先週金曜日にお話しした通り、電子インボイスの日本標準仕様のドラフト第一版について、まずは電子インボイス推進協議会(EIPA)内で公開しました。まずはEIPA内でフィードバックを受けた上で、9月中にEIPAからデジタル庁に提出する予定です。その後デジタル庁による確認を経て、デジタル庁から広く一般に公開される予定です。
既にお話ししている通り、電子インボイスの日本標準仕様は国際的に利用が進んでいるPeppolという仕組みをベースとしています。このため、電子インボイスの日本標準仕様は、Peppolの日本版ということで、JP Peppolと呼んでいます。あくまでも仮の名称で、将来的に正式版として公開される際には、ニックネームが付くのかもしれませんが。ちなみに、シンガポールもPeppolをベースとした電子インボイスを推進しており、当初は"Peppol E-Invoicing"という名称でしたが、その後既に普及している電子決済の仕組みPayNowにあやかってInvoiceNowというニックネームが付けられたようです。
さて、JP Peppolを策定するために、まずは基本的なポリシーを確立した上で、検討を進めてきました。それはまず何よりも、今あるものを最大限活用し、安直な拡張は行わないということ。Peppolをベースとしながらも、日本ではあれも必要、これも必要と拡張を続けると、結果的にPeppolとはだいぶ異なるものにもなりかねません。しかし、そもそもの話として、ヨーロッパを中心に既にグローバルの30ヶ国以上でで活用が進んでいる仕組みだからこそ、Peppolをベースとして採用した訳です。安直な拡張は、国際標準との乖離を生むことになり、海外との取引での活用を困難にすると同時に、今後のPeppolの発展に追従することが困難になります。
一方で、日本標準仕様として策定しながら、それが実際に活用されなければ意味がありません。現状の日本の業務プロセスとかけ離れた仕様では活用されません。そのため、日本で広く活用されるために、日本において必要とされる最小限の拡張は行うこととしています。
一方では、安直な拡張は行わない。しかしその一方では、日本において必要とされる最小限の拡張は行う。これはなかなか微妙なバランスです。だからこそ、必要な時間はかけて何が本当に必要なのか議論を行い、単純に今ある業務プロセスを漫然とサポートするのではなく、デジタル化が進む中で業務プロセスがどのようにあるべきかを精査し、拡張は最小限にとどめる努力をしてきました。
結果的に、JP Peppolにおける請求書のデータモデル(データ項目の一覧)は、ベースとなったPeppolからわずか2項目の拡張にとどまっています。しかもこの2項目は、日本だけのための拡張ではなく、将来的に他の国でも活用しうる項目として拡張しています。つまり、日本標準仕様を国際標準仕様とほぼ同一のものにすることができた、ということです。まだ現時点ではドラフト第一版であり、まだまだ見直しが入る可能性はありますが、本当の意味で国際標準仕様に基づいた日本標準仕様を策定するという意味では、よい第一版にはできたのではないかと思います。
次回以降、少し時間をかけながら、どういった検討を行ったのか、結果的にどのような日本標準仕様になっているのかをお話ししたいと思います。