今年も新型コロナウイルス禍の影響で確定申告の期限が延長され4月15日までとなりました。延長は昨年と同様ですが、昨年は申告期限間近に初の緊急事態宣言は発出されるなど、混迷の中でお客様サポートを何とかやり遂げたのに対し、今年は当初から期限延長もありうるという想定のもとで準備を進めてきたこともあり、比較的落ち着いて対応を継続をし、無事に期限を迎えることができました。
申告期間を乗り切った後にやってくる通知表(笑)として、毎年楽しみにしつつ、ドキドキもしつつ公表を待っているのが、MM総研による「クラウド会計ソフトの利用状況調査」。MM総研は、2016年から毎年確定申告終了時点でのシェア調査を行っていますが、今年は申告期限が延長されたことにより、4月末時点での調査となり、その結果が先週発表されました。
今回の結果は、この通り。弥生はダブルスコア以上と2位以下に大差をつけて、しっかりとNo.1をキープしています。ただし、シェアを大きく伸ばせているかというと、一昨年が57.0%、昨年が56.7%、そして今年が57.0%でしたから、安定していると言えば安定しているし、同時に膠着状態という言い方もできると思います。ここはもう少し伸ばしたいというのが正直なところですが、昨年には2位と3位が交代するという動きもある中で、過半のシェアを安定的に確保できている訳ですから、まずまずの成果とは言えると思います。
競争の激しい市場の中で、弥生がどれだけのシェアを有しているかは弥生の競争力を表す指標として注視しているところですが、この調査でそれ以上に価値があるのは、個人事業主において、どれだけクラウド会計(申告)ソフトが浸透してきているかというデータです。昨年は会計(申告)ソフトを利用されている方のうち、クラウド型が21.3%と20%を超えましたが、今年は、26.3%とジャンプアップし、一気に25%を超えました。ソフトを利用されている個人事業主のうち、4人に1人はクラウド型を選ばれているということです。
新しい技術が普及する上では、まずごく少数のリスク許容度が高く新しもの好きな人(Innovators)が利用し、その後により冷静に使える技術を見極める人(Early Adopters)が利用するというTechnology Adoption Life Cycleという定説があります。この2つのグループの後にはChasmという「深い溝」があり、これを超えられずに一時の流行りで終わってしまう技術もある一方で、このChasmを超えることができれば、前向きな大衆(Early Majority)での利用が一気に進むと言われています。
技術というよりは、具体的なサービスの話になってしまいますが、数年前に流行った短文投稿型のSNS、マストドンは、Innovatorsには受けたものの、Early Adoptersまでは至らなかったように思います(まだサービスが終わった訳ではないので、今後どうなるかはわかりませんが)。最近で言えば音声チャットのClubhouseは、Innovatorsを超え、Early Adoptersまで至ったように思いますが、最近はちょっと勢いがなく、Chasmを超えられるかどうか、なかなか見通せない状況です。
話を戻して個人事業主市場におけるクラウド会計(申告)ソフトについては、少なくとも昨年には確実にこのChasmを超えたと見ています。Chasmを超えてEarly Majorityでの利用が始まると普及が加速しますが、これは今まさに起きていることです。Early Majorityで利用が始まると課題になるのは、お客さまのサポート。InnovatorsやEarly Adoptersのお客さまはある意味、好きで使うので、何かわからないことや困ったことがあっても、自分で検索するなど自分で解決しようとします。自分で選ぶから、何かあっても自分で解決しようとする訳です。それに対し、Early Majorityは周りも使い始めているし、ということで利用される方が多く、いざという時には頼れる先が必要です。弥生が顧客サポートであり、その中でも(あくまでもお客さまのニーズにあわせてですが)電話でのお問合せ対応に拘っているのはこういったところに理由があります。
いざとなれば安心して頼れるという先があるからこそ、Early Majorityのお客さまが利用するようになっている訳ですし、それは同時に、Early Majorityでの普及が進む中だからこそ、弥生のシェアが安定して高いレベルを維持できているということを意味しています。
ということで今回の通知表はまずまずの結果でした。ただ、まだまだEarly Marjorityでの利用が進み始めたところですし、その後ろにはLate Majorityという層も控えています。今後もより多く方にご利用いただき、結果としていい通知表を受け取れるように、もっともっと頑張らないと!