前回、電子インボイス推進協議会(EIPA)として、Peppolをベースとした日本標準仕様(JP Peppol)の策定を進めるにあたって、まずは日本の商慣習を確実にサポートするために、日本で必要とされる業務プロセスの整理から着手したとお話ししました。結果的に、事前の想定通り、月締請求書など、合算型のインボイス(Summarized Invoice)がギャップであることを確認したこと、その上で、JP Peppolにおいては、合算型のインボイスをサポートすべきと結論付けた、とお話ししました。
前回お話ししたように、現状のPeppolは納品書と請求書が1:1に対応することが前提となっています。これは日本でも存在する業務プロセスです。明確に区別するために、これを都度請求書と呼ぶことにします。都度請求書では、1納品書 = 1請求書となり、納品後すみやかに請求書を発行することになります。実務としては、納品書がないケースも、逆に納品書が請求書を兼ねており、明示的な請求書がないケースもあります。ただ、ここで重要なのは、請求の対象が一回の納品に限られているということです。
これに対し、合算請求書はN納品書 = 1請求書となります。合算請求書は一般的には月締請求書と呼ばれることが多いと思いますが、合算するサイクルは必ずしも月締めではない(例えば、2週間に一回、あるいは2ヶ月に1回)ため、汎用的な名称としてこれを合算請求書と呼んでいます。合算請求書では、月末など所定のタイミングで複数の納品書を合算して請求書を発行します。
都度請求書の場合には、請求の対象が一回の納品に限られているため、その納品が確かになされているかを確認すれば支払の是非を判断することができます。これに対し、合算請求書の場合には、請求の対象が複数の納品にまたがるため、支払の是非は、合算請求書上の明細がどの納品に由来しているかを識別し、その納品が確かになされているかの確認が必要になります。
支払の是非をシステム的に判断し、処理を自動化できるようにするためには、都度請求書の場合には、請求書単位で由来となっている納品書が(納品書番号などで)特定できれば大丈夫です。これに対し合算請求書の場合ではどうなるか。合算請求書は請求の対象が複数の納品にまたがるため、特定のための納品書番号が複数になります。これを請求書単位で由来となっている納品書番号を複数持つという考え方もありますが、どの明細がどの納品由来なのかが一意に特定できず、処理としては難しくなります。どの明細がどの納品に由来しているかを一意に特定できるようにするためには、明細単位で由来する納品書番号を持てるようにする必要があります。
前回、JP Peppolは合算請求書(月締請求書)をサポートしますと書きました。これは、都度請求書と合算請求書のデータ構造(データモデル)は全く一緒とした上で、明細単位で納品書番号への参照情報を持てるようにしたことによって、参照する納品書番号が1つであればそれは都度請求書、複数あればそれは合算請求書として処理できるようにしたということです。