間延長されて良かったなと思うのは、本ブログで確定申告についてお話しする機会が増えたこと。毎年お話ししたいことは山ほどあるのですが、全部お話しする前に申告期間が終わってしまい、お話ししきれていません。今回は例年よりも少し時間をかけて確定申告にまつわる話題をお話ししたいと思っています(とはいえ、申告の準備を待っていただく必要はないので、どんどんと進めてくださいね)。
前回は、損失、つまり、事業所得(売上マイナス経費)が赤字となった場合に、申告すべきかどうかということをお話ししました。どんな場合であれ、申告はしておいた方がいいというのが結論です。
損失でも申告をすることのメリットがはっきりしているのは、青色申告。前回もお話ししたように、青色申告の場合には、今回の損失を翌年以降に繰り越し、翌年以降3年間の所得と相殺することができます。
例えば、今回(昨年分)の事業所得が残念ながらマイナス300万円の損失だったとしましょう。この場合、当然今回は納税は発生しません(事業所得以外はない想定)。これに対し、次回(今年分)の事業所得が100万円だったとします。図の左側、白色申告の場合は、この事業所得100万円が全額課税対象となります。つまり今回発生した300万円の損失は無視されます。これに対し、図の右側、青色申告の場合には、次回の事業所得100万円は今回の損失300万円の一部(100万円)と相殺され、課税所得はゼロになります。
さらに翌年以降、所得が150万円、300万円と増えた場合も、白色申告(左)はそれらがそのまま課税所得になるのに対し、青色申告(右)は今回の損失300万円が相殺されきるまで(ただし最大3年間)課税所得が発生しません。結果的に、次回以降3年間で合計550万円の事業所得があった場合、白色申告では、今回の損失が一切考慮されずそのまま550万円が合計の課税所得になりますが、青色申告の場合、今回の損失300万円が相殺対象となるため、3年間合計の課税所得は550万円-300万円の250万円で済みます。当然のことながら、3年間合計で納めなければならない所得税額には大きな差がつきます。
事業はお客さまに価値を提供し、その対価として利益を上げるために行うもの。ただ、昨年のように新型コロナウイルス禍によって事業環境が激変し、残念ながら利益を上げるどころか、損失で終わる年も発生します。その際に、その損失を翌年以降に繰り越し、しっかりと節税できるのが青色申告の大きなメリットです。
事業の立上げ期においても、顧客基盤が出来上がる前は残念ながら損失となることもあるでしょう。青色申告を選ばない理由として「まだ儲かっていないから」というのは比較的よくある理由なのですが、実際問題としてそれは誤解です。儲かっていないからこそ、最初から計画的に行うべきなのが青色申告なのです。
なお、青色申告で損失を繰り越す際に必要となるのが確定申告書の第四表という帳票です。もちろん、当然のことながら、弥生ではクラウド(やよいの青色申告 オンライン)でもデスクトップ(やよいの青色申告 21)でもこの第四表に対応しています。ただ、弥生以外ではこの第四表に対応していないソフトもあるので注意が必要です。