2021年11月15日

改正電子帳簿保存法

弥生は2023年10月に始まるインボイス制度に向けて、誰でもが容易に使える標準的な電子インボイスの仕組みを整備することにより、法令改正をむしろ業務効率化の機会にしようという取り組みを進めています。

一方で、実は来年1月にも全事業者に影響を与えうる法律が施行されることになっており、今のままでは事業者の対応が間に合わないと強く懸念していました。その法律とは、電子帳簿保存法(電帳法)です。電帳法とは、所得税法や消費税法といったメジャーどころと異なり、知る人ぞ知る法律かと思います。これは税務申告に必要な帳簿や証憑を電子的に保存したい場合に満たすべき要件を定めた法律であり、結果的に帳簿や証憑を電子的に保存したいという事業者のみに影響があるものでした。

しかし、実は来年1月に予定されている改正で、一部の事業者のみに影響があるものから、全ての事業者に影響が及びうるものとなっています。改正の多くは、電子的な保存の要件を緩和するものであり、その要件緩和を実際に活用するかどうかは事業者に委ねられています。しかし実は、改正のうち、電子取引に関する改正事項(具体的には適正な保存を担保する措置)に関しては、これまで認められていた措置(申告所得税及び法人税における電子取引の取引情報に係る電磁的記録について、その電磁的記録の出力書面等の保存をもってその電磁的記録の保存に代えることができる措置)を廃止するものであり、全ての事業者に影響を与えるものです。これまではとりあえず何でも紙で保存していれば万能だったわけですが、来年1月以降は電子取引に関しては紙での保存ではなく、電子データとして保存しなければならなくなります。

電帳法という知る人ぞ知る法律が、いつの間にか全事業者に影響を与えうるものになっていたわけです。しかもその改正が施行されるのは来年1月。弥生としても事業者の皆さまに告知すべく色々と準備を進めてきたものの、事業者の対応として来年1月は到底間に合わないと非常に強い危機感を持っていました。

今回、弥生PAPカンファレンス 2021秋において、多くの弥生PAP会員から改めて強い懸念を共有いただいたことから、弥生として問題意識を共有する3社(*)と共同し、10月から11月にかけて、財務省および国税庁に働きかけを実施しました。この結果、幸いにして、懸念を一部解消する進展が見られました。

11月12日(金)に国税庁より「電子帳簿保存法Q&A(一問一答)〜令和4年1月1日以後に保存等を開始する方〜」に関する「お問合せの多いご質問(令和3年11月)」(pdf)が公開され、この中で、以下のように記載されています。

補4 一問一答【電子取引関係】問 42
【補足説明】
電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存義務に関する今般の改正を契機として、電子データの一部を保存せずに書面を保存していた場合には、その事実をもって青色申告の承認が取り消され、税務調査においても経費として認められないことになるのではないかとの問合せがあります。
これらの取扱いについては、従来と同様に、例えば、その取引が正しく記帳されて申告にも反映されており、保存すべき取引情報の内容が書面を含む電子データ以外から確認できるような場合には、それ以外の特段の事由が無いにも関わらず、直ちに青色申告の承認が取り消されたり、金銭の支出がなかったものと判断されたりするものではありません。

誤解のないようにお話しすると、弥生が一回申し入れしただけで今回の対応が速やかになされたわけではありません。今回の電帳法改正は大部分が要件緩和であり、その中に一部義務化(措置の廃止)が含まれていたわけですが、財務省/国税庁としても要件緩和と義務化を同じ期間で施行させることに無理があったという認識を既にお持ちであったということかと思います。既にそういった問題認識をお持ちの中で、弥生ほかによる働きかけがあったことから、まずはQ&Aの形で速やかにご対応いただけたものと理解しています。

ひとまず事業者の皆さまが来年1月に向けて付け焼刃的かつ非合理的な対応を強いられる、もしくは、青色申告承認の取り消しの危機にさらされるということがなくなり、ほっとしています。ただ、電子化にとどまらず、業務の効率化につながるデジタル化は、本来着実に進められるべきものだと考えています。本来あるべき姿に向かって、弥生として引き続きフォローアップしています。

(*) ご賛同いただき、ご協力いただいたのは、SAPジャパン株式会社株式会社オービックビジネスコンサルタントピー・シー・エー株式会社の3社です。
posted by 岡本浩一郎 at 21:40 | TrackBack(0) | 税金・法令
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