日経新聞で私が毎日楽しみにしているのが、「私の履歴書」です。どれぐらい好きかというと、ざっと1面を確認したら、すぐにひっくり返して私の履歴書をチェック、その後1面に戻って、以降2面、3面と読み進めるというのが、私の毎朝のルーチンです。
もう終わってしまいましたが、先月はノーベル賞受賞者である吉野彰さんの「私の履歴書」でした。吉野さんと言えば、リチウムイオン2次電池の開発者。ノートPCにせよ、スマホにせよ、あるいは電気自動車にせよ、リチウムイオン電池があってこそ成り立つもの。私たちの生活を大きく変えた存在です。
一ヶ月間毎朝楽しみに読んでいたのですが、ビビビッと強烈に響いたのが、連載も最終盤の29回目。技術によって当たり前のものとなる「三種の神器」に対し、IT革命によって廃れていく技術としての「三種の鈍器」(これは吉野さんの造語)についてのくだりで、その一つとして銀塩写真について書かれていました。記事全体の一部なので、そのまま引用させていただくと…。
銀塩写真はなぜ廃れたのか。多くの人は「デジタルカメラが出現したから」と答えるだろうが、それは違う。銀塩写真は画質に優れ、100年以上も色あせず、価格も手ごろで、性能面でデジカメに劣るわけではなかった。
ではなぜか。価値観が変化したのだ。「写メール」の登場で銀塩写真は一気に窮地に追い込まれた。
2000年、カメラ付き携帯電話が登場した。これにより「写真は撮ってプリントする」から「撮ってメールで送る」と、価値観が一変した。アルバムではなく携帯電話に保存し、友達や知人同士で見せ合うようになったのだ。
技術に関わるものとして、これはまさに常日頃から考えていること。弥生の手掛けている会計ソフトについても、まさにこの考え方が大事だと思っています。デジカメ/銀塩写真と会計ソフトがどうつながるのか、大事なテーマなので次回じっくりとお話ししたいと思います(すごい前振り)。
それにしても私の履歴書、面白い人と、そうでもない人に正直わかれますね。吉野さんの前の山本耀司さんもそうでしたが、やはり自分で新しいモノを生み出してきた、世界を切り開いてきた方は面白いですね。それに対し、あくまでも傾向値ですが、サラリーマンとして積み上げてしっかり社長を務めたという方は、さらっと読んであまり印象に残らないように思います。新しいモノを生み出してきた、世界を切り開いてきた方は、それだけ失敗や挫折もされている訳で、読む立場からすると、ある意味失敗や挫折こそが面白いのかもしれません。
私が将来私の履歴書を書くような立場になるとは思いませんが、失敗や挫折こそ書き留めておくべきなのかもしれません(笑)。