前回は2021年版中小企業白書についてお話ししましたが、今回の中小企業白書は、中小企業が新型コロナウイルス禍による危機に直面する中で、「危機を乗り越える力」が大きなテーマになっています。
市場に大きな変化(おそらくは不可逆な変化)が起きている中で、事業のあり方を見直せるかどうか。私が印象に残っているのが、オンライン飲み会用のケータリングです。弥生でも、ここ一年間はHalf Year Meetingや社員総会などで皆が物理的に集まることができていませんし、それに伴ってBeer Bustを開催することもできていません。昨年秋にCS本部総会を開催する際には、ホテルの宴会場を利用できないことは自明だったものの、例年お世話になっているだけに、多少なりとも貢献できればということで、ホテルにせめて食事を気の利いたお弁当のような形で数百人分用意してもらえないか聞いてみました。
私がホテルの経営者であれば、即答でもちろん喜んで、と回答するところですが、実際には、対応できないという返答でした。食べ物だけに食中毒の心配もあり、ホテル外では品質を担保できないという判断だったのかもしれません。ただ、それ以上に、我々はホテルだから、ホテルの中で最高のサービスを提供するのが、我々の仕事というある意味の思い込みがあったのではないでしょうか。
ホテルには断られましたが、人事総務部で引き受けてくれるところを一生懸命探し、CS本部総会でも社員総会でも、皆が同じ食事をするという経験を共有することができました。最近ではnonpi foodboxというオンライン飲み会に特化したフードデリバリーが好評で、弥生でも各部署のオンライン飲み会で利用するようになっています。このサービスは、デジタルで懇親会のあり方を変えたいい例だと思います。
誤解のないように申し上げると、何でもかんでもデリバリーすればいいとは思っていません。またデジタルはあくまでも有効なツールであって、全てがデジタルであるべきだとも思いません。実際問題として、あくまで私個人の感想ですが、最近は色々な部署でnonpi foodboxを利用するため、私個人としては少々飽き気味です(苦笑)。でも、おそらくまだまだ進化するサービスだと思いますし、その際にデジタルは大きな武器になるでしょう。
一方で、既存のホテルや飲食店が全て駆逐されることもないでしょう。やはり普段と違う空間で楽しい時間や美味しいものを共有するという喜びは絶対的に存在しますから。ただ、これまでもこうやってきたから、と漫然と同じことを続けることが成り立たなくなっていくのだと思います。ホテルやお店に拘るのであれば、空間だったり、雰囲気だったり、あるいは素材の新鮮さだったり、ホテルやお店である「必然性」をよりはっきりと示していかないといけないのだと思います。
そのためにもデジタルは有効な武器になるはずです。デジタルを活用することによって、業務を効率化する、そして時間を「必然性」を示すために使えるようにすることによって。