前回は、合算請求書(月締請求書)と支払案内(月まとめ請求書)の違いについてお話ししました。合算請求書がインボイスとなるのに対し、月まとめ請求の場合には、納品書がインボイスとなり、月まとめ「請求書」は実はインボイスではないということをお話ししました。月まとめ請求の場合には、月まとめ「請求書」は実はインボイスではない? 一体どういうことでしょうか。
インボイスというのは適格請求書の英語名称ですから、単純に考えれば、「請求書」という名前がついていればインボイス、そうでなければそれはインボイスではない、と判断しがちです。しかしそれは正しくありません。インボイスかどうかは、名称ではなく、どういった情報が記載されているか、また、その用途で決まります。
まずは、一つ目の例を見てみましょう。B商事株式会社からA株式会社への9/15付けの納品書です。これは納品書であって、インボイスではありません。ただそれは納品書という名前だからではなく、インボイスに必要とされる記載事項が満たされていないからです。
インボイスに記載が必要な事項は、以下の通りです。
(1) 売手(適格請求書発行事業者)の名称および登録番号
(2) 取引年月日
(3) 取引内容(軽減税率の対象品目であればその旨を明示)
(4) 税率ごとに区分して合計した対価の額および適用税率
(5) 税率毎の消費税額
(6) 買手の名称
一つ目の例を見ていただくと、(1)/(2)/(3)/(4)/(6)については記載がありますが、(5) 税率毎の消費税額が記載されていません。ですからこの文書はインボイスとはなりませんし、この文書をもって仕入税額控除を適用することはできません。
この文書は、基本的に納品内容を買手に伝えるものであって、この文書をもって買手に支払いを求めるものではありません。支払いを求めるのであれば、消費税の額も記載し、その合計の支払いをしてもらわなければなりませんから。すなわち、この文書は、[1] インボイスに記載が必要な事項が満たされておらず、仕入税額控除の適用ができない、と同時に[2] 買手に支払いを求める文書ではない、から、インボイスではありません。
次に二つ目の例を見てみましょう。これはB商事株式会社からA株式会社への9月分の納品に対する請求書です。9月中の複数の納品から1つの請求書が作成されていますから、従前からお話ししている合算請求書(月締請求書)です。この文書は、先ほどご説明したインボイスに記載が必要な事項が全て記載されています。先ほどはなかった(5) 税率毎の消費税額も右下に記載されていますね。
また、この文書は買手に支払いを求めるものです。消費税の額も記載されており、支払うべき金額が明確になっています。すなわち、この文書は、[1] インボイスに記載が必要な事項が満たされており、仕入税額控除の適用ができる、と同時に[2] 買手に支払いを求める文書である、から、インボイスとなります。
次回は月まとめ請求書について、なぜインボイスとならないのか、をお話しします。